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台風の匂い


横殴りの雨や風が窓にあたり時折その音で目が覚めた。たっぷり水がいくように昨晩ベランダの室外機の上に置いたモンステラが倒れていた。

空気がこもり部屋が蒸し暑くならないように9月は基本窓を開けっぱなしにしているのだけど、断続的に訪れる暴雨風に踊らされ今日は開ける閉めるを繰り返していた。

夕方、本を読んだまま寝落ちしてしまった。ベッドのそばにある通気口から入ってくる涼しい風が心地よくてそれが一層眠気を呼んだ。防災行政無線のチャイムが聞こえたのは薄っすら覚えているからたぶん寝たのはその後すぐだろう。

夜、無性にポテトチップスが食べたくなり外に出た。玄関の扉を開けると、開けていた部屋の窓と玄関口との間に一本の空気の通り道が出来上がり、強烈な風が部屋ぜんたいに渡った。ハンガーに吊るしたままのワイシャツが大きく揺れていた。

外の空気は生温かった。不規則にくる風の勢いが印象的だった。アスファルトの匂いと湿っぽい匂いが混ざり合う。どこかの居酒屋から出る煙、平和な家族の温かな夜ご飯、草熱れのような植物の匂い、シャンプーやリンスの人工的な香料。
もしかしたらうんと遠い場所の匂いが台風に運ばれて遥々東京にやって来たのかもしれない。もし九州の空気を東京で味わえたならそれだけでかなりギフトよ。

気象庁によると、台風14号は明日の朝、西日本から東北地方にかけて広範囲で風雨をもたらすそう。いよいよ悠長なことを言ってられない。

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