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既読スルーは悪いこと? 人間関係の不安を楽にする読書術

既読スルーは悪いこと?

金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』が面白い。昭和60年代から現代にタイムスリップしてきた阿部サダヲ演じる市郎が、現代では言えないような発言を連発していくのがある意味痛快なドラマ。わたしも好きで観ている。そんなTHE昭和のお父さん市郎も、スマホでラインをするようになると一気に夢中になる。

市郎は既読無視が気になり始め、どんどんみんなに問い詰めていってしまう回があった。市郎の性格上、既読無視が耐えられなくなったのは以外だった。しかし、そうなってしまう気持ちは当然わかる。

わたしも既読無視と感じる事があると寂しい。
一度既読がついて連絡が来なくなると、次の連絡がくるまでなにか落ち着かない。なぜ連絡がすく来ないのだろうか、なにか仕事や用事で忙しいのか、後回しになったのか、色々考えてしまったことはある。きっと、会話であればわたしの発言を聴けば、なんらかしらのリアクションがあるのに、それがないから不安になるのだ。

既読「無視」は本当に無視なのだろうか?

会話のニュアンスが強いとリアクションが遅いと不安になる。
ラインはチャットなのでテキストとしての会話のニュアンスが強く、既読がついて返信がないとなんか無視されたようなきもちになる。
これが、例えばこれがEメールであれば、手紙のニュアンスがつよくなり、多少連絡が遅くてもそんなに気にならないのではないだろうか。

もっというと確かに既読無視は悲しい気持ちになるときはある。それは間違いない事実だ。だけれども、相手は本当に無視したのだろうか?
意外とこの辺のことをちゃんと考えられていないことが多い。私は、こういう視点で考えるだけで少し俯瞰して観ることができるようになった。

過去の私は、視野が狭く囚われてしまうことが多かった。
一度悲しい気持ちに陥ってしまうと、なかなか抜け出せなくて、結構な期間をもんもんと過ごした経験がある。かなり苦しくなって、いろいろとどうしたらいいかメンタル系の本を読んでみたりしたこともある。結果は出るときもあるが、感情に直接アプローチをするだけでは、解決できないこともあった。

人間関係の不安を減らしていく簡単な方法

不安に陥ってしまうのは、これまでの経験から得た考え・思考パターンに依存することが多かったからだ。
しかし、あるきっかけ自分の枠を超えた本に出会い新しい考え方を知ることができた。新しい考えが手に入ると、不安や寂しさにとらわれることが少なくなる。感情は、ある思考パターンをもとに作られることが多いからだ。
簡単にいうとこんな感じだ。

出来事が起きる ⇒ 頭の中で思考する ⇒ 感情がわく

この真ん中の「頭の中で思考する」が自分の感情に大きく影響を与えている。
たとえば、既読無視をされた⇒私の優先順位をさげているんだ⇒悲しい気持ちになる。といった具合だ。なので、真ん中の思考が感情に影響している。

この思考はこれまでの経験から自動で構成されている。しかし、ここに新しい知識が概念が入れば、また新しい感情の手助けができる体験をしてきた。

無知なときは、不安や寂しさにとらわれがちだった。自分の範囲の中の知識しかなかったからだ。自分の枠を超えた知識を取り入れながら、自分の尺度を持とうとしていくことで楽になっていく。

そのために新しい概念を取り入れることが一つの解決になる。
ここで私の助けになった著書を紹介していきたい。

人間関係に関する本を一つの記事にしてみた

ここで紹介する本に共通して言えるのは、社会的な観念にとらわれていないということだ。
例えば、上記で私の書いた不安な気持ちだったり、感情面についても丁寧に向き合っている。実際に不安になってしまうと、そんなことを考える余裕は無い。なので、落ち着いた時にこういった本を読んで、知識をつけておく事は、今後の対策に大いに役立つ。

悩みが発生することはしょうがないことだ。それを解決するのも自分1人でやる必要は無い。次に紹介する本の何か1つでも自分の中でヒットするものがあれば、今後の人生において役立つと思う。

人間関係ってどういう関係?

この本が素晴らしいなと思うのは、社会的な通念に対して1度1歩引いて俯瞰して物事を見ようとしているところだ。例えば夫婦関係、恋人関係、家族、兄弟、これらを並べてみても、それぞれがいろんなイメージを持っていると思う。例えば恋人関係だったら普段頻繁に連絡を取り合うべきとか、夫婦関係だったらどうとか、意外と知らず知らずのうちに入っていた固定観念が自分の中にある。だけども、この著書はこの既存の概念からスタートせずに、新しい概念を作り出し、そこから人間関係を考え直している。ここに新しさがある。
詳しくはぜひ本文を読んで欲しいが、私が心惹かれた部分を紹介したい。

