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クライミングと身長

スポーツは平等だが、必ずしも公平ではない。

↑背が高いデンマーク人たちには登れる方法が何通りもあるようだが、私は今のところそのどれもできる気がしない課題。

「クライミングって、背が高い方が有利なんでしょ?」
と、質問されることがよくある。

いつも私は、
「場合による」
と答える。

背が高い(≒リーチが長い)と当然、遠くまで手足が届く。
背が低い(≒リーチが短い)と当然、遠くのホールドには手足が届かない。届かない場合は、ジャンプしないといけないことすらある。

その一方で、ホールドの間隔が狭い場合は、背が高いとお尻を突き出す姿勢になってしまい、登りにくいなんてこともある。

なので、登っていると、
「これは背が高い方が有利だねー」も「これは背が低い方が有利だねー」も割と同じようにある。
(…いや、実際は6:4か、もしかすると7:3くらいで背が高い方が有利かもしれないが。。。)

外岩の場合、登る課題は自然の産物なので、
もはやホールド間の距離はどうすることもできないが、
ジムクライミングの場合は、ルートセッターが想定するクライマーに合わせて、この辺りの調整をすることができる。

  • クライマーの平均身長がどれくらいなのか

  • この課題を登る人の身長・リーチの上限と下限を何センチくらいとするのか(=そこから外れる身長・リーチの人は登れなくても仕方がない)

  • 身長差による課題難易度の差をどれくらいまで許容するのか

などなどを考えなければならない。

私は日本でも背が低い方なのだが、それでも日本のクライミングジム・アメリカのクライミングジムともに身長が理由で登れない課題というのは、経験した記憶がない。
もちろん、背が低いがゆえに苦労した課題はあるが、
反対に背が低いがゆえにラクだった課題もあったのだろう(←自分が有利な場合は認識しづらい)。
ひとえに日・米の平均身長があまり変わらないのと、ルートセッターが苦心に苦心を重ねた結果であろう。

ところが。。。

デンマークでは、
男子平均身長が180 cmオーバー、
女子平均身長が約170 cm。

この国において、身長162 cm・リーチ152 cmの私は多くの場合、不利であると言わざるをえない。

さらには、多くのジムで、「昨日まで客だった人が、今日からルートセッターになっている」(=訓練を受けていない)という現象がみられる。

そのため、明らかに身長が理由で登れない、あるいは難易度に大きな差(体感2グレード以上)が出る課題がたまにある。


今通っているジムで、私はそれなりに登れる方(ジム最難グレードの一つ手前まで完了)なので、ルートセッターたちも課題を作る際に私の存在をできる限り考慮してくれているようではある。

ただ、やはり万全とは言い難い。
「確かにリーチ的には届くけど、足の位置的に無理」というのがよくある。
リーチの感覚は、手を広げればわかることなので、長身ルートセッターたちでもわかりやすい。
「左手でホールドを持った状態で、次のホールドに右ひじでタッチできるから、サトシでも届くはず」と。

一方、足の位置。
これも、「届くか、届かないか」という話であれば、ある程度理解はされているのだと思う。
しかし、実際に問題になるのは、足が届いたうえで「そこから正しいムーヴが繰り出せるのか」ということ。

例えばこの(↓)課題。
近年流行りのコーディネーションスタート。
(作ったのは、コーディネーション大好きな若者。やはり最近、ルートセットを始めた。そして、彼の課題はいつも足の位置が低身長に優しくない。。。)
ちなみに、グレードは「赤」。私は本来、一撃しておかしくないグレード。

本来は、右足に重心を移動して、右手を取る→続けて、身体を傾けて左手を取ってから、右足と両手でジャンプ、というムーヴなのだが、
スタートの右足が遠い&高いので、身長が低いと、右足に重心を移す時点でそこそこの勢いが必要となる。さらに、左手を取りにいくとき、すでにジャンプを始めなければならない。すると、飛びながら左手を取り、以降のムーヴは残り僅かな足の伸びしろと手の引きでなんとかしなければならない。

右足のホールドがもう少し近い or 低い、あるいは、せめて左方向に長いホールドであれば、低身長でも対応可能なのに。。。

問題は、これに対して文句を言えるのか否か、ということ。
言い換えると、身長162 cm、リーチ152 cmを「外れ値」ではなく、「想定されうるクライマー(客)」としてセッターに認識してもらうべきかどうか。

(チクリと文句を言ってみたけど、たぶん伝わってない気がする。。。)

ちなみに、個人的には、女子の平均身長を鑑みるに、私は辛うじて「想定されうるクライマー(客)」の範囲内だと考えている。

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