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杯:森鴎外記念館
「わたくしの杯は大きくはございません。それでもわたくしはわたくしの杯で戴きます」
森鴎外(もり・おうがい、1862年~1922年)…小説家、陸軍軍医。本名は、森林太郎(もり・りんたろう)。
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画像は、東京都文京区にある森鴎外記念館。森鴎外の旧居・観潮楼の跡地でもある場所。
ちなみに冒頭に引用した「杯」の読み方は「さかずき」。ほんのちょっとした掌編ではあるが、森鴎外作品の中でも特にお気に入りの作品かもしれない。いくつか作品を読み漁っていて、この「杯」に出合ってから森鴎外について、より深く知りたいと思ったように思う。
作品はもちろんのこと。森鴎外自身の人生も面白い。やはり御典医、つまり医者の家系であること。その家系の長男として英才教育を受ける。森鴎外自身にも素晴らしい才能があったのだろう。周囲の期待にバッチリと応える。11歳で現在の東京大学医学部の試験に合格して入学するという神童として逸話もある。入学年齢制限は14歳~17歳で、年齢を偽って試験に臨んでいるのも凄い。
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ちなみに、親戚には西洋哲学者の西周(にし・あまね、1829年~1897年)もいる。また同じく東京大学医学部で交流のあった解剖学者・小金井良精(こがねい・よしき、1859年~1944年)は、森鴎外の妹・森喜美子(もり・きみこ、1871年~1956年)と結婚。その娘・せい、と実業家・星一(ほし・はじめ、1873年~1951年)が結婚。そして生まれたのが、SF作家・星新一(ほし・しんいち、1926年~1997年)。これを知った時にはかなり驚いた。
まあ、つまり森鴎外と星新一のつながりを言いたかっただけ。ちなみに星新一のノンフィクション作品である『祖父・小金井良精の記』では森鴎外にも触れられている。さまざまな面で非常にオススメの作品。
閑話休題。
東京大学医学部に入学した森鴎外は、それなりに苦労したようだ。というのも能力があったとしても同級生は半周りくらい年上。しかも十代の時の年齢差はかなり大きい。年齢差がなかったとしても、学業における競争はかなり熾烈なものだったようだ。
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