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津山線

岡山県津山が舞台の内田康夫の小説に「歌わない笛」がある。名探偵浅見光彦シリーズだ。東京から来た登場人物が岡山駅で津山線の急行砂丘に乗りかえるシーンが出てくるがもう再現できない。列車名から察せられるだろうが津山から因美線経由で鳥取に直通する列車だ。

小説発表時は現役だったが現在このルートで鳥取に直行する列車は定期運行としてはもはや存在しない。というのも智頭急行の開業で岡山、鳥取間の長距離輸送はこちらに完全に譲った形だからだ。2023年現在、津山線の優等列車といえば急行砂丘の後進に当たる快速ことぶきがあるが津山駅止まりで、比較的短距離の地域輸送に徹していてそれなりにニーズがある。

毎週土曜日、岡山から国道53号線経由で、御津地区にある教会に伺い、礼拝を行っている。かつて宣教師アダムスはこのあたりの学校で教えた。御津地域での教え子が音楽家の山田耕筰だ。アダムスも通ったであろうこの道に並走する形で津山線の鉄路が延びている。 

鉄道の拠点としての津山は4方向から列車が来るジャンクションだ。岡山からは津山線。新見方面からと姫路方面から姫新線。鳥取方面から因美線。列車本数を別とすれば、中国山地にある都市の中でも格段の全方位性。鉄道環境は少し広島県の三次に似ているかも。もっとも姫路から姫新線に途中まで乗ったことあるが、姫新線経由で津山を目指す方はよほどのもの好きかも。素直に新幹線で岡山に出て、津山線に乗り換えたほうが速いわけで。 
    
津山の交通の要衝的な地理環境は、鉄道敷設以前からのものだったはずで、吉井川の舟運も相まって江戸や上方から様々な文化か流入したことが、この地に蘭学、洋学が定着した理由のひとつではないかと思う。その延長に明治に入ってから津山から何人ものキリスト者が輩出された経緯がある。

開国より遥か以前、津山出身の蘭学者が訳した中国へのアメリカ人宣教師の本を京都で同志社を設立した新島襄が読み、密航までしての海外留学する影響を与えた背景もある。意外なところで意外な形で人と人は繋がり、影響を与え合う。たとえ実際に出会ったことはなくとも。



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