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情報の密度という考え方(開口について)

「〇〇さん、お口開けてもらっても良いですか?」

ほとんどの方がこれと似たようなことを言ったことがあると思いますが、患者さんに求める一つ一つの動作や言動について、そこから得られる「情報の密度を高める」ということは臨床においてとても重要だと思っています。

それが問題点へと到達するための臨床推論をより短縮し、自身の仮説を裏付け、患者様に対して最短でより効果的なリハビリを提供するための土台になっていると思っているからです。

摂食嚥下のリハの分野では、まだまだ十分にエビデンスとして積み重ねられていない部分が多々あります。現場では、何をどう評価したら良いのか、自分のやっていることが本当に意味のあることなのか、たくさんの方が悩みながら臨床に取り組まれていることと思います。

自分も病院や老健で多くのSTの後輩から、何をしたら良いのか分からない、本当に自分のやっていることに意味があるのか、どうしたら患者さんが良くなるのか分からないんです……と相談を受けてきました。

その答えは、正直自分にもはっきりとは分かりませんが、自分の中ではっきりとした評価基準を持ち、正常運動との違いを考え、問題点とリハビリの展開に対する仮説を立て、実際に臨床を積み重ねて、その先の患者様の変化を通して検証を行う。。。ということを何度も何度も何度も繰り返していくしかないのかなぁ……と思っていたりします。

ですが、実際に評価の基準や仮設を考えるにしても、それ自体がうまくいかないことも多くあるかと思います。それには、自身の知識や技術を一つ一つ積み重ねていく自己研鑽が何よりも大切だと思っていますが、その一助になるのが「情報の密度を高める」ということだと思っています。

「〇〇さん、お口開けてもらっても良いですか?」

この開口の場面一つをとってみても、「頭蓋が先行して開口を行うのか」「頭蓋は動かずに下顎が選択的に開いていくのか」「左右どちらにシフトしながら開口していくのか」といったことから、「閉口筋の柔軟性」「開口筋(舌骨上筋群)の努力性、左右差」「頚部による代償性の有無」といったことを伺い知ることが出来ます。もっと欲を言えば、左右どちらを頚部回旋した方が嚥下反射の惹起が得られやすいか、奥舌の挙上を求めた時に左右どちらの方が挙上しやすいか、奥舌や軟口蓋の挙上制限があった時に即時的に改善させることができるのかどうか、といったようなことも仮説として考えることができます。

これには何度も何度も実際に患者様を通して、経験を積み重ねていくしかないのかなぁ……と思ったりもしますが、

もし、

もしお口を開けて頂いたその瞬間にそれらのことが頭の片隅でよぎったとしたら、その後の臨床も患者様との関わり方も、良い方向に変わるんじゃないかなぁ……と思ったりします。

自分も本当に分からないことばかりで、自分の考えていることや臨床が合っているのかどうか不安で仕方がないこともありますが、それでも考え続けて仮説を立てて臨床を通して患者様に教えて頂くしか無いのかなぁ……と感じています。

それがより良いものになるように、みんなで「情報の密度」を高めていけたらとても素敵ですね。

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