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【院長への道 ep.11〜開業戦線異常なし】医院設計について

 一旦、物事が始まってしまえば、そのあとはものすごいスピードでドンドン進んでいく。

 昔、カナダ出身の怪力レスラー【グレート・アントニオ】がお客さんでいっぱいの観光バスを引っ張って動かした時のように、バスの静止摩擦力を越えるまでが大変で、ひとたびそれを越えてしまえば、あとは小さな力で動かし続ける事ができるのに似ている。

 いや、似てないかもしれない。

 例えが、微妙だったかもしれない。

 とにかく、開業すると決まれば、後はほとんど悩んでる暇がないくらいに、ひたすら【選択】と【決定】の繰り返しになってくる。

 開業場所も決まり、すでに上の箱部分があるのだから、診療室の広さも自ずと決まってくるため、次はどういったレイアウト、設計にするかを考えねばならない。

 通常は、ここで専門家である【建築士/設計士】さんの力を借りるわけだが、歯科医院というのは一般の住宅と違って、かなり特殊な部分が多く、専門的な知識や経験が必要とされる。そのため、必然的に設計料も一般的な住宅を建てるよりも割高になるのだ。

 現在はどうかわからないが、この頃は一から新築で建てる場合は、総建設費用の約1割と言われていた。例えば建設費用が5000万なら、設計費用は500万というわけだ。

 今回は、新築でなく改装なので、流石にそこまではかからないが、ここでも私は、持ち前のケチケチ精神を発揮して『自分で設計する』事にしたのだ。

 だってお金がないんだから仕方がない。(ただし、当然最終のしっかりした設計図は、一級建築士さんに描いてもらわないといけない)

 自分でレイアウトを考える事で、医院デザインの部分の費用を浮かせようと思ったのだ。

 これは、【上杉のおばちゃん】に紹介してもらったUPM御用達の工務店の『サイトウ工務店』の斎藤社長が一級建築士だったため可能だったが、今なら絶対『やめとけ!』と言うだろう。

 なぜなら、やはりいくら歯科医師とは言え、設計の素人が考えたデザインなので、消毒室からの各チェアへの移動のしやすさ、患者さんやスタッフの導線、空調の効き、電源を取る位置など、細かい部分で『ちくしょう!こうしとけばよかった!』という部分が、実際に働き出してから沢山出てきたのだ。

 サイトウ工務店も、歯科医院の施工はほとんどした事がなく、やはり経験の少なさが出たところも否めない。

 やはり【餅は餅屋】という通り、専門家に任せた方が上手くいくと思う。

 ただし、今は情報も沢山あるし、歯科医院の設計に関する専門の書籍も沢山出ているので、自分である程度理想の歯科医院をデザインしてみることも可能だと思う。

 一から十まで全て丸投げで設計してもらうよりは、自身でラフデザインを起こして、そこで足りない部分や改良した方が良い点を教えてもらう方が設計料が安くなるかもしれない。そこは業者さんとの交渉次第かと思う。

 歯科医師は金持ちだと思われているので、何をするにしてもとかく高めに言われる事が多い。

 お金をかけるところはかける、絞るところは絞るでしっかりと見ていかないと、開業資金は当初の予定より大幅にオーバーしてしまう事だろう。

 とにかく、この時は【一円でも安く!】と、スーパー玉出のように思っていたので、壁紙や床材、天井材、照明や外壁など、1番安いシンプルなものにした。

 外壁も、正面から見える部分だけちょっと豪華な大理石風のタイルを使ってもらい、横の見えない部分は外壁を上から塗り直しだだけで、そのままとした。

 2階の住居部分は、当面の間、自分が生活するため、トイレとキッチンの水回り、あとはユニットバスだけ新品で入れてもらい、その他はほとんど古い家にあるものをそのまま使った。

 だから、窓とかドアはそのまま、ふすま、障子は外側の紙だけ張り替えて使った。窓のクレッセント錠とかサビサビのままだし、アルミサッシも錆びてガタガタのままだったがそのまま使った。

 本当は新品にしたかったが、何度も言うようにお金がないので、工務店の人に『これやりかえるんやったら追加費用かかります』と言われるとどうしようもない。

 とにかく、診療室以外の【お金を生み出さないゾーン】には、とことんお金をかけないようにした。

 あとは、チェアを何台入れるかだが、この20坪弱というスペースではMAX4台だったので、迷わず4台分の配管とした。チェアは増えれば増えるだけ、増収する事ができる。最初少なめにしておいて、後から増設しようと思っても配管がなければ増設が大変なので、するしないに関わらずマックスの配管をするべきだと思う。(最初から【俺は、私は、絶対2台しかしない!】という強い信念があれば別だが)

 開業費用の関係で、チェアは最初2台しか入れる事が出来ない。残りの2台分のスペースは、当面の間コンサルテーションスペース兼、在庫置き場とした。

 こうして、医院のラフデザインが決まった。あとはここに落とし込んでいくために、診療用チェアをどのメーカーにしていくかだ。(通常は先にチェアを決めておかないと、正確な図面がひけないので、チェア選びが先になるのが普通である)

 こうして、伝説のチェアを求めて、サトシィの冒険は始まった。

〜その12へ続く

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