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おすすめのへんなアニメを教えたい② 〜ロシア ガリー・バルディン編〜

こんにちわ!きむらです。
何かとくさくさした世の中ですがみなさんお元気ですか?
くさくさしているとは言ったものの、それだけでけして終わらないで欲しいなと思っています。

ところで!
前回の記事でなんだか勢いがついたので、気持ちが続く限り好きなアニメを紹介していきたいと思います。
ちなみに前回の記事はこちら↓

前回はとにかく思いつくオススメのアニメをとにかく順不同に紹介していったんですけど、今回からテーマや作家を絞って紹介していこうかな、と思います。

今回はソ連(ロシア)の作家、ガリー・バルディンに絞って紹介したいと思います!
(いつの日か気合の入り散らしたヤン様特集を組もうと思っているんですけど、ガチ勢に怒られたくないのでまだちょっと先・・・)

【人物紹介】

(画像はWikipediaより。以下紹介文は書籍『アートアニメーションの素晴らしき世界』参考)

ガリー・バルディン(英:Garry Bardin 露:Гарри Яковлевич Бардин)
1941年、ソ連のオレンブルグ生まれ。
元々演劇学校を卒業し劇場の俳優になるが、その後人形劇場の演出家になり、アニメーションを制作し始める。1975年「空に届け」でデビュー。セルアニメから人形アニメを制作し、ソ連崩壊後には「スタイエル・スタジオ」を設立。
現在も作品制作行なっており、ホームページで活動を見ることができる。(HTMLだけでしか作ってない簡素なHPなのでなんか年齢を感じます。最高)

めちゃくちゃざっくりしか紹介しなかったんですけど、彼のアニメーションの見所は、「実験性」。セルアニメ、人形、粘土に限らず、日用品を用いて命を吹き込みアニメを作っちゃうのは当時かなり衝撃だったんじゃないかな?わかんないけど…
御託を並べるより見てもらいたいな!早速以下から紹介するぜ!

1 , 「コンフリクト」(1983)

日本だとこれが一番有名なのかな?
僕は高校生くらいの時にニコニコ動画で初めて見た記憶。
かなり社会性の強いアニメーションで、青色のマッチと緑のマッチが、ささいなアクシデントによって戦争を引き起こすというストーリー。
僕ら日本人だと一番想像しやすいのは、韓国と北朝鮮の国境じゃないだろうか。時折発砲したり揉めたりするあのヒヤヒヤ感が弾けてしまったら…恐ろしいとかじゃ済まない。
こうしてみると、こんなことで争っているなんて滑稽に見えるだろうけど、戦争などの争いごとってほんとに些細なすれ違いから起こる気がする。
日本のアニメ巨匠の富野監督が作った『イデオン』も、めちゃくちゃしょうもないことで戦争が勃発して、正直16歳当時の自分は腹が立ったけど、今思えばもう歴史そのまんまなのだ…。
何より僕はこのアニメに惹かれたのは数分の中の争いは、「マッチ」という日用品を用いているところだ。なんていう皮肉なんだろう。マッチは僕たち自身で、些細な摩擦ですぐ燃え上がってしまう比喩のように感じる。
怒りは燃え広がり、あっという間に灰になってしまう。
しょっぱなから長文の紹介になったけど、とにかく見て欲しい。
直接的にショッキングな映像はないけど、精神的には少しショッキングかも。今心の調子が良くない人は見ないでね。

2 , 「狼と赤ずきん」(1990)

これはみなさんも知っている童話「赤ずきんちゃん」をモデルにしてることは、もうわかるよね!キャラクターがアメリカのカートゥーンみたいだなっていったら、当時のロシアの人、怒るだろうな…(あくまで私見です!)
わかりやすくいうと「シュレック」とか「シンプソンズ」みたいに、当時ソ連で有名な人物やトピックをめちゃくちゃパロディしてるらしく、僕が見ても結構笑えるのに、母国の人はもう爆笑したんじゃないかな。
ブラックコメディ色が強いから、大人も子供も笑える。
最初からお母さんとどんちゃんしながらパン作るシーンとか可愛すぎるし、赤ずきんちゃんがやたら暴力的で狼への制裁がキツくてめちゃくちゃ面白い。
しかも最高なのが、ミュージカル仕立てなところ!
もう何いってるかわかんなくても、パッションで見れる。
Youtubeに上がってるのはバルディン公式チャンネルなのになぜか3分割してあるから、気になる人は動画から続きを見てみてね!
これは楽しい気持ちになれる最高のエンタメアニメだし、曲がいいから是非みて欲しい!

