読書ブログ: 三十七冊目「トカトントン 太宰治 」

幼稚園の年長組のころだったと思う。もしくは小学一年生。おおむねそのくらいのころの話。寝る直前に耳を澄ませると、きーん、という金属音が聞こえることに気がついた。その音に集中すればするほど、はっきりとそして大きくなっていくように感じられた。

いつしかこの音はどんどんと大きくなって、やがて耳が聞こえなくなるのではないだろうか? と、幼稚園児の僕は考えた。それは、子供ながらに恐ろしい空想だったので、しばらく耳に音を澄ませたあと「気にしないようにしよう」と決めることにした。気にしなければ、やがて消えるだろう。寝て起きれば消えるだろう。そう思ったのだった。

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