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朝ドラ2025年後期「ばけばけ」


第113作目の連続テレビ小説は、
松江の没落士族の娘・小泉セツがモデルの物語です。

外国人の夫・ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)と共に、「怪談」を愛し、急速に西洋化が進む明治の日本の中で埋もれてきた名も無き人々の心の物語に光をあて、代弁者として語り紡いだ夫婦の物語をお届けします。
※実在の人物である小泉セツ(1868―1932)をモデルとしますが、大胆に再構成し、登場人物名や団体名などは一部改称してフィクションとして描きます。原作はありません。


資料提供:小泉八雲記念館

小泉セツ 1868-1932
松江藩家臣の小泉家の次女として生まれ、直後に稲垣家の養女になる。没落した家を支えるため11歳から織子として働く。1886年に結婚するも、1年で夫は出奔。その後、松江に英語教師として赴任してきたラフカディオ・ハーンのもとで住み込みで働くようになり、当時珍しかった国際結婚をする。再話文学の語り手として、ハーンの著作に大きく寄与した。

ラフカディオ・ハーン(小泉八雲) 1850-1904
ギリシャ生まれのアイルランド人(英国籍)。アメリカでジャーナリストとなった後、1890年に来日。松江に英語教師として赴任する。その後、熊本五高、東京帝国大学、早稲田大学でも教鞭をとる。1896年、小泉セツと結婚、日本に帰化し、小泉八雲を名乗る。『知られぬ日本の面影』『怪談』など、日本の古来の文化を記した著作は高く評価されている。

この世はうらめしい。けど、すばらしい。

人魂(ひとだま)よりさまよい、お化けより生きるのが下手くそな人たちに囲まれ、幽霊よりもこの世をうらめしく思う没落士族の娘・松野(まつの)トキ。

絶対取り憑(つ)かれてるんじゃないか、早くお祓(はら)いに行った方がいいんじゃないかぐらいのつまずきを繰り返しながら、どこか憎めない人々と共に、それでも前向きに生きていきます。

その人生の途中で出会うのが、ゴースト以上に居場所を見つけられず、トキ同様この世をうらめしく思いながら、世界を転々とした末に日本にたどり着いた異国人。

トキは妖怪よりも厄介(やっかい)な彼に手を焼きつつも、怪しい話好きという共通点から次第に心を通わせると、うらめしかったこの世界は、いつしか、かけがえのない素晴(すば)らしいものに化けていくのです。

【タイトル「ばけばけ」に込めた思い】

このドラマは「化ける」物語です。急速に近代化が進む明治の日本は、人々の暮らしや価値観がどんどん「化けて」いきます。その中で取り残された人々の思いは、時に怪談という物語に形を変え語り継がれてきました。それと同じように、うらめしかったトキの世界も、いつしか、かけがえのないすばらしいものに「化けて」いくのです。

【舞台地】

ヒロイン・松野トキが生まれ育つ島根県から物語は始まります。その後、ヒロインの人生が進むにつれて、舞台地も熊本など各地に移り変わっていきます。

【執筆にあたって / ふじきみつ彦】

何も起きない物語を書いています。
人生、光もあれば影もあると言いますが、人生って光でも影でもないところがほとんどだなぁというのが僕の実感です。キラキラしているわけではないけど影というほど暗くもない、取り立てて人に話すほどでもない他愛もない時間。そんな光でも影でもない部分に光を当てる朝ドラを書いてみたい。今回のモデルである小泉セツさんのことを知ってそういう考えに至りました。セツさんは特別なことを成し遂げたりとてつもない夢を叶えたりした人ではありません。少し変わった、しかし何気ない日常を送った、言ってみれば普通の人かもしれません。だけど、だからこそ愛おしいのです。
「夢は○○だけん!(島根言葉)」なんて一度も叫ばない朝ドラですが、好きになってもらえたら嬉しいです。


<ふじきみつ彦(ふじきみつひこ) プロフィール>
早稲田大学卒業後、広告代理店勤務を経てコント、小劇場の世界へ。
シティボーイズライブ等でコントを書く一方、演劇では日本の不条理劇の第一人者・別役実氏に師事。その後、「みいつけた!」などEテレでテレビ脚本を書き始める。
主な執筆作に、NHK「阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし」(第30回橋田賞受賞)、テレビ東京「デザイナー渋井直人の休日」「きょうの猫村さん」、WOWOW「撮休シリーズ」、映画「子供はわかってあげない」(沖田修一監督と共同脚本)、岡部たかし・岩谷健司の演劇ユニット「切実」、舞台「muro式」。日常の些細な出来事を独特の笑いをまじえて描く会話劇が得意、と周りから言われる。


【ヒロインとその相手役はオーディションを開催】

ヒロイン・松野トキ役と、その相手役となる外国人英語教師の役は、いずれもオーディションを開催し決定する予定です。

【物語】

明治時代の松江。松野トキ(まつの・とき)は、怪談話が好きな、ちょっと変わった女の子です。松野家は上級士族の家系ですが、武士の時代が終わり、父が事業に乗り出すものの失敗。とても貧しい暮らしをすることになってしまいます。世の中が目まぐるしく変わっていく中で、トキは時代に取り残されてしまった人々に囲まれて育ち、この生きにくい世の中をうらめしく思って過ごします。
極貧の生活が続き、どうしようもなくなったトキのもとに、ある仕事の話が舞い込んできます。松江に新しくやってきた外国人英語教師の家の住み込み女中の仕事です。外国人が珍しい時代、世間からの偏見を受けることも覚悟の上で、トキは女中になることを決意します。その外国人教師はギリシャ出身のアイルランド人。小さい頃に両親から見放されて育ち、親戚をたらい回しにされたあげく、アメリカに追いやられ、居場所を探し続けて日本に流れ着いたのでした。
トキは、初めは言葉が通じない苦労や文化の違いにも悩まされます。ところが、お互いの境遇が似ている事に気が付き、だんだんと心が通じるようになっていきます。しかも、二人とも怪談話が好きだったのです!
へんてこな人々に囲まれ、へんてこな二人が、夜な夜な怪談話を語り合うへんてこな暮らしが始まります――。


【制作にあたって / プロデューサー 橋爪國臣】


ヒロイン・松野トキは、夢を宣言し、がむしゃらに追いかけるヒロインではありません。時代の中で取り残されたり、大勢の意見の中で埋もれていったりする人々に光を当て、尊重し、共に生き抜いていく、そんなドラマを作りたいと思っていました。
脚本のふじきさんは、日常に潜む不条理をクスッと笑えるユーモアとして描き出すことができる方です。朝ドラを作るにあたって、ふじきさんなら、小さな声にも耳を傾け、日常の中にちょっとしたおかしみや悲しみが紛れ込み、気がつけば心が温まる、新しいドラマを作り上げることができると思いお願いしました。
ふじきさんと共に題材を探す中で、「小泉セツ」さんと出会いました。セツさんが残した『思い出の記』には、淡々とつづられた日々の奥に、二人の愛情や苦しみ、喜怒哀楽があふれています。大きく変わっていく世の中に翻弄されながらも、夫・ハーンとともに暮らしていく姿に強く感銘を受けました。違う価値観を持つ者同士が、お互いを尊重して受け入れていく姿は、今の私たちにも大切なものを示してくれると思います。
セツと八雲が『怪談』を通じて時代を描き出したように、「ばけばけ」も今を生きる皆さんの心に響く朝ドラとしてお届けできたらと思います。

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