3 ,「Break!」(1987)

これはもうすごい!メキメキ動く!カメラワークもキャラもどんどん動く!
目が楽しいアニメーション。そしてこの軽快さと、ちょっとバカっぽい”男の戦い”って感じが笑いを誘う。
あと粘土ならではの特徴もあるし、人としての面白い動きもあって、アニメーション表現を余すとこなく使ってる。
これはもう特に書くことないよ!見て笑ってくれ!それだけ!!!!!

4 , 「Fioritures」(1987)

これも「コンフリクト」と表現方法が似ていて、今回は針金!
針金男が、針金で自分の住まいを劇的ビフォーアフターしてくけど、そうは簡単にいかねぇ〜〜〜ちきしょ〜〜〜〜ってなるアニメ。生活の中で起こるイライラをめちゃくちゃ表現してて「わかるわ…」ってシーンが多い。
あと全然関係ないけどずっとちん○ん丸出しなのが変に面白くて、コイツずっと全裸でDIYやってんじゃねーぞ!オイ!って都度思っちゃう。
笑えるけど、結末の彼にはもう同情しかないな。どんどん便利になってくけど、一体安心ってどこで完全に得られるんだろうね、という気持ちになります。

「Road Tale」(1981)

これはバルディン作品の中でもあまりないセルアニメの作品。
泥臭い軽トラがしなやかな曲線の車に恋をするという話。
これはすごくわかりやすいけど、ロミオとジュリエットのような階級の違いで幸せになれるはずのない二人の禁断の恋の話。
80年代のロシアは、これといって大きな事件や騒動もないけど、代わりに改革もなく経済も停滞していてもうなんか色々泥沼だったそう。(凄く平たい情報なので間違っていたら是非訂正してください!)なのでこの曲線美の車はそういう特権階級、つまりお金持ちの子で、青くて汚れた軽トラは肉体労働者や個人店経営などの庶民なのかなあ。
この二人のささやかなデートがすごい可愛くて、軽トラは車を帰り道家まで送ってあげたりしててキュンキュンする。
でもある事故が起きてしまい、悲しい出来事がある。そこからラストにかけてが本当にじ〜んとくるので、ラブストーリーが見たい方は、是非!

Adagio」(2000)

これは本当に鳥肌が立つような作品だった。
ある迷える灰色の群衆を、突如として現れた白く輝く者が先陣を切って導くんだけど、その異様さを恐れて、助けてもらったのに群衆は恐れ、攻撃する。(このシーンは魔女裁判や、マイノリティの人を自殺に追いやってしまう社会構造を思い起こさせる。)
でも、後々になってその異端者の凄さがもてはやされ、群衆はその異端者をいつしか崇拝し始めるけど…という物語。
「神」と「群衆」の関係性を端的に表しているようで、恐ろしかった。
現代でも、影響力を持つシンガーや芸能人、政治家なんかにこういう流れをよく見るけど、何事も盲目的になることでマイノリティや考え方の違う人を故意にも無意識にも攻撃し追いやっていることに気づかなくなるし、最悪の場合それを”正義”と呼んでしまう。それは本当に人としてやりたくないことだと思う。

他にも、縄をキャラクターに家族の崩壊を直球で描いた「Marriage」や、ポップで可愛い「Slipshod painters」など、幅広い作品を作ってます。
最新作「みにくいアヒルの子」は2010年の作品なのもありかなり現代的になってたからびっくりした!

ガリー・バルディンの作品(特にメッセージ性の強い作品)は一貫して「救われない者」や「人間の性(さが)」みたいなものをテーマにしていて、この状況で見るとやっぱり印象が違う。
僕たちの見えないところで、苦しんでいる人がいる、ということを意識するだけでも世界は大きく変わっていくんじゃないかな、と思わせてくれる。

ちょっと真面目な話多めだったけど、今回は大好きなソ連の作家、ガリー・バルディンの紹介でした!
次回はアメリカのヤバアニメを作りまくるアニメーター、ビリー。プリンプトンを紹介します!お楽しみに〜〜!!!

(おまけ)ビリーの作品はだいたいこんなん↓


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