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新本格ミステリー

好事家以外どうでもいい話題だろうが、1987年は自分みたいな推理小説マニアにはエポックメイキングな年だ。作家の綾辻行人が「十角館の殺人」を上梓した年だからだ。当時大学生で梅田の紀伊国屋書店でリアルタイムで新刊を買って読んだが、衝撃が走った。時はバブル。以来、新人ミステリー作家が次々デビューし、新本格ミステリーブームが起こる。

ブームには当然仕掛け人がいるもので、キーパーソンは3人だ。ひとりは作家の島田荘司。この作家は新人作家の発掘と後継育成に力を入れていた。

あとの二人は編集者でひとりは講談社の宇山日出臣。この人が新人ミステリー作家を次々発掘し、デビューさせた。ミッションスクールの同志社の卒業生で、講談社に入社したのは中井英夫の往年の名作ミステリ「虚無への供物」を文庫化したいからという理由だから筋金入りのミステリマニアだ。中井英夫の曽祖父は、クラーク博士の通訳だった人物で、当然、内村鑑三、新渡戸稲造とも親交があり、キリスト教文脈に位置づけられてもいい。

「虚無への供物」は実はウルトラマンの設定にも間接的に一役買っているのだが、長くなるので機会を改めて。

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