登山ガイド実務テク! 危機脱出編
この記事は登山好きな貴方がガイド資格を取得し
ガイドとして活躍するまでのストーリーです
今回は実務的な課題を解決できるレポートです
ガイドの活躍で地球環境の保全に貢献する事が
私の願いです
「登山ガイド実務テク! 危機脱出編」
<目次>
1ガイドの危機(ピンチ)とは
2危機脱出とは
3アクシデントを引き起こす人の特徴
4ガイドに必要な心理学の知識
5危機を脱出するステップ
1ガイドの危機(ピンチ)とは
一般登山者における危機(ピンチ)とは
例えば、道迷い・遭難・転倒からの怪我・熱中症
などの体調変化・持病の悪化・滑落・落石・雪崩
・噴火や地震などの自然災害等があります
一方、ガイドの危機(ピンチ)とはツアー参加者
(顧客)が上記の状況となる事です
もちろん自然災害等ではガイドも顧客同様巻き込
まれることも想定されますが、その際はガイド
自身も傷病者となるのでどうにもなりません
ガイドにとって危機(ピンチ)とは顧客が怪我する
事と想定内の災難となります
前回の投稿では安全管理について説明し、その中
で重要なのは「予防」であると説明しました
その「予防」として
例えば危険箇所通過時にロープや器具を使い固定
ロープを貼って通過させたり、尾根等の危険箇所
で滑落を予防するために顧客とガイドをロープで
繋ぐやり方(ショートローピング)などがありま
すが、(素人は真似しないでください) この行動
においてもあくまでも予防であり、危険は伴いま
すが危機ではありません
又、何らかのアクシデントで顧客が怪我した場合
その際もガイドとしては適切な処置(救命処置)
を施すだけななので、ガイドにとっては訓練した
ことを披露するだけです
この行為についても、緊張や緊急を伴いますが
危機ではありません
これらの行為はあくまでも対処法となります
まとめると安全管理は予防法ですが、アクシ
デントによる手当技術は対処法となります
この二つは想定内であり業務となります
2危機脱出とは
ガイドにおける危機脱出とは、どのような行動と
なるのか?
まずは危急時の対応の流れとしては
・アクシデント発生
⇩
・二次災害の防止(他の参加者の安全確保)
⇩
・救出 (自己救出or救助要請)
⇩
・救命処置(手当て・A E Dなど)
⇩
・搬送 (背負い搬送orへり)
という流れとなります
要するに危機を脱出するとは上記の流れをスム
ースに進行出来ている状態の事となります
(一度怪我した方を救うことはできません)
(時を戻すことはできません)
「いち早く上記の流れを遂行するのが脱出です」
ところが軽いアクシデントや怪我においては
処置できますが
例えば
・すぐ後ろを歩いていた顧客が突然滑落し
数100mも谷底へ落ちてしまった
・すぐ横にいた顧客の頭にいきなり落石が落ちて
きた
・先ほどまで元気な顧客が急に倒れ、痙攣して
いる
・尾根で突然雷に打たれ黒焦げになった
など
(どれもガイド仲間が経験したことです」
この際、ガイドはフリーズしてしまいます
フリーズとはパニック症状となり身体や思考が
ストップしてしまうことです
専門家のデータによれば約2割がパニック症状
なると言われています
このような状況になっては困るのです
このレポート(投稿)でお伝えしたいのは
この状態を出来るだけ回避するための知識と行動
となります
もちろん絶対パニックにならないという方法は
ありませんがパニックになるリスクを減らす努力
をしましょうという事になります
3アクシデントを引き起こす人の特徴
私が長年の研修や養成指導で気がついたことをお
知らせします
「一度事故を起こした方は再発している方が多い」
要するに一度事故を起こしたガイドは再度起こす
可能性が高いということです
一度も事故を起こしていない人は長い間ガイド活動
しても事故を起こさない確率が高い
インタビューやその人とのお話しでの気づきです
(あくまでも長内調べです)
その理由を検討すると
・そもそも事故を起こすガイドは危険な箇所(リスク
が高い)場所を案内している
・登山技術が高く、自身満々のガイドである