言うまでもなく感情は、悩みや対立も生む一方、身近な関係を作る大きな要因になります。っていうか、そもそも感情や気持ちがあるからこそ、他の人との関係を作ろうとも思うわけです。だけどどんなに近づいても、相手の感情、気持ちを外から見ることはできません。感情や気持ちはあくまで個人一人ひとりのものです。
ここからとても大事なことが分かります。ここで考えている身近な関係というのは、少なくとも感情だけで成り立つものではないということです。
身近な関係について考えるとき、例えば恋人や友人との関係で大事なのは、感情、気持ちと思う人はかなりいます。そりゃそうでしょう。恋人に対する愛する気持ち、愛情があるからこそ、恋愛も成り立つ、友達との間でだったら、友情があるはず。愛情にしろ友情にしろ、「情」っていうくらいなんだから、やっぱり感情の一種って感じがする・・・・・・。
(中略)
だけど、そういう感情だけで身近な関係が捉えられるかと言えば、必ずしもそうではないんじゃないかと思うのです。というのも、「身近な関係は感情があれば成り立つ」と考えると、積極的に困ったことになるからなのです。
感情だけではなぜダメか
注意してくださいね。感情がダメっていうのではないし、相手に対する気持ち、思いを持つのがいけないと言っているのではないのです。当然ながら、相手への気持ちは大事。ただ、それがいくら大事でも、感情、気持ちだけで身近な関係が成り立つとは言えない、というだけなのです。

平尾 昌宏著、人間関係ってどういう関係?、筑摩書房、2024、P58

私はここを読んだ時、なるほどととても感動した。実際に解決したいのは、人間関係でうまくいかなくなったときの感情だと思う。この文章を読んで、感情の外側を感じることができた。

冷静に考えると、上記にある通り、感情だけではうまくいかない事は多そうだ。だけども本文にもあったが、これまでの通念を念頭に考えると、感情が全てとなってしまう。きっと私は本を読まなければ、こうして切りから切り離して考える事はできなかったんだろう。そういったことからも自分の外側にある知識を得るということは、非常に価値のあることだと思う。

そして、次に紹介する本にもつながってくるが、この感情だけではないということは、逃げ関係を考える上でとても重要な考え方だと思う。これについて説明していきたい。

「人それぞれ」がさみしい

相手によって自分の意見を言うことを控える時がある。人間関係を円滑にしたいと思うからだ。
いつからそうなったかは覚えていないが、たぶん自然とそうするようになったのだろう。円滑に進むと言う理由もあるし、嫌われたくないからという理由もある。
こちらの本では「人それぞれ」と言うふうに表現している。それらのパターンをいろいろ見ていき、最後にこの人それぞれの課題を見ていくような本だ。

次の文章では、なぜ人それぞれが生まれるのかについて、わかりやすく解説してくれている。

誰と付き合うか、あるいは、付き合わないかは、個々人の判断にゆだねられています。俗っぽく言えば、私たちは、(嫌な)人と無理に付き合わなくてもよい気楽さを手に入れたのです。
今や、人と人を結びつける材料を、生活維持の必要性に見出すことは難しくなりました。人と人を結びつける接着剤は、着実に弱くなっているのです。
(中略)
では、このような社会で、つながりを維持するにはどうすればよいのでしょうか。生活維持の必要性という、人と人を強固に結びつけてきた接着剤は弱まっています。そうであるならば、私たちは、目の前の関係をつなぎ止める接着剤を新たに用意しなければなりません。そこで私たちは、弱まってきた関係をつなぎ止める新たな補強剤として、つながりに大量の「感情」を注ぎ込むようになりました。
「人それぞれ」と解釈することで対立を回避
この他介な状況に対処するにあたって重宝されてきたのが、「人それぞれ」を前提としたコミュニケーションです。私たちは、たとえ相手の見解が、自身の見解と異なっていたとしても、「人それぞれ」と解釈することで、対立を回避することができます。あるいは、相手の行動が自身にとって理解できないものであっても、「人それぞれ」とすることで、問題化することを避けられます。

石田 光規著、「人それぞれ」がさみしい、筑摩書房、P38

私たちはつながりが欲しい。少なくとも、私はつながりが欲しいのだなと感じた。
それを失いたくないから、自然と「人それぞれ」の対応をとっている。こう読むと当たり前の話だが、自分が人それぞれの態度をとっていること、なぜとっているかということ、それ自体を理解するだけでも大きな進歩だ。

自分が意識せずに人それぞれの態度をとっていると知らぬうちにストレスは溜まっている。または感情が大きく動くことが多い。しかし、自分が何をしているのかを知る事は知らなかったことに比べて大きく自分の助けになる。

もちろん、「人それぞれ」を理解するだけではどうしていいかがわからないと思う。この本を読んでもらってもわかると思うが、次の書籍で少しヒントになるようなことを書けたらいいなと思っている。

友だち幻想

これは若い頃読めたらよかったなと思いながら読んでいた。これまで紹介した本と同じように、陥りやすい悩みに対して1歩俯瞰した視点を与えてくれる。私にとってとても大きな影響与えてくれたのは次の文章だ。

