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うしろめたさと行動力

前方に信号機の横断歩道、一方の端には歩行者が佇んでいます。運転してるあなたはどうしますか?

JAF(一般社団法人日本自動車連盟)の昨年行った調査によると、信号のない横断歩道における、全国平均の一時停止率は17.1%です。これは昨年よりも増えたといいます。それでも、8割以上が止まらないという結果です。

都道府県による差も大きく、数字だけで一概に「こうだ」と決めつけることは出来ません。もっとも、車はあまり止まってくれないように感じます。

先日

久しぶりに運転をしていたとき、さっそく試される場面に遭遇しました。信号のない横断歩道で、人が横断を待っていたのです。どうしたか。止まって歩行者優先を実行しました。全国の上位17.1%入を果たしたのです。すごくて偉いです。えっへん。

本当は

お恥ずかしながら、実は、普段は止まらないことが多いのです。何を隠そう自分も82.9%の一人です。全然自慢できません。お恥ずかしいです。たまに当たり前のことをして、いい気になってるだけでした。

止まらない心理

止まらない人の心理はどんな感じでしょう。

おそらく、止まらなきゃいけないとわかっていても、瞬時に止まらなくてもいい理由を、考え出しているのではないかと睨んでいます。(自分のことは棚上げ)自分が止まらなくても他の人が止まってくれる。こちらが速度がはやいから、過ぎてしまえばゆっくり渡れる。などなど

自分のこころの動き

先日のケースでは車を止めました。しかし、それはどういうことだったのでしょうか。奇跡的にその時だけ倫理観に目覚めたからでしょうか。

その時の思考を順に振り返ってみます。

前方に信号のない横断歩道が見えます。脇に人が立っていて、渡ろうとしているのがわかります。ここで認識します。交通ルールでは、歩行者優先。ここは止まるべきだ。幸いスピードも出ていないので、止まることはできそうです。バックミラーをみます。後ろには車がいません。対向車もいません。いるのは自分の車と歩行者だけ。後ろの車にぶつけられたり、後ろの車に文句を言われることはありません。そして、歩行者にみられている。自分は試されてる!?

だから止まったのです。

なんのことはありません、できる言い訳がなかったから止まっただけのことです。自慢にもなにもなりません。我ながら切ないですが。事実です。

うしろめたさ

うしろめたさって何でしょう

【後ろめたい】
《形》自分に、やましいところがある
(ので気がとがめる)

「うしろめたさ」というのを感じたことが有るでしょうか。(くわしい定義・研究は専門家にかませます)要するに、なんとなく悪い気がする、とか、イケナイことだと知りつつ、ヤルときの気分のことです。失礼。

一時停止をしない言い訳はこの、うしろめたさから生まれてきます。つまり言い訳の生みの親です。うしろめたさを持ちつつも、一時停止をしない人が多くいそうです。言い訳のデータをみてみましょう。

実際JAFの2017年のアンケートによると、言い訳の上位は以下3つ

・対向車が停止せず危ないから(44.9%)
・自車が通り過ぎれば歩行者は渡れると思うから(41.1%)
・横断歩道に歩行者がいても渡るかどうか判らないから(38.4%)
(複数回答)

多くの人が、はっきりと止まらない理由を挙げています。つまり、多くの人は、ちゃんとうしろめたさを感じているのです。

うしろめたさ発動

一時停止をするかどうか試される時、うしろめたさが発動し、同時に言い訳も生成されます。これは、心と体の一致をさせようとする無意識の働きによるものです。

止まらなきゃいけない
  ↓↓
止まらない

これだと、行動に整合性が保てません

止まらなきゃいけない
  ↓↓
正当(だと思いこんでいる)な理由
  ↓↓
止まらない

こうなれば、丸く収まります。

うしろめたさを行動に

先程の例だと、うしろめたさが発動するも、言い訳が立たず止まることができました。つまり、うしろめたさを行動につなげるには、言い訳をなくせばいいということになります。ちょっとした発見です。

どんな世界がいいか

横断歩道で一時停止をする世界と、だれも止まらない世界どちらがより良い世界でしょうか。さっきのデータには続きがあります

何も考えていない・歩行者優先をしらなかった(9.4%)

全体の1割の人は、うしろめたさを持ち合わせていないことになります。逆にいえば、9割もの人は、いくらかの「うしろめたさ」を持ち合わせていることになります。そして、もし9割の人が言い訳をすることをやめれば、世界はより良いものになるのではないかと思うわけです。

社会問題の多くは、同じような構造を含んでいるような気がします。多くの人が後ろめたさを持っているが「らしい言い訳」も同時に生成しています。

うしろめたさを持たない人は、そもそも行動する理由がありません。しかし「うしろめたさ」は行動の理由になりえます。世界をより良い方向に進めていくのはこの、うしろめたさがか鍵になるんじゃないかと睨んでいます。あなたはどう思いますか?

参考
JAF「2019一時停止率」
https://jaf.or.jp/common/news/2019/20191010-01
JAF「信号機のない横断歩道」に関するアンケート調査結果、2017
https://jaf.or.jp/-/media/1/2590/2610/2639/2641/2651/201706_no-signal.pdf

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