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第6回 IPOにおけるマーケティングプロセスの実務

はじめに

こんにちは、初noteです。
株式会社プレイド Financeチームの大薮です。上場後はコーポレートファイナンスに加えて、事業開発やアライアンスの推進をしております。

まずは、上場後のプレイドの成長を見守り、応援していただきありがとうございます。
みなさまからの期待を上回るように頑張って行きたいと思っています。

遅くなったな、お待たせ!!感がありますが、「プレイドの"非常識"なIPOまでの道のり」第6回はIPOにおけるマーケティングプロセスについて経験してきたところをお話できればと思います。

自分はIPOプロセスのなかで成長可能性資料とロードショーで用いる説明資料(日・英)の作成を担当をしておりました。

ロードショーマテリアルの概要

ロードショーマテリアル(以下、マテリアルと記載)は、発行体が投資家向けの説明に用いる資料です。この資料の目的としては、ロードショーでの説明を補助すること。会社概要の説明などを資料を用いて明快に説明することで議論を生みやすい土台を作ります。CEOの倉橋やCFOの武藤がこの資料を用いて国内・海外の機関投資家にプレゼンをしました。

マテリアルの作成は、CEOやCFOを含む当社のメンバー、証券会社や弁護士事務所との協議のもと、目論見書の内容と平仄をあわせつつ進めていきます。例えば、プレイドで言えば、以下のようなメンバー構成で作成をしていきました。

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マテリアルは、目論見書の内容と整合性を取りながら作成しなければなりませんマテリアルについては目論見書の説明資料という立て付けであるため、目論見書を超えた内容の記載は難しいです。社内の他のメンバーと連携を取りながら、どうしてもマテリアルに入れたい項目があれば、目論見書などの他の資料にも追記してもらう必要があります。

また、単に、目論見書の内容を記載するというわけではなく、どのようにビジュアルを整えていけば投資家に対して理解が進みやすいかを考えて作成する必要があります。何度もビジュアルや文言、資料の構成を組み替え直していくことで、資料の品質を高めていきます。

このマテリアル、投資家から受け取るフィードバックなどをもとに都度修正を行っていくのですが、よくよく数えてみると日付_versionが100以上存在しており、それなりの回数を修正していたことがわかります。笑
新しい市場や領域を切り開いているスタートアップが、文章や資料で自社を正しく表現することは非常に難易度が高く、この修正の嵐は避けて通れるものではなかったと思います。もし読者のみなさまの中に今後、ロードショー資料などのマテリアルを作成する可能性がある方は、こういうもんだと思っておいていただくのがよいと思います。自分は最初、こんなに修正があるのかよ!と悲しくなってしまっていたので笑

ロードショーはこのマテリアルを参照しながら進んでいくため、非常に重要な役割だと感じています。投資家の方にプレイドのことを素早く理解していただき、より中長期かつ抽象的な深い議論につながった!と感じる瞬間は担当者として嬉しかったです。

マテリアルの作成を通して感じたこと

プレイドのマテリアルの作成過程では証券会社側、弁護士側から多くのコメントをいただきましたが、その中で特に印象的に残っていることはプレイドのビジネスや成長戦略について深く理解した上で、的確なコメントをいただけたことです。私たちは自社のIPOということで気合いが入っているのは当然ですが、証券会社や弁護士の方々も私たち以上に案件の成功に向けて本気でコミットいただけたと感じました。マテリアルの作成の面では、細かな言葉の選び方など私たちが大事にしていることを汲み取っていただきました。

今振り返ってみると、このマテリアルの作成を通じて、IPO担当チームのメンバーだけでなく、必要に応じてプレイドのメンバーの協力を得て、彼らと協議し、一緒に悩むことで自分たちの考えが深まっていったように思います。また、さまざまな企業のIPOを支える証券会社や弁護士事務所と事業に関する議論をすることによって、自分たちの思考を整理しながらマテリアルをブラッシュアップしていくことができました。

