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生活のなかで使う【プラシーボ効果】とノシーボ効果

ある心理学の実験によると、同じ健康管理の習慣でも、メカニズムを知っていたほうがその効果は高まります。

実験では、事前の情報のおかげで、行動の質自体に変化があったのかもしれません。あるいは、脳の思い込みの力によるものかもしれません。なんにせよ、情報の有無で結果に差がついたことは事実です。

この心理学の実験は、プラシーボ効果というのを連想させます。
プラシーボ(偽薬)を与えても効果がでるというアレです。
今回はそのプラシーボ効果について解説していきます。

プラシーボ効果とは

医学的には効き目のない薬で、治療効果が現れることをプラシーボ効果といいます。効果のある薬だと信じて飲んだ場合、薬理的影響のないブドウ糖や乳糖であっても、効果が出てしまう現象です。

脳のスキャンをすると、本物の薬が作用する部位と、プラシーボが作用する部位が同じという観察結果もあります。ただ、プラシーボの方は作用の時間が短かったそうです。

そもそも「薬」は、それ自身が発揮する効果と、人間が思い込む力の相乗効果で作用するのかもしれません。

ノシーボ効果とは

一方、治癒だけではなく、偽薬による副作用をノシーボ効果といいます。
これは吐き気の副作用がある薬ですと説明を受け偽薬を飲んだ場合、本当に吐き気をもよおしてしまう効果のことです。

他の思い込みの研究もあります。心疾患で命を落とすと信じている人と、そうは思っていない人の比較です。二人に病歴に違いがなくても、思い込んでいるだけで発症率が高かったそうです。

このように、偽薬には治癒の効果だけではなく、負の効果もあるといえます。そして思い込みの力も病気の発症率と関係があるようです。

プラシーボへの期待

偽薬の効果が期待されている医療分野もあります。
抗うつ剤の研究では、偽薬に対する反応率が10年ごとに7ポイントごと上がってきているそうです。

1980年に30%だった偽薬による治療効果が、2000年には44%になったといいます。細かな研究データはわかりませんが、偽薬の治療効果に期待することができそうです。

精神疾患の薬物治療に対する、人々の信頼性が上がったことや、情報の共有・医師への信頼などが原因として挙げられています。

時代の変化が、プラシーボ効果を高めているのかもしれません。

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ダミー手術の話

ダミー手術という話を聞いたことはあるでしょうか。
背骨の骨折治療の手術で、「椎骨形成術」というのがあるそうです。
実際には施術しないダミー手術をおこない、治癒が確認されたのです。

つまり、外科的な手術に対しても、プラシーボ効果があるということが言えます。人間の回復力にはもちろん限界はあるのでしょうが、精神の力には驚くべきものがあります。

プラシーボ研究の問題点

実はプラシーボ効果の研究はあまり進んでいないといいます。
薬を使わずに治癒できるなんて、素晴らしいと思えます。
しかし、偽薬にはいろいろな問題があるのです。

ダミー手術の際に問題になったのが、保険の問題です。

手術には当然高額の費用がかかります。しかし、実際には施術していません。そのうえ、患者さんには施術したと説明するわけですから、保険会社が納得するはずがありません。施術したと嘘をつかなくては、治療効果は得られません。しかし、保険会社からすると、行っていない高額な費用を払うのは不当だというわけです。

じつは、保険会社よりも重要な問題があります。それは、患者への説明義務です。

もし、偽薬をあたえて症状が悪化し、取り返しのつかないことになったらどうなるでしょう。本来と投薬するべき薬のかわりに、偽の薬を与えるわけでです。病状にもよりますが、これは医師一人が簡単に判断でできることではありません。

プラシーボ効果の研究は、どのような利益をうむかわからないうえに、おおきな倫理的な問題も含んでいるのです。

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生活の中で使えるプラシーボ効果

プラシーボ効果を、うまく生活に役立てることはできるでしょうか。

生活習慣についても、ただ良いらしいからやるではなく、具体的にどういったメカニズムで体に良いのかを知っかり勉強することで、より高い効果が期待できます。

ダイエットであれば、食べたものを記録することや、栄養価・運動効果についてしっかり認識することで結果が出やすくなります。

病気で薬を使うことになった場合も、この考え方は使えそうです。どういった効果・メカニズムなのかを詳しく知っておくことで、薬の効果に加えてプラシーボ効果も期待できます。

もっとも、そのためには間違った情報や知識に惑わされないようにする必要があります。

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まとめ

偽薬によって体が治癒するプラシーボ効果と、ダメージを与えるノシーボ効果について解説してみました。

昔から、「病は気から」といって、「気力」でなんとかなるという意味で使われます。もっとも、なかなか気力だけでは病気は治りません。

ちょっと思いついたのですが、同じ「き」でも「記」というのはどうでしょうか。情報や知識という記録をしっかり書いて学ぶことを「記力」と考えてみます。気力で予防はできませんが、「記力」で健康管理をすることはできるのかもしれません。

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