・無理な行程や悪天候でも実行する意識が強い
・・ここからが本題・・
・視野が狭い (視界が狭い)
(周囲の情報を見渡せない)
・情報量(知識やデータ)が少ない
・情報量が少ないので数分後の予測ができない
・顧客を観察し、その情報から顧客の行動をイメー
ジすることができない
・心配性でない
などがあります
「先天性的なや性格なのかもしれません」
(努力では解決できないかも)
4ガイドに必要な心理学の知識
上記の内容を少しでも解決するために必要な事
を紹介します
それは心理学の知識です
危機回避のための心理学的知識
<ガイドが知っておかなければならないこと21>
参考書籍 人間は皆「自分だけは死なない」と
思っている 宝島社 著 山村武彦
1感情弱化バイアス
不快感情を快感情よりも弱化させる心理的傾向
不安な事は考えないようにし、楽しい事を優先
してしまう
(例)カミナリの兆候があるが、無視して山頂を
目指してしまう
2楽観主義
物事や事態の成り行きを全てよい方向に考えよ
うとする心理的傾向
(例)雲の様子から2時間後には天候が安定する
だろうと考えてしまう
3認知バイアス
経験などから、先入観、思い込みで判断、行動
する心理的傾向
(例)この山域では崩落事故が起きていない、
後30分で雨はやむだろう
4正常性バイアス
先入観にとらわれ、異常事態でも「正常の範囲」
と誤認し、対応をあやまる心理的傾向
(例)転倒し負傷している参加者がいても「背負
搬送することで山頂へ導ける」
5アンカリング
最初にインプットされた数字や情報で全体を判断
したり、行動や判断の事由が限られてしまう心理
的傾向
(例)この人は体重が70kg以下なのでショート
ロープでビレイ出来る
6エキスパートエラー
警察、消防などのプロの防災関係者が危機管理に
おいて犯す判断ミス
(例)地元の専門家が「なだれ」について今日は
だいじょうぶというので実行する
7凍りつき症候群
予期せぬ事象が突発的に発生した時、心と身体
を緩慢動作にしてしまう心理的傾向
(カミナリにうたれた時、次の行動が開始
できない)
8危急時の行動データ
(イギリス人心理学者 ジョン・リーチ博士」
・落ち着いて行動出来る人 ⇒ 約10%
・我を失って泣き叫ぶ人 ⇒ 約10~15%
・ショック状態で何も出来なく成ってしまう人
⇒ 約75~80%
「人の脳はひとつの複雑な情報を処理するのに
8~10秒かかる」
9確証バイアス
先入観に一致する情報だけを受け入れ、さらに
思い込みを強化していく心理的傾向
(例)この場所は増水しないはずだと思い込み
遡上する
10後智恵バイアス
生じた事故について「そうなると思っていた」と
後付をする心理的傾向
(例)この人は滑落すると思っていた
※ほとんどの事故経験ガイドが口にする言葉
11経験の逆機能
過去の経験や事例にとらわれて判断を誤る心理
的傾向
(例)〇〇年の〇〇の事故はこれが原因であり、
これを防ぐと解決出来た
※経験があるガイドほど陥りやすい
12現状維持バイアス
未知・未体験のものを受け入れず、現状を維持
する心理的傾向
(例)今まででこの時期でこのルートでは事故
が起きていない
※旅行会社の手配担当の上司が陥る傾向である
13集団同調性バイアス
集団に依存し、異なる行動を取りにくい心理的
傾向
(例)他のパーティが進んでいるので、私達も
進みましょう
※「ライバル旅行者が登山の決定を決めて
いるので当社も実行します」
と旅行会社は指示を出す
14内集団バイアス
所属する集団の成員は外集団の成員に比べ、
自分のチームは人格や能力が優れている
と評価する心理的傾向
(例)我々のパーティは十分なトレーニングを
積んでいるのでだいじょうぶ
※山岳会に多い
15認知不協和
自分の中に抱えた矛盾のこと
(不快と緊張をもたらす)
それを解決するために自分に都合のよい理論
を構築して認知しようとする心理的傾向
(例)この悪天候時引き返すか・前進するか
迷ってしまう
・天候は回復傾向にあるハズ
・この人の体力だと歩けるハズ
・この前に山小屋に避難できるハズ
