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初代ウルトラマンと旧約聖書ヨブ記


初代ウルトラマンに「バラージの青い石」という無国籍風の砂漠の都市を舞台にした幻想的エピソードがあります。昆虫型の怪獣アントラーが登場します。
アントラーはおそらく英語のアントライオンに由来するのでしょう。ウスバカゲロウの幼虫アリジゴクのことです。
このアントライオンがヨブ記に関係します。ヨブ記4章11節に雄獅子は獲物を得ずに滅びとあります。ヘブル語にはライオンを表す単語はいくつかありますが、雄獅子と訳された言葉はヘブル語でlayish
やがて旧約聖書がギリシャ語に翻訳されます。七十人訳聖書と言います。このときにアラビアの獅子の名前、ミルメクスを訳語として採用。他のライオンの単語とは原語は違うんだよと言う親切心で少し違う単語を訳語にあてた。しかし、この単語そもそも蟻という意味らしく。どうも蟻と呼ばれるライオンがアラビアにはいたみたいです。なんで蟻かはわからない。
もちろん翻訳者としてはこのままでは読み手にライオンではなく蟻に誤読されるかもと危ぶんだのでしょうね。ご丁寧にミルメクスに一般的なライオンを意味するレオをくっつけて造語してしまったみたい。多分、蟻じゃないよ、蟻と呼ばれるライオンだよという意味を込めてミルメコレオという訳に。
しかし、読み手はそうは受け取らず、アリライオンという化け物がいるんだと誤解。頭がライオン、体はアリの幻想生物を想像してしまう。
実際、中世で聖書の次に読まれたフィシオロゴスという自然百科的本にはミルメコレオが怪物として紹介されて一気に有名に。
このミルメコレオの英訳がアントライオンでして、実際のアリジゴクとは関係ないんですが、多分生態が幻想生物のミルメコレオっぽいという理由で名付けられたのだと思われます。
そして我が国のウルトラマンの怪獣のネーミングにも見事に採用されましたという落ちで。ヨブ記とウルトラマンが関係あるという話でした。


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