マガジンのカバー画像

アジア民族の食卓誌

36
発酵、保存食のフィールドノート
運営しているクリエイター

#保存食

アジア民族の食卓誌 #11 タイの納豆トァナオ作り

ネパールのキネマ、中国の豆豉、ラオスのトゥアナオ・・・納豆は、日本の食べ物というイメージがありますが、世界には実に多様な納豆があるのです。ところかわれば納豆は調味料だったり、せんべい状にして焼いて食べるおかずだったり、乾燥していたり。カレーに入れられたりこうやってみると、納豆の定義がわからなくなってきます。 季節の手仕事講座、5月のテーマは野草納豆ということで、納豆を一緒に仕込みます。 アジアの照葉樹林文化と発酵食稲作が伝わる以前、ネパール、ブータン、雲南、中国南部、日本

暮らしの実験室2:台湾の発酵食品「梅乾菜」づくり

台湾に「梅乾菜」という菜っ葉のお漬物があります。これは、塩漬けしたアブラナ科の葉を干したもので、乳酸発酵の酸味があり、「都こんぶ」の匂いが漂うというと想像がつきますでしょうか。 奈良の在来野菜「大和まな」で仕込んでみましたが、客家の人たちは、これ専用に自家採種していて、2−3倍くらい長いんですよね。 客家(はっか)とは?多民族の島台湾には、「本省人」と呼ばれる日本統治時代以前(16世紀くらい)から台湾に移り住んだ渡来人と、戦後、国共内戦で破れた国民党に伴って移り住んだ「外

暮らしの実験室:たけのこと発酵と菌の生態系

たけのこ掘りが今年は大量だったので、羽釜2台フル稼働しながら、民泊のシーツ洗って干して、庭掃除しながら薪炊いて、タケノコ切って、テーブルセットして・・・。大変でしたがようやく落ち着きました。 タケノコの塩分濃度を変えて味と保存期間の実験をしています。 無塩、5%、8%、10%、20%・・・ 中国語で論文検索すると、塩分濃度と乳酸菌などの菌の生態系と風味に関する論文がたくさんヒットします。さすがの発酵国。塩分濃度高すぎると、逆に生態系が崩れて腐敗しやすいデータもあったりし

ひよこ豆のテンペを使ったアレンジ料理帳

マレーシアのインスタ仲間と時々情報交換しているのですが、東南アジアの発酵文化が面白い。テンペを使った豆腐よう、まさに「テンペよう」や、テンペの干し肉もどきなど、その発想には驚かされます。テンペはマクロビでもよく使うのですが、東南アジアのテンペ料理はとても参考になってます。 私のバイブル「The book of Tempeh」 テンペは大豆だけでなく、いろんな豆でつくれるのですが、面白いのは、油を圧搾したあとのピーナツやココナツの残渣をつかったり、豆腐を作った後の「おから」で

アジアの干し肉文化とマレー半島のポークジャーキーづくり

アジアの干し肉文化干し肉、ジャーキーとは、ケチュア語のcharque(日干し)が語源なんだそう。干し肉は中国語では「肉干」と書いてロウガンと呼ばれています。 単に干すだけでは腐ってしまうので、スパイスに漬けてから干したり、炭で燻したりと作り方はその土地によって様々。スマトラ島のパダンで作られている「デンデン」は、唐辛子を加えたり、ココナツシュガーでキャラメリゼにすることも。 世界中にある干し肉ですが、日本では、肉食が禁止されていた時代が長かったので、あまり肉の発酵食や保存食

客家の保存食とオレンジソースの作り方

時々訪ねている台湾でのならいごとの旅で出会った食べ物のことを書いていきたいと思います。 (1)客家金桔醬 「金桔」「甜桔」「砂糖桔」ともよばれる柑橘で作った客家特製ソース。塩と唐辛子を加えるので、甘辛くて酸っぱい。エビチリソースに似た感じです。黒豆醤油と混ぜて、水餃子や蒸した鶏肉につけて食べると美味しい。 (2)梅干菜 梅干しではなく、白菜やからし菜など、アブラナ科の菜っ葉類のお漬物のこと。なんというか、「都こんぶ」の匂いが漂います。 漬物の多様性の違いはこちらのサ

高野豆腐(凍み豆腐の作り方)

あけましておめでとうございます。 正月ですが、年中日曜日なもんで、これといって特別なこともなく、ふつうに高野豆腐とかつくってます。 年末には、海外在住の発酵グループ向けのオンラインレッスンがあり、今日は福岡よりプライベートレッスンのお客さんが来てくださいました。遠方の方からの問い合わせが増えていて、こういうご縁の出会いがちょっと楽しい。冬があける(啓蟄の候あたり)まではオンラインとプライベートレッスンのみにしようかなと思います。 さて、高野豆腐は、高野山を中心とする関西

塩漬けイワシのトマト煮込み

世界のスープ里山文庫の蔵書は、世界の食の本をメインに収集していますが、今年新たに仕入れた本の中で、一番の衝撃を受けたのがこの本。 佐藤政人「世界のスープ図鑑 独自の組み合わせが楽しいご当地レシピ 317」 パン酵母を起こすサワードーで酸味のあるスープに仕上げたり、ウサギやリスの肉を使ったり、トルティーヤ生地でとろみをつけたり、ワインと柑橘の煮込みや、テキーラ煮など、不思議な食材の使い方が独特の世界観に引き込みます。 よく300以上も聞いたこともない国のレシピまで集められ

英語で学ぶ発酵づくしの3日間 "The Art of Fermentation School"

3日間の発酵ワークショップ海外のヴィーガン料理教室とのタイアップ企画で、3日間にわたり基礎調味料の作り方や和食文化の基礎を学ぶ「発酵合宿」を開催しました。 「種麹と豆麹が買いたくて日本に来た」「豆麹はどうやって作るのか」「ネパールの納豆は糸を引かないが、日本の納豆菌は何が違うのか」「麹蓋はどこで買えるのか?」「pHをどう調節すればよい?」 マレーシア、ネパール、シンガポールの発酵マニアが集い、鋭い質問が飛び交う。メンバーたちは、3日間寝食をともにすればすぐに仲良しに。寝て

いまどきのチャイナ(3)オーガニックマーケットで発酵ワークショップ

茶飲み仲間がオーガニックマーケットで働いているというので見に行って来ました。 2010年に始まったオーガニックマーケットは、今や生産者約50名になり、開催数は500回を超え、利用者は年間約80万人だとか。北京市内では、曜日ごとに3箇所あり、いろんなワークショップやトークイベントが行われているようです。 さっそく、発酵グループに入れてもらいました。納豆や、豆腐ようなどなど、農家さんの野菜を使ったいろんな講座がマーケットで受けられるのです。 今日は、泡菜を作ったり、コンブチャ

【中国フードツアー #01】 白族のおじい、おばあに学ぶ保存食の知恵

オランダの農大在学中、半年間ブータンの農村調査に携わったことがきっかけで始めた小さな村の持続可能な暮らしを学ぶ旅。毎年、数回、どこかの村へ聞き書きに出かけています。今年はブータンにいた時からずっと行ってみたかった雲南省へようやく行くことができました。 発酵食をテーマに白族のじいちゃん、ばあちゃんに聞き書きしながら料理を習う。干しチーズ、発酵パン、豆腐よう(こちらでは毛かび臭豆腐の油漬け)、豆豉、腌菜、などなど一緒に仕込みました。 なぜ雲南へ? 中尾佐助さんの「照葉樹林文化