「ありふれた愛、ありふれた世界」8
シーン8 浩二のマンション
麗子が楽しそうに愛のおしめを替えている。
麗子 「I want you. I need you. I love you.
ハートの奥 ジャンジャン溢れる愛しさは
ヘビーローテーション・・・はいできた」
麗子 「何?」
浩二 「楽しそうだなと思って」
麗子 「麗子ちゃんの子を預かってるんだからちゃんとしてあげなくちゃ」
浩二 「ああ、ありがとう」
麗子 「愛ちゃんは元気ですねー」
愛をベビーベッドに寝かせる。
浩二 「すっごい動くでしょ。『私は早く自由になりたいんだ』って言ってるみたいに」
麗子 「なかなか寝返りできるようになりませんね。パパに似て頭が大きすぎるのかな?」
浩二 「うるせーよ。麗子はそんなこと言わない」
麗子 「浩二、あいしてる」
浩二 「やめろ。耳が腐る。ああ麗子に会いたい」
麗子 「会ってるじゃない」
浩二 「会ってるけど、そうじゃない!」
麗子 「(おっぱいを突き出して)ほれほれほれほれ」
浩二 「やめろ。麗子の身体で遊ぶな!」
麗子 「見る?」
浩二 「見たいけど・・・ダメだ!やめろ!」
麗子 「かわいいな・・・やっぱり愛ちゃんのほうが・・・」
浩二 「ストップ、世界ちゃんだって同じくらいかわいいだろ?」
麗子 「そりゃ自分で産んだ子だもん。可愛くないわけない。でもこうやって子供の未来を心配しないでいられたらって」
浩二 「同じだよ。俺だって愛の将来の心配くらいするよ」
麗子 「そんなのレベルが違うって」
浩二 「そうかな。子供の未来を心配しない親なんていないよ。確かにキョン姉の場合は大変だと思うけど」
麗子 「じゃあ教えてよ。世界の未来が明るいってどうしたら思えるの?」
浩二 「世界の未来が不幸だってキョン姉まで思ったら世界が救われないよ」
麗子 「私だって思いたいよ。世界の未来は無限だって信じたい」
ピンポーン。
浩二 「俺が。はーい」
来たのは明日香。
浩二 「なんだ明日香か。どうした?」
明日香 「愛ちゃんに似合うかなって思って」
浩二 「ありがとう、じゃあ」
明日香 「ちょっと待ってよ。入れてくれてもいいじゃない」
浩二 「今忙しいんだよ」
明日香 「じゃあ手伝うよ」
浩二 「いいから帰れよ」
明日香 「何よ、邪魔!」
と入ってきて。
明日香 「麗ちゃんこんばんは。愛ちゃん元気―?」
麗子 「ピンピンしてる。明日香どうしたの?」
明日香 「え?」
麗子 「何?」
明日香 「麗ちゃん急にフレンドリーになったね。何かあった?」
麗子 「え?」
浩二 「麗子!どうした麗子!」
麗子 「ああ、ごめんなさい」
明日香 「私は別にいいけど」
浩二 「ああ、赤ちゃんも出来たし家族に気を遣わないようにしようって今決めたとこだったんだよなー」
麗子 「そうそう」
明日香 「そうなんだ。でもいいと思う。そういう風にしてもらったほうが話しやすいし」
麗子 「でしょう?じゃあこういう感じで」
明日香 「てゆーか忙しくないじゃん」
浩二 「忙しいんだよ。夫婦の語らいの時間を奪うなよ」
麗子 「私は別に」
明日香 「これ愛ちゃんに友達から」
麗子 「ありがとう」
明日香 「今日キョン姉に会ったの」
浩二 「どこで?」
明日香 「喫茶店」
浩二 「大丈夫だった?」
明日香 「何が?大丈夫だったよ。何かキョン姉吹っ切れたみたい」
浩二 「それは良かったな」
明日香 「カウンセラーの人と会っててその人のおかげみたい。で、その人がすごいの」
浩二 「すごいって?」
明日香 「なんか宝塚みたい」
浩二 「宝塚?」
明日香 「オスカルみたいなの」
浩二 「へえ」
明日香 「男だったらカッコイイのに、オネエだからね・・・もったいない」
浩二 「オネエなんだ」
明日香 「それがさ、あいつの知り合いみたいで」
浩二 「あいつって?」
