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すごい人と認められたい病

人間の欲望は、実に不思議で、そして厄介だ。僕は長い間、「すごい人と認められたい」という欲求を、自分では無自覚のうちに抱え続けていた。その欲求は、知らず知らずのうちに、僕の働き方や考え方に深く根を張り巡らせていた。

たとえば、僕は「自分がいなければ進まない」状態を内心で誇らしく思っていた。なんて未熟なんだろう、と今なら思えるけれど、当時はその状況に酔いしれていた。僕が忙しくしていることで、「僕が必要とされている」という感覚を得られる。そんな状態を、満足げに受け入れていたんだ。

特に、ベンチャー企業で働く若い頃の僕のような仕事大好きな20代には、こうした状況に陥る人が多いのではないだろうか。自分が中心となり、物事を動かしている感覚。そのスピード感や高揚感は、ある種の中毒性を持つ。しかし、そこに隠れている本質的な問題を見落としてしまう。

本当に重要なのは、「自分がいなくても回る仕組みや組織をつくること」だ。それが組織の持続可能性や未来を担保する唯一の道だということに、僕はしばらく気づけなかった。

しかし、気づいてもすぐに欲求を手放せるわけではない。「自分がすごい人と認められたい」という欲を完全に消し去ることはできないし、たぶんそれ自体が間違いなのだと思う。人間の承認欲求は、簡単に捨て去れるほど軽いものじゃない。

だからこそ、この欲求を否定するのではなく、一度きちんと満たしてあげることが大事だと感じた。ある程度「認められた」という感覚を得て、自分の中で折り合いをつける。そうすることで初めて、「そんなこと考えててもしょうがないよな」と思える日がくる。そして、そのときこそ、次のステージが始まる。

この過程を経て、僕はようやく「自分を必要とする組織」ではなく、「自分がいなくても回る組織」の未来を真剣に考え始めることができた。承認欲求に振り回される自分を一歩引いて見られるようになると、世界の見え方が変わる。

ベンチャーで働く誰かがこの記事を読んで、「あ、これ俺のことだ」と少しでも気づいてくれたなら嬉しい。そして、その気づきが、あなたにとっての次のステージの扉を開けるきっかけになることを願っている。

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イッチー/伊地知 悟
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