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Basketball Diary Ep.05 『奇跡』と『定石』

スポーツに怪我はつきものです。
とはいえ、プレーヤーが怪我を負った時はとても心が痛みますし、その怪我をどうにか防げなかったかと後悔したりもします。
かつて、3年生最後の大会直前に膝に大怪我を負ったキャプテンがいました。小気味よいプレーと3ポイントシュートが持ち味の彼は、まともに歩くこともままならない、立っていることすら覚束ない状態となってしまいました。大会当日、彼の膝は痛々しいまでにテーピングで固定されていましたが、やはり十分にプレーできないままに試合は進んでいきました。気がつけばもう相手チームに大量リードを奪われており、もはや勝負の行方よりも、ベンチを温め続けている彼の気持ちをどう治めたら良いのか、そのことばかりを考えていました。
なんとか最後はシュートを打たせてあげたい。更なる怪我のリスクを承知しながらも、試合終盤に彼の交代を指示しました。試合終了と同時に彼が放った3ポイントシュートは、リングで一度大きく跳ね上がりながらも見事リングを通過したのでした。バスケットボールの神様がもたらした「奇跡」だったのでしょうか。
最後のシュートに至る過程を振り返ると、残り時間わずかなところで彼がオフィシャルに交代を告げたとき、3年生のチームメイトはすかさずファウルをしてゲームクロックを止め、メンバーチェンジの機会をつくりました。コートに立った彼は、足を引きづりながらも迷うことなく右のコーナーに立ちました。3年生のガードはトップからドライブを仕掛けて彼にアシストパスをしました。迷いのないキャッチ&シュートでした。わずかな残り時間の中で彼に3ポイントシュートを打たせるため、それぞれのプレーヤーがバスケットボールの「定石」を踏み、その連続が導いたシュートチャンスだったのです。何よりそのシュートを決めきることができたのは、キャプテンである彼が積み重ねてきた3年間の努力の賜物に違いありません。バスケットボールの神様に感謝しながらも、彼ら3年生の最後の好プレイに拍手です。

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