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AI技術を使って会社を辞めた話(短編小説)

大手IT企業で働いて15年。ここまで耐えてきたが、年齢とともに勉強嫌いなデジタルの進化に着いていけなくなくなり、そして金銭的な待遇も長きに改善する傾向なく、私はコロナ禍が明けた頃から辞めることばかり考え続けてきた。そしてついこの前体調のとても良い晴れの日に決行したのである。事は都心にある高い高いビルの一室、埃ひとつない会議室で起こった。無機質なデジタルのお話をする会議、プロジェクターには神様の棲家であるクラウドシステムが投影され、PMやらアーキテクトやらコンサルやら何やらが、あーでもないこーでもないと議論をしている。そこで私が話す番がやってきた。私はここ数日で考えた方法で、あるハプニングを起こしたのである。

私のMacにUSB-Cを繋ぎ、画面をプロジェクターに投影する。そこでサーバーやらのスライドを見せて、次のページへ行くためにワンクリック。そこに投影されたのは、50代後半の女性マネージャーの顔を使ってAIで生成したポルノ画像だった。数年前のアイコラとはレベルが格段に違う。白壁の会議室に投影されたその完璧なまでの熟女ヌードにより、一瞬で会議室の空気は張り詰めた。そして数秒後、一気に世界は私に牙を向いた。会議室から私は手を取られて別室に連れていかれ、その後人事部なども呼ばれ、先ほどの出来事についての会議が行われ、無事私の解雇が決定した。

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