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ニルマル・プルジャ:不可能を可能にした登山家 映画 Netflix

 ラインホルト・メスナーが8000m以上の14座の山々を登るのに費やした歳月は17年。1987年には、ポーランドの登山家イェジ・ククチカが、7年11ヵ月、その後、金昌浩が7年10ヵ月での14座無酸素登頂を果たし、7年10ヵ月が14座登頂の最短記録であった。

 2019年10月。これまでの記録を大幅に更新した登山家が、彗星の如く現れた。その、ネパールの登山家、ニルマル・プルジャはなんと、これまでの記録を10倍以上短縮する、6ヵ月と6日で成し遂げたのだ。この作品はその、ドキュメンタリー映画だ。

 この記録を打ち立れた秘密は、彼の経歴を知れば納得いくものであり、ぜひ本作をご覧になる中で知っていただきたい。さらには、彼自身が言うように、ネパール人である彼がこの記録を打ち立てたことこそが、大いなる一石を投じたこともまた、事実である。彼がいうように、この記録を欧米人が成し遂げていれば、この前人未踏の偉業を達成したニュースは、100倍世界のメディアを席巻したであろう。であるからこそ、この映画が表出した価値はエベレストのように高い。余韻に浸りながら、エドワードサイードの名著オリエンタリズムを思い出した。われわれ~東洋はいつまで、西洋の鏡を演じ続けるつもりなのであろうか。
名画『メルー』や『フリーソロ』に感動した方々にはぜひ、見ていただきたい。山々は同じように美しいが、この問題提起が、見手に深い示唆と余韻を残す。

 この原題『14Peaks Nothing is impossible』Netflixにより、2021年11月29日に公開された。

 

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