見出し画像

地域に感謝を伝えるカフェづくり。

里山百手プロジェクト、第五回のテーマは「地域に感謝を使えるカフェづくり」。講師(福田)が営むカフェ「一本杉農園 蒔時」を使って、中学生のみんなが“一日カフェ”を開店することになりました。
クラス28名を7人ずつの4班に分けて、それぞれの班でどんなカフェをつくるか考えます。

まずはじめに、今回のテーマである「地域に感謝を伝えるカフェ」という言葉を丁寧に解釈すべく、ここで言う「地域」とは何を指すものとして今後の話を進めるかを確認します。

漫画ONE PIECEのアラバスタ編に出てくる国王「ネフェルタリ コブラ」。(みんなONE PIECEは読んでるだろうと思って出してみましたが、読んでいる人は意外と6割程度でした。世代間格差かな!)
この人が良い事を言ってくれています。

「いいか 国とは“人”なのだ‼︎‼︎」

はい。そうですねコブラさん!
これには読者として当時とても共感しました。つまり、

他にも =土地 =文化 など様々な回答があり得ると思いますが、感謝を伝える手段としてカフェを用いることを踏まえて、ここでは=人と定義した上で話を進めます。
続いて、

地域=「人」がしてくれた何に対しての感謝を伝えるのかを考えます。
これを考えるヒントを示してくれる本があります。今年僕が読んだ本の中で最も印象深い本でもあります。

「世界は贈与でできている」 近内悠太 著
この本の中に、こんな一節があります。183ページ。

何気ない日常の中で、あふれている無数の贈与(のありがたみ)は隠されています。
それらは「あって当たり前」であって、それが無ければ僕らは文句を言う。コンビニの陳列棚の商品、自動販売機、部屋の空調設備、電車の定時運行、あるいは衛生環境やインフラ、医療 −−。
逆説的なことに、現代に生きる僕らは、何かが「無い」ことに気づくことができますが、何かが「ある」ことには気づけません。いや、正確には、ただそこに「ある」ということを忘れてしまっているのです。
だから僕らは「ただそこにあるもの」を言葉で述べることができません。それはすなわち、それらが与えられたものであること、それがただそこに存在するという事実が驚くべきであること、そして、もし失われてしまえば心底困り果ててしまうことに気づくことができないということです。

地域の中に当たり前に存在するもの。何気ない普段の暮らし。その中に隠された地域からの贈与とは?
例えば、南摩地区の田舎らしい四季で移ろう田園風景は、ここで暮らす僕らにとっては“あって当然のもの”に感じられます。しかし、この景色の中で暮らすことが出来ているのは、農地を健全に運用している農家の方々の日々の仕事のおかげなのです。この景色の中で暮らすことができるという贈与。それは、渡す側(農家さん達)も渡そうと思っているものではない贈与なのかもしれませんが、そのような贈与に気づき、受け取り、日常と“出会い直す”ことで、地域への愛着が生まれるのではないかと考えます。
そういった地域から受け取ってきた贈与を、カフェの班で考えてもらいました。

「僕のことは除いて考えて」と言えば良かったなぁと、結果を見てから気がつきました。みんな気使い過ぎだよ!
みんながつくるカフェは、ここで気づいた地域からの贈与への感謝を伝えるためのお店です(僕へのは除きます。この授業をやらせてもらっていることがみんなから僕への贈与だとも感じているし、この授業は僕を育ててくれた先人達から受けた贈与を次へ渡すものとも捉えているからです。)。

「カフェ」という手段を使って、どのように感謝を伝えるかを考えます。ここで制約条件を一つ。

時間や予算の都合や、衛生上の問題で、今回カフェで提供するメニューは事前に一本杉農園で用意します。メニューは、プリン。コーヒーor紅茶です。メニューの内容を自分達で自由に考えて決めることは出来ないという制約条件。
カフェという環境と、このメニューを使って、地域への感謝を伝えるにはどんなカフェをつくるべきか。みんなに考えてもらいました。
4つの班それぞれの案を以下にまとめます。

店名「カフェ ブーケ」
⇨ブーケのように優しくたくさんの笑顔を詰め込み、たくさんの感謝を伝えたい。
この班は非常に解像度高くカフェの内容を考えることが出来ていました。「花を飾ろう」というアイディアを「生の花を飾るより、折り紙で心を込めて折った花を飾り、持ち帰れるようにした方がより想いが伝わるのでは」と考えて発展させたり。他にも手づくりのお土産を用意したり、写真を一緒に撮るなどして、カフェで過ごす時間だけでなく、お家に帰ってからも余韻が続くような、息の長い体験価値を生み出そうとしています。

店名「ありがた屋」
⇨感謝=ありがたい=ありがたや〜
ゲストがカフェで過ごす時間を、楽器の演奏やマジックショーで演出するというアイディアを出してくれました。エンターテイメントカフェです。風船の飾り付けも、明るい雰囲気になりそうで演出と合っていると思います。マジックで出したカードに感謝のメッセージが書いてあり、それをプレゼントする、というのは面白い!マジックはYouTubeで勉強するそうです。楽しみ。

店名「穂っと」
⇨穂の字に含まれる「恵」は自然の恵みへの感謝や、地域の人に恵まれたことへの感謝が込められています。また、“ほっと”できる時間を過ごしてほしいとの想いから、この店名になりました。
テーマは、「双方にとって思い出に残るものをつくる」。
リラックスできる空間をつくるために、クラシック系に音楽をかけたり、明るい接客を心がける。他の班と違うアイディアとしては、ゲストにアンケートを書いてもらうこと。地域の人々は中学生の自分たちに何を望んでいるのかを聞いて、今後の生活に活かす姿勢を見せることが、地域貢献になることに気づいたのは素晴らしい洞察だと思います。この班は特に検討事項を構造的に捉えることが出来ていました。

店名「Surriento miento」
⇨新型コロナウイルス感染拡大を受けて、南摩の人々はなかなか都内の高級レストランなどで外食することが出来なくなってしまった。それを受けて、少しでも高級レストランで過ごすような時間を提供できたらという想いから。店名の由来は、高級レストランっぽい響きのイタリア語をとった。
YouTubeで“一流の接客”を勉強し、実践。音楽はジャズをかけ、ユニフォームはブレザーにネクタイ。上品な雰囲気を演出。今年ならではの社会課題へのアプローチです。発想が豊かですね。どんな接客をしてくれるのか楽しみです。

一日カフェは、2週間後から週替わりで随時オープン予定。
素敵なカフェ時間がたくさん生まれてくれますように。

里山百手プロジェクト 第五回
講師 福田大樹

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?