「人とつながりたい私」と、でも「傷つくのはいやだという私」という一見すると矛盾した自我のあり方と、自分自身でどう折り合っていけばいいのでしょうか。やはり基本的には、この人は自分にとって「頼できる他者」だ、と思える人を見つけるということが絶対必要になると思います。
しかしその場合、情頼できる「私と同じ人」を探すというよりは、頼できる「他者」を見つけるという感覚が大事です。
どういうことかというと、情頼はできるかもしれないけれど、他者なのだから、決して自分のことを丸ごとすべで受け入れてくれるわけではないということを、しっかり理解しておこうということなのです。
「友だち幻想」
さて、この点をもう一度確認しておきましょう。「自分のことを百パーセント丸ごと受け入れてくれる人がこの世の中のどこかにいて、いつかきっと出会えるはずだ」という考えは、はっきり言って幻想です。
「自分というものをすべて受け入れてくれる友だち」というのは幻想なんだという、どこか醒めた意識は必要です。でもそれは他者に対して不感を持つことと決してイコールではない

菅野 仁著、友だち幻想 、筑摩書房、P125

特徴的なのは、100%理解してくれる他者はいないと明言してることだ。わかってはいるものの以外と明言された事は無い。世の中によくあるのは、お互いのことが分かり合える友人、知人、恋人、家族、そういった言葉が溢れ返ってるからだ。話せばわかり合えるということが、とても大事なことで、それをみんな願っている風潮がある。

もうこれは、みんな結構勘違いをしているのではないかと思っている。

次の最後の本で説明するが、実際には他人を理解できない。しかし、相手を理解しようという姿勢は大切なのだ。

切り分けて話さなければいけないので、一旦相手ではなく自分のことに関してだけ考える。
自分のことを中心に考えると、「自分のことを100%理解してもらえる相手はいない」と考える事は重要だ。そこから理解しないとスタートでずれてしまう。大切なのは全て理解してくれないけれども、どうやって折り合いをつけていけるかと言う気持ちを持つことだ。

開き直ったような考え方だが、この開き直りが人間関係の解決に重要だと思う。

100分で名著 ローティ 「偶然性・アイロニー・連帯」

最後に少し難しい本になるが紹介したい。ぜひこの本は買って全部読んでほしいと思うが、お伝えしたい事は下の部分が近い。
実践することは難しいが理想としてとても勉強になる。

ローティは初期の著作「プラグマティズムの帰結』(一九八二年)において、「探究に課せられた唯一の制約は、会話への抑束だけである」(引用は筆者による訳)と述べています。哲学者が行うような探究の議論に何か制約があるとすれば、それは真理を目指すことではなく、むしろ会話への拘束だというのです。つまり、探究の議論とは、あくまで人類が織りなしているさまざまな会話のひとつに過ぎない。だからより重要なのは会話なのだ。哲学者は会話をいつか終わらせようとするのではなく、会話をこそ守るべきなのだ。
誰かを黙らせることを目指さない。「われわれ」を少しずつ拡張していくことによって、会話を守る。ローティの主張は一貫しています。そしてここに、「偶然性」「アイロニー」「連帯」がすべてつながってくるのです。

朱 喜哲著、ローティ『偶然性・アイロニー・連帯』 2024年2月 (NHKテキスト)、NHK出版、P105

大切なのは会話当たり前の言葉だ。もしかしたら理解が違うかもしれないが、この会話という言葉についてもう少し詳しく説明したい。ここで言う会話とは、相手を理解しようとする姿勢を持ちつつ、相手は理解できないということを肝に銘じることだと私は思っている。

まず相手を理解しようとする姿勢を持つ事はよく言われていることだ。
けれども、自分の世界の中で相手を理解してもそれは理解したことにはならない。ということだと思う。何か友人から相談されたときに、「あーこういうことね」とぴんとくることがあると思うが、そこにこそ注意が必要なのではないかと思う。そのピンときた感覚は「自分の人生の中で起きた経験からのひらめき」であって、「その友人がたどった人生」とは違うのだ。

ここで重要になるのが「相手のことを理解できない」と思っておくことだ。そうすると簡単には「あーわかった」という言葉が出てこないはずだ。相手の話を注意深く聞き、相手が感じたことを丁寧にたどることが、本当にその人が感じたことを追求できるのではないかと思う。

ここで言っている。会話とはそういう会話なのではないかと思っている。

まとめ

人間関係の悩みはとてもつらい。
私も悩むと眠れなくなる時もあったりする。そうなってしまうとなかなか受け出せない。そういう時は一旦その気持ちが通り過ぎるのを待って、気持ちが落ち着いた時に俯瞰しても見れるようになっていきたいと思っている。

今回紹介した本の中で共通しているのは、人間関係とひとくちで言っても多くの誤解も含んでいると言うことだ。例えば、感情はどのように生まれてくるのか、自分が思っている家族、夫婦のイメージは本当に正しいのか、そういったことに疑問を投げかけてくれる。

何より大事なのは、このように疑問を感じる、落ち着いて考えると言うことだ。頭の中に漠然とある概念を固定して悩んでしまうのはとても損だ。

これらの本をきっかけに、もう1歩ひいた視点が持てるようになってくれたら嬉しい。

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