初めての釣り

普段はテニスの投稿をすることが多いので、今回はもう一つの趣味「釣り」について話そう。

■釣り好きになった背景

物心がつく前から魚が大好きだったらしい。食べるのも見るのも。魚を指差しては「とと！」と言っていたんだとか。

自分は生後間もなくスイスに移住した。スイス在住時、ドハマりしたテレビアニメがあった。「ピングー」だ。

「ピングー」はスイス発祥のペンギンアニメ。セリフは無いのでいつも「クェックェッ」としか言わない。現地のスーパーでは「ピングーチョコ」というものを売っていて、チョコレートの中にプラスチック製のフィギュアが隠されている商品だった。集めることに必死で滅茶苦茶食べたので、よく虫歯になった。

なぜ「ピングー」が好きだったか。「ピングー」では釣りをして魚を獲る場面がよくあった。魚を「釣る・見る・食べる」。全てを体験するピングーに憧れを抱いたんだと思う。そこから「釣りをすれば魚に会えるし食べられる」と知ったんだろう。魚本位の思考である。

■初めての釣り

３歳の夏、日本に帰ってきた。

母方の祖父が岡山に住んでいて釣り好きだった。確か４歳の時、家の近くを流れる川で釣りをしたのが最初だろう。

狙いはハヤ。いわゆる雑魚釣りである。水深が深いところではカゴ釣り、浅いところでは毛鉤を使った流し釣りで狙うのが主な釣り方だった。

最初に経験したのはカゴ釣り。撒き餌を使うため数が期待できたんだと思う。

初めての釣りで一番苦労したのは、竿の扱いだ。当時はまだ背丈が小さかった自分にとって、長くて重い竿を扱うのは大変。水深が深い川の真ん中に仕掛けを落とさなければいけないのに、どうしてもその手前に落としてしまう。水面にカゴをこすってしまいコマセをすぐ切らしてしまうなんてこともしょっちゅうだ。

祖父はとても短気だった。カゴが水面に少しでもこするようなら、稲妻の如く怒号が飛ぶ。その度に、涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにしていた。（上手くいった時はちゃんと褒めてくれた）

ただ、この頃の自分はあまりにも単純だった。仕掛けが上手く入れば面白いように釣れるので、魚が掛かる度に怒られたことは忘れて大興奮。しばらくするとまた怒られて泣き、またはしゃぐ…そんなことの繰り返しである。

釣れた魚は甘露煮や塩焼きにして食べた。「釣る・見る・食べる」を一遍に経験したわけだから、魚好きの自分は大満足。ここから釣りに没頭するようになった。

■祖父が教えてくれたこと

釣りを教えてくれた祖父は小学校１年生の時に癌で亡くなった。最後に祖父と釣りをした時のことは、今でもはっきり覚えている。

その日は毛鉤の流し釣り。前日の大雨で釣りができるか微妙だったが、何とか晴れて夕方から開始。祖父と叔父の３人で川に向かった。2人は川の中に入って仕掛けを投げ続けていたが、自分はまだ小学校に入る前。川辺に座り黙々と仕掛けを投げた。

確か2~3時間の釣行で、自分は2匹釣った。叔父は1匹も釣れずしょんぼりしていた気がする。祖父は10匹以上釣ってたもんだから、「来年はもっと釣ってやろう」と意気込んでいた。

家に帰り夕食の時間になったが、祖父がなかなか降りてこない。しばらくして39.0度の熱があることを知った。「川に入って風邪を引いた」とその頃は本気で思ったものだ。

今振り返ってみると、その頃から祖父は通院していた。恐らく癌治療で。自分の年が年だから、周りの大人は何も話さなかったんだろう。祖父の闘病生活は今に至るまで詳しいことは何も聞いていない。ただ、あの時の高熱は間違いなく癌に関わるものだったと直感している。そうか、そこまでして一緒に釣りしてくれたんだな。

それ以降何回か祖父に会ったが、岡山の実家で次にその姿を見たのは葬式の時。東京の家で頑張って作った折り鶴を、棺桶にたくさん入れた。

年末年始とお盆休みで帰省していたこと。夏にしか釣りをしなかったことを考えれば、祖父と一緒に釣りをした回数は片手で数えられる程度だろう。時間としてはとても短い。だがそこで学んだ釣りの楽しさを、今に至るまで大切にしてきた。そしてこれからも釣りを楽しんでいく。

「釣りは楽しい」

それを教えてくれた祖父にはとても感謝しているし、まだ生きていたらもっと一緒に釣りをしていただろうとも思う。ただ、あの頃のように怒鳴り散らされることだけは勘弁だ笑

■釣りのポリシー

「釣りは魚を家に持ち帰って食べるまでが釣り」

これが自分のポリシーである。食卓を賑わせることが目的だ。

初めて釣りをしたのは川だが、今は海釣りの方が好き。理由は簡単で、刺身など色んな魚料理が楽しめるから。それに海の方が多様な魚に出会える。魚が掛かる度に「どんな魚が釣れるのか」ワクワクするのも海釣りの醍醐味だろう。

今では自分で魚を捌き、簡単な魚料理なら勝手に作れるようになった。だから、釣りをするにしても

「今日は皮目を湯引きした刺身が食べたい」

なんてことを考えながら竿を握っている。そういう時に限って、魚は全く釣れないんだけど。

そんな話をしていたら釣りがしたくなってきた。そろそろ船釣りで高級魚狙いに行こうかな。手巻き寿司食べたいし。