16楽観的無防備
自分にとって望ましい行動が起こる確立は高く
望ましくない行動が起こる確立は低いと考えて
しまう心理的傾向
(例)雨天だが山頂では晴れるに違いない
(絶景が見られるに違いない)
※行楽地では「人の危険本能は鈍る」
17情報過多が人を「知った気」にさせる
スマホやインターネットの普及により、情報収
集が可能となりそれを信じてしまう
(例)スマホの情報では降雨量は少ないです
噴火予測も出ていません
※IT知識があるガイドほど陥りやすい
18パニックについて
パニックが起きるのは「情報不足により冷静な
判断を行えない状況」の時である
パニックとは何らかのキッカケで異常な恐怖に
襲われ、突然説明しにくい不合理な判断や
行動を取ることである
パニック障害とは突然起こるはげしい動機や
発汗、ふるえ、息苦しさなどの不快感
このまま死んでしまうのではないかという
強い不安感
(例)自分自身がカミナリにうたれてしまった
場合、参加者が滑落してしまった場合
ガイドはパニック障害を引き起こす可能
性がある
※一般的に一定の割合で存在する
19防衛的乱集行動
自分の安全を守りたいという強い意識にとらわ
れ、他人や家族の事を考える余裕がなくなり、
結果的に周囲に危害を加えてしまう行動
(例)三陸の母・娘
クリフハンガー(ハリウッド映画)
※一般的に一定の割合で存在する
20集団的手抜き
集団で仕事をしている時、無意識的に自分が
全力を出さなくても影響ないだろうと思い込ん
でしまう心理的傾向
(例)グループ分けをして案内する場合、アシス
タントガイドがいる場合
※特にグループ行動時、ガイドはつい手を
抜いてしまう
21数字バイアス
数字マジック(統計データを検証せず具体的な
数字をあげることで信頼を獲得しようとする)
による偏見
(例)この流動分散による荷重は○○kgまで
だいじょうぶなのでこの支点でOKです
※知識があり過ぎる方は注意しましょう
<あなたとお客様を守るための方法>
□十分な分析と観察
□普段の思考と行動のトレーニング
□最悪を予想する
□私だけは「だいじょうぶ」と思い込まない
□冷静な対応とスピード
□先入観は捨てる
□専門家(プロ)を信用するな
□日頃の訓練で行動を習慣化する
□絶えず「まさか?」を想定しておく
(対処法をシュミレーションしておく)
5危機を脱出するステップ
危機を脱出するためのステップを紹介します
<危機を脱出する7つのステップ)
1状況を観察する
「どうなったしまった」さらに最悪は
「◯◯◯となる」
2情報を集める
原因・被害状況・ニュース・健康的な情報・避難
先、救助先の情報
3情報を分析する
「その情報の鮮度と確立度はだいじょうぶか?」
4解決策を洗い出す
(ベストなものと優先順位をつける)
「最も良いと判断する事は何か}
5実行する(決断する)(行動の説明する)
スピードある行動を開始する
6失敗した場合は理由+解決策を提示する
まずはあやまると同時に解決策を提示する
7誰かを見方にする
友好関係を構築し、助けてもらう
<ピンチ時のアクションプラン>
1まずは落ち着く2秒(深呼吸)
パニック障害を予防
事実を把握する
2 8秒安む(その間すること)
・情報を集める
・最善策を考える
・するべき事に優先順位をつける
3 スピーディに実行する
4 助けを求めることができる場合は助けを求める
5 ベストを尽くす
やはりガイドとして最も危機管理に必要な能力は
「優れたコミュニケーション力」と
「強いメンタル力」なる
・観察
・信頼
・伝達
☆危機は突然やってくる
☆危機はあなただけにやってくる
☆危機は場所を選ばず引き起こる
事実
「ガイドは参加者の命を救えません」
義務
「参加者の安全を確保するためにベストを尽くす」
データ
「年間◯◯名以上のガイドがガイド業務中に亡く
なっている」
「あなたはこれでもガイドをめざしますか?」
「最後までお読みいただきありがとうございます」
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