明日香 「ヒロカズだよ」
麗子 「ヒロ兄?」
明日香 「そう、それ。何か付き合ってたらしいの」
浩二 「男と?いやオネエとか」
愛が笑い出す。
明日香 「愛ちゃんウケてる」
麗子 「だから結婚は諦めてるなんて言ってたのか・・・確かに辻褄は合ってる」
明日香 「え?あいつが麗ちゃんにそんなこと言ったの?」
麗子 「ヒロ兄帰って来たときに病院に来てくれたでしょ?そのとき」
浩二 「おい麗子!麗子!」
麗子 「あっ」
明日香 「麗ちゃん、あいつと仲いいんだ」
麗子 「一応兄妹だからね」
明日香 「ふーん」
麗子 「あれだ。実の兄弟に言いにくいから私に言ったのかも」
浩二 「そうだ、きっとそうだ!」
明日香 「兄妹だと思ってるのはキョン姉ぐらいだよ」
浩二 「キョン姉も何を考えてるんだか」
麗子 「兄妹なんだから仲良くしたら」
明日香 「無理。だって他人だもん」
麗子 「まあそう言わずに・・・でも想像すると気持ち悪いね」
浩二 「ヒロ兄が・・・いやヒドイ」
明日香 「その人は綺麗なんだけど。あのヒゲ面がね」
ピンポーン。
浩二 「今度は誰だよ」
ゆず声 「麗子!麗子!」
浩二 「ゆずさんか」
麗子 「はいはいはいはい」
奥の玄関の戸を開けるとゆずがスーパーで買ったと思われる鍋の具材を持ってドスドス入ってくる。
ゆず 「なんですぐに開けないの!」
麗子 「静かにしてください。赤ちゃんがいるんですから」
ゆず 「何その慇懃な態度」
麗子 「慇懃?」
浩二 「こんばんは、ゆずさん。こないだはすいませんでした」
ゆず 「ホントよ、あれ?」
明日香 「あ、どうも。妹の明日香です」
ゆず 「麗子の姉のゆずです」
明日香 「ああ、結婚式でベロベロになってお父さんで遊んでた」
ゆず 「そうだっけ?覚えてない。改めましてよろしくね」
明日香 「はい」
麗子 「で?」
ゆず 「そうそう。こないだタカシの携帯がロックしてるから絶対浮気してるって話したじゃん?」
麗子 「そうでしたっけ?」
ゆず 「何で忘れるわけ?」
麗子 「ごめんなさい」
ゆず 「で、タカシに訊いたの?そしたらなんか有名人と知り合いになって携帯教えてもらったんだって。で自分の携帯落としたときにその人の番号が流出したら大変でしょ?だからだって。いやあ勘違い勘違い」
麗子 「そうですか」
明日香 「絶対ウソだよね」
浩二 「シッ!」
麗子 「で?今日は?」
ゆず 「この前愛ちゃんに癒され損ねたから今日は朝まで飲もうと思って」
浩二 「それでその食材を・・・」
ゆず 「タカシが浮気してなかったお祝い」
浩二 「・・・ありがとうございます」
ゆず 「愛ちゃーん」
麗子 「あ、おねむですね。ちょっと寝かしつけて来ます」
ゆず 「えー。ちょっとだけ抱かせて」
麗子 「やめてください」
ゆず 「ケチ」
麗子 「(イラっと)ケチ?」
浩二 「ほらママ、愛ちゃんおねむだから」
浩二と麗子、奥へ。
ゆず 「あーあ」
明日香 「残念でしたね」
ゆず 「つか変じゃない?」
明日香 「変?」
ゆず 「なんか別人みたい」
明日香 「それ私も思った」
ゆず 「変だよね。変に他人行儀だったし」
明日香 「私にはタメ語でした」
ゆず 「え?」
明日香 「気を遣うのはやめようってことらしいですけど」
ゆず 「そうなんだ」
明日香 「なんかどっかであんな感じの人知ってる気がするんですよね」
ゆず 「ふーん。明日香ちゃん未成年じゃないよね」
明日香 「はい」
ゆず 「飲もう!」
明日香 「はあ」
酒盛りが始まる。
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公演台本「ありふれた愛、ありふれた世界」
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