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Basketball Diary Ep.07 『人情』と『無情』

基本的には来るもの拒まずの部活動でありながら、最後にはプレーヤーは選抜されていきます。
バスケットボールのコートに立てるメンバーはわずか5人ですし、各大会のエントリー人数は、20人、15人、12人と、上位の大会になるほどその数は少なくなっていきます。勝ち上がれば勝ち上がるほど、その舞台でプレーできるプレーヤーは少なくなっていくわけです。
間近に迫った県大会のエントリー人数は15人でした。この年は、3年生13人に加えて、すでに主力のローテーション入りしている2年生が3人いましたので、その中のたった一人をエントリーから外さなければならず、大変頭を悩ませていました。その中、1人の3年生プレーヤーが練習に参加できずに見学していました。
彼はスターティングメンバーとしても活躍できそうなセンスと、物怖じしない思い切りの良いプレーが持ち味でしたが、不運が重なり膝に大きな怪我を負っていました。地道なリハビリを続けていましたが、大会まで残りわずかのこのタイミングで復帰するのは難しそうに思えました。しかし、彼は意を決して練習に参加することを選択します。この彼の決断に対し、指導者としてどのように対応すべきだったのでしょうか。彼はその後の練習中に、再び膝を痛めてコートにうずくまってしまいました。
彼がエントリーメンバーに残りたいという気持ちは痛いほど良く分かりましたし、プレーすることを決めた勇気は感動すら憶えました。最後の望みに賭けて頑張ってもらいたいと思うのが「人情」だとすれば、やはり怪我のリスクの大きさを鑑みて、例え「無情」と言われようとも諦めさせるべきだったのでしょうか。今思い返しても、はっきりとした答えが出せない自分がいます。

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