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いつも上機嫌な男

以前の職場に男性社員が二人いた。

社員はもっとたくさんいるのだが、パートさん達の監督的な役職についていたのがその二人だった。

1人はいつも不機嫌な男。ふきげんなのでフッキーと呼ぼう。

たいていむっつりしているのだが、私たちパートが失敗をしたり気に入らないことがあるとあからさまに不機嫌になる。パートさん達はフッキーがご機嫌ななめになるとびびって彼になるべく近づかないようにしつつ陰でたいそうののしる。

私は不機嫌を利用して周囲を意のままにしようとするヤツ撲滅委員会所属なので(この委員会、今作りました。入会したい方はそう望めばもうメンバーです)、フッキーの機嫌が悪くても気づかないふりをして伝えるべきことは伝えるしわからないことは尋ねる。彼の話を聞いてみればなるほど、と納得できる面もあったりして「なら不機嫌ぶちかましてないできちんと話したらいいじゃないですか~」と思いはしたが、さすがに言わなかった。そこまで彼の人生にコミットしたくなかった。

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一方もう一人の男性社員はいつも上機嫌だ。かなり小柄でいつもふわふわと歩く。顔も童顔でどうみても10代か20代なのに40代だという。

彼のことはピーター・パンと呼ぼう。

ピーター・パンが不機嫌だったり怒っているところを見たことがない。仕事上のトラブルがあったら、どうすべきかパートさん達に指示を出し、どうにもならなければ上役や取引先と連絡を取り、話をまとめて次の仕事にとりかかる。この間彼にご機嫌の浮き沈みはないし、失敗したパートさんを叱ることもなく逆に励ましてくれる。だれもびくびくしないで済む。

すごい!すごい仕事のできる素晴らしい男だ。

・・・と思うでしょ。ところがそうでもない。

いつも上機嫌だけど、幼い見た目に似合わず酒と煙草が大好物で仕事中に二日酔いで隅っこの廃材置き場でぐーすか眠っている。眠っていないまでも、自分の席で明らかに心ここにあらずでぼーっとしていたり、どうも調子悪いなあと言って帰ってしまったり。休憩時間には光の速さで煙草を吸いに出る。

マンガみたいでしょう。こんな人が実在するんですよ。こうして自分で描写してみるとジョージ秋山のマンガ『浮浪雲』の主人公みたいだけど、あんなに素敵なもんじゃありません! いつも不機嫌よりはいいけれどやっぱり困る。

さてあなたはどっちの社員がいいですか?

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事実って小説より奇なりだなあ、と思うことが一つ。

フッキーはピーター・パンよりも年上で会社でのキャリアもずっと長いのにピーターはそのご機嫌力を買われたのか、フッキーの上司になってしまった。フッキーは腹立たしいと思っているはず・・・

ところがまったくそんなことはなく、フッキーはピーターのことが大好きなのである。私たちパートに対しては不機嫌ぶちかますくせに、ピーターにはいつもにこにこ! 居眠りしているピーターにそっとパーカーをかけてあげたり、体調のすぐれないピーターを病院まで愛車で送ってあげたり。別に上司にゴマすってるわけじゃなくて、本当にピーターのことが好きなようなのである。もしかしたら、恋しているのかもしれないと思うほどに。

恋、というより憧れなのかもしれません。フッキーも自分のすぐ不機嫌になってしまう悪い部分がわかっていて、その正反対のような存在のピーターに憧れているのかも。

そしてピーターもフッキーの上司になっちゃってやりにくいなあ、と思っているそぶりもなし。この性格ちょっとうらやましくもあります。

欠けた部分を補いあい支え合いながら人々は生活しているのだなあ・・・

とちょっとイイ感じで終わろうかと思ったけど、フッキーもピーターも同僚としてはぜんぜんダメだからね!! 

一応書いときました。

それではまた明日☆

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