学振PD(RPD)で子どもが認可保育園に入所するためにしたプロセスを振り返る

自己紹介を兼ねて

私は現在日本学術振興会特別研究員(以下「学振」と書きます)のRPDとして、哲学や文学の研究に従事しています。大学等での非常勤講師や原稿料や印税等、研究による成果物への対価となる報酬等を除いて副業はできませんが、数年間の生活は保障され、かつ研究費も出るので、若手研究者としては非常にありがたい制度です。そして、学振には2022年現在、博士課程に在学している学生向けの「DC」(その下位区分としてD1からの3年間採用の「DC1」とD2以降からの2年間採用の「DC2」があります)と、博士号を取得後3年間採用の「PD」および育児によって研究を中断した博士号を持つ研究者が研究を再開するための「RPD」があります。

(人によっては「男でRPDを取得って……」と言ってくる人もいますが、男性だって育児に積極的に参加はしなければならないものです。私の場合妻が常勤の研究者だったこともあり、妻が産休に入る前までから既に、そして育休が明けて職場に復帰するまでは主夫として学期期間平日の家事はほとんど行っていました。コロナでウェブ授業が求められていた時期も、妻の授業の邪魔をしないように保育園へのお迎えもしていましたし、基本的に朝の朝食やお茶、コーヒーの支度は今でも私の仕事です。私には主夫としての矜持があり、授乳など母でしかできないことを除いて、妻が仕事で忙しいタイミングでは基本的には私が家事育児をしています(妻の採用任期が終わり激務から解放された現在も、妻の原稿の締め切りが近い日はこれまで通り、家のことは私の役目です)。それゆえ、この段落の冒頭にもあるような眼差しを跳ね返すくらい、家のことをしてきたと自信を持って言えます。閑話休題。)

保育園入園のハードル

そして、子どもを養育していることが採用条件の一つであるRPDはもちろん、PDも若くても20代後半、人によっては40歳前後の方もいて、そうすると少なからぬ採用者の方が育児をしているようです。しかし、PDやRPDで採用されている研究者の方で、お子さんを認可保育園に預けるまで大変な苦労をするということがよくあるようです。私は妻の前職の任期が満了するまでは妻の職場で、かつ私をRPDとして受け入れていただいている大学のなかにある学生・教職員用の保育園に預けていましたが、現在は実家に頼りやすいよう東京に転居して認可保育園に預けています。

ここでは博士号取得以降の研究者(PD・RPD採用者)としての保育園入園について、私の経験をまとめました。(PDと言っても、DC1採用で早期修了したり、D3以降でDC2採用されたりした場合の採用最終年度の資格変更に伴うPDの場合は、経験していないためご参考になれないかもしれません。悪しからずご理解いただければと思います。)

実際のプロセス

0. 私が現在居住する江東区では前年の11月に、次年度の保育の申請があるので、諸々書類を集めるところから始めました。必要書類はhttps://www.city.koto.lg.jp/280308/moushikomi-r4.htmlにあるもの全てを揃えました。ただ、私は2022年2月までは、先述の通り夫婦で別の地方の大学で教えていた関係で、そちらの区役所から江東区の保育課入園係さま宛でご転送いただく形になり、申請時点で区民の方々よりも早くに書類を提出することになりました(夫婦で共有しているTime Treeを見返してみると11月24日必着のところ、不足書類や記載内容のチェックもあるから早めにご提出を、ということで11初旬には居住地の区役所に書類を出していたようです)。

入園必要書類は各地方公共団体毎で変わってくるのでなんとも言えませんが、(R)PDで共通して困るのは「就労証明」。というのも、学振は採用中の研究者とは「雇用関係」にはないため、「就労証明」という形の書類を出すことはできない、という事情があり、それで保活・入園に難儀するということがままあるようで、戦々恐々としていました。ただ、順を追って手続きすれば、問題なく──もちろん保育園が多い地域に転居できたという事情もあるとは理解していますが──入園まで至れました。そのプロセスを、「就労証明」を軸に説明を進められればと思います。

1. 「学振マイページ」(https://area31.smp.ne.jp/area/p/lalj9oetam2lcoclb1/4Iv_ii/login.html)にログインして、「③採用証明書等発行依頼フォーム」から相談

2. 自治体指定の書式がある場合は、学振の研究者養成課にもご相談すると良いと思います。(https://www.jsps.go.jp/j-pd/syoumeisyo.htmlを参照)

3. 上記の案内後、返信用封筒を同封の上で就労証明書を郵送する

4. 学振からは「就労証明書」の「就労」の箇所に抹消線が引かれて、「採用証明書」として返送されてきました。少なくとも江東区の場合、就労証明書には勤務時間の欄があり、ここが空欄のまま返ってきます。

5. ここで上の段落の太字部の、学振と研究者の関係が問題となってきます。特に「研究に専念すること」以外学振からタスクを課されることもないため、具体的な勤務時間等は証明できないというのも尤もなこと。(そもそも学振特別研究員は「研究遂行経費」という、お給料(に相当するもの)の3割までの金額を経費として計上することができるというシステムがあったり、確定申告は自分で行う必要があるなど、個人事業主に準ずる身分だと理解しています。)加えて、当時居住していた区、江東区の両方から、これまでの事例に照らすと受け入れ大学に働いている時間を証明してもらう書類を追加で出すのが良い、ともアドバイスを受けたこともありました。開業されている方々と似たような形で勤務時間について自己申告するのが良いと考えました。

6. 私の大学の場合、研究者の大学内での事務的なことは「リサーチオフィス」というところで行っていただいています。リサーチオフィスの担当の方にこの旨を相談し、記載内容について確認しながら勤務時間を自己申告するファイルを作成していただき、印刷の後にセンター機構長の公印を捺印してもらい、やはり郵送してもらう

7. 学振にお返しいただいた「就労証明書」もとい「採用証明書」(勤務時間の欄は空欄のまま)と、「勤務時間の申告書」を他の書類と併せて区役所に提出

8. 翌年1月末に江東区から保育園の利用調整結果を郵送で受け取り、保育園入園内定

という流れでした。「1.」「2.」のステップから数えて、それぞれの書類が返ってくるのを1週間ずつと考えると、「7.」のステップまでは2週間あるいはそれ以上は見積もっても良いかもしれません。企業に勤められている方々がされる申請よりは早め早めに書類を集める必要がありそうです。特に私の場合引越しを挟むため自治体を越えての申請で、締め切りもさらに早く、去年の10月末はてんやわんやでした。

最後に

幸いにして元の居住地が大学が多い都市で、かつ江東区も人口が多かったからか、それぞれ前例があったようで、申請自体はスムーズに行くことができました。順を追えばそこまで大変でもない作業かもしれません。しかし学振(R)PD採用者の保育園入園申請を受け入れた事例がない自治体にお住まいの方で、保育園入園をご検討されている方にもこの情報が共有できれば幸いと思い、投稿させていただきました。それも、子育てをしながら研究に復帰する研究者たるRPD採用者としての務めの一つだと思います。

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