特に思い出に残っているのは、KARTEの顧客単価の上昇を表現したスライドです。(このスライド自体はお見せすることができずすみません…。)以下、英文目論見書P.9をもとにマテリアルを作成しました。

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内容としては初期の月額課金収入(MRR)から、IPO当時(2020年9月末)にかけて、顧客単価が87倍になった顧客や、66倍になった顧客がいるというスライドであり、KARTEが同顧客の他部署のサイトに導入されたり、オプションであるKARTE Datahubの利用が進んでいくと顧客単価が飛躍的に高まった事例について伝えています。

このスライドについては、証券会社の方と雑談をしている最中に生まれました。「KARTEは実はKARTEが同じ企業の異なるウェブサイトに使われるようになると、契約高が大きくなるし、またKARTE DatahubのようなKARTEに付帯するオプションがあると顧客単価が一気に上がる、カスタマーサクセスのやりがいのあるプロダクトなんですよね。」と私から話をすると証券会社の方が「是非、そのスライドをストーリーのなかに入れましょう!!!」と。翌日スライドの案を持ってきてくれました。

このスライドは、IPOロードショー本番で、本当に刺さりがよかったスライドだったな、と思います。なぜお客さんがアップセルを受け入れているのか?、それが再現性が高いことなのか?ということは投資家的な観点で気になるポイントで、当社のビジネスモデルについて、よく議論できたポイントだと思います。

SaaSは企業にとって価値がなければ簡単に解約されてしまいます。そこまで顧客単価を高めることができるのは価値があるからだ!と。TAMの議論よりもこちらの議論のほうがわかりやすかったと思いました。

証券会社の方に背中を押していただいたおかげで、実際に資料に盛り込むことができ、それが投資家に受け入れられた時は実務担当者としては嬉しかったです。

このような素晴らしい方々と一緒に仕事をすることができて嬉しかったですし、非常に勉強になりました。プロフェッショナルな方々は職場の流動性が高く、また同じチームで仕事をすることは難しいかと思いますが、また一緒にこのようなことができることを願っています。自分の力以上の大きな成果を産むことができたのはひとえにまわりの方々のサポートがあってこそだと思っていますし、自分も次にこのような機会があればレベルアップした自分の姿を見せられるようにしていきたいです。

成長可能性資料の概要

成長可能性資料は、東証からマザーズに新規上場する会社に対して、開示が求められている資料です。目的としては「投資家に合理的な投資判断を促す観点」の提供です。具体的にはビジネスモデル、市場環境、競争力の源泉、事業計画、リスク情報などを記載していくことが必要です。

現在の成長可能性資料の詳細については東証が発行する以下の資料をお読みいただければと思います。記載の例とともに記載すべき内容が掲載されています。
グロース市場における 「事業計画及び成長可能性に関する事項」 の開示について

成長可能性資料の作成は、マテリアル以上に関係者が増えていき、デザイナーの鈴木や、広報の櫻井などを含めた体制で行っていきました。マテリアルについては内容自体の変更が上場承認の直前までありますが、成長可能性資料の作成は上場承認後のため、資料の方向性が大きくブレることはありません。そのため、デザイナーでCDOの鈴木にデザインを全面的にお願いし、資料のクオリティを高めた状態で世の中に良い資料を出せる体制構築を行いました。

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(飛躍的に資料の質が高まり、内容は同じだけれどもここまで印象が大きく変わるのか、すごい!!!となった記憶があります。以下は具体的なスライドです。)

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ちなみに、マテリアルについては1度目のInformation Meetingの際に作られた基礎がありました。しかし、成長可能性資料についてはIPO準備の期間が長かったプレイドとしても初めてのプロセスでした。

成長可能性資料を作成するなかで感じたこと

マテリアルと成長可能性資料の内容の作り方は少し異なると思いました。マテリアルについては「プロ向け」かつ「口頭で補足できる機会のある資料」でありますが、成長可能性資料資料は「すべての方向け」かつ「口頭での補足説明ができない資料」です。

そのため、マテリアルの内容は引き継ぎつつも、資料だけを見た方でも適切に理解できる内容・構成に変更することが重要だと考えていました。

チーム内でも「これは世の中の人がみんな見れてしまう資料なんですよ!、説明する機会がない人にでも当社を理解していただけるようにしないといけないと思います。」と説明していました。少なくとも資料だけを見て、最低限の理解ができる内容にしなければならないと。

自分が前職のときにロードショーに出席したことがあったことも要因ではありますが、それ以上にそこで役立ったのが、意外にも自分の社歴の浅さでした。

自分は2020年4月にプレイドに入社しました。IPO準備メンバーのなかでは相対的に「プレイド初心者」です。入社後はファイナンスチームの中で一番長くプレイドに在籍する向江に「プレイドはどうして成長してきたの?」「マーケティング?、プロダクトの力?、営業力が強いの?、外資系のプロダクトと比べてサポートがしっかりしているの?」など、様々な側面についての質問を、投げかけ消化する日々を送っていました。

幅広い層を対象にする成長可能性資料を作成する観点で言えば、「プレイド初心者」であったことがプラスに働いたのかな、と感じました。自分のような初心者的な観点で見て、これは理解をするのは難しいだろうという項目については修正していきました。

ほとんどの投資家は自分と同様に「KARTE」を触ったことがない方もしくは「KARTE」を利用する業務領域ではない方だと理解しています。自分の前職での機関投資家での経験や個人的な思いとして、人間は自分の身の回りに起こっていることではないと本質的な理解を進めづらいというものがあります。自分が消費者として使っている企業のほうが、ビジネスモデルを理解しやすいのは当然ですよね。

一度も触ったことがない人でも活用例や設定方法を理解することができれば、より「KARTE」の価値が伝わり、結果として多くの人に知ってもらうことが可能だと考えました。具体的には、マテリアル内では記載のなかった「KARTE」の利用ステップや活用事例、基本的なサブスクリプションモデルの説明、セキュリティ観点などを追加で記載していきました。また、これは説明なしでは理解ができないだろうと感じる部分については削除しました。

公開した成長可能性資料についてはSNSでもいくつか反響をいただきました。わざわざnoteにまとめていただいた記事では、自分と鈴木で一緒に考えた、資料のこだわった部分に気づき、丁寧に解説していただいていて、とても嬉しかったです。

↓プレイドの「成長可能性に関する説明資料」が素敵すぎる3つの理由
https://note.com/enterprisevalue/n/n2e4767772ac0

おわりに

投資家向けマーケティングプロセスで得た知見のお話をさせていただきました。IPOロードショーではALLプレイドだけでなく、証券会社や弁護士の皆さんにご支援いただきプロセスを乗り越えることができました。

また、個人としてもプレイドのことをテクノロジー面、ビジネス面から立体的に理解したことで、今後の成長戦略についてよく考えるきっかけになったプロセスだと感じています。

プレイド内でよく言われていることですが、プレイドの進捗率はまだ0.2%くらいだと考えています。これから新しい事業を作り、社会にインパクトを与える取り組みがたくさんできればと思います。まだまだ楽しいことは始まったばかりですし、これからどのようにビジネスが展開していくか、自分も楽しみです。

また自分が前職で所属していた運用会社と異なり、自分でビジネスを作ることができる事業会社は本当に勉強が尽きない環境です。日々新しいビジネスアイディアやプロダクトの案が出てくる環境であり、嬉しいてんやわんやはまだ続きそうです。

事業開発やアライアンスを担当しておりますので、ご興味のある方はご連絡いただければと思います。また、全方位で採用強化しておりますので、ご興味ある方からの応募を心からお待ちしています!

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(書き手プロフィール)
大薮聡史。1994年10月31日生まれ。新卒でアセットマネジメントOneに入社し、法人営業業務としてメガバンクグループを担当。のちに株式運用部にて日本株リサーチ業務などに従事。2020年4月からは財務・経営企画として事業計画策定などコーポレート・ファイナンスのほか、新規事業の立案や実施など幅広い業務を行っている。エンジニアリングも勉強中で何かしらデプロイすることを企んでいる。

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