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信用創造⑦2022年の大学入試共通テストで出題された信用創造


政治・経済、現代社会で信用創造の問題が出た!


今回は2022年の共通テストで出題された信用創造やお金に関する問題をご紹介します。政治経済と現代社会で考え方の異なる信用創造の問題が出題されており、話題になりました。

政治・経済 第2問 問5(正しい信用創造)


この問題は正しい貨幣観(貨幣とはどのようなものかという考え方)に基づいて出題された問題でした。信用創造の前と後のバランスシートと、以下の
メモを読ませて、正しい選択肢を選ばせるという問題でした。問題のリンクを貼り付けておきます。

https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00041435.pdf&n=2022_ow_10_seijikeizai.pdf


選択肢④の「市中銀行は『新規の預金』を創り出すことによって個人や一般企業に貸し出すので、銀行貸出は市中銀行の資産と負債を増加させる」
選べば正解です。

この問題は学校の教科書で説明されている従来の信用創造とは全く違う、
正しい内容の問題でした(学校の教科書が間違っています)。学校の先生や学者の人ほど解けない問題だと思います。預かったお金を貸すのではなく、新たに預金を生み出すということを理解できているかが重要です。


現代社会第3問の問3(誤った信用創造の問題)

https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00041433.pdf&n=2022_ow_08_gendaishakai.pdf


この問題は現在の高校の教科書で説明されている通りの信用創造に基づいた問題です。つまり、間違った信用創造です。
銀行は預金者から預金を預けてもらい、そのうちの一部を日銀に預けて残りを現金で貸し出す、というモデルです。実際は銀行はそんなことをしていません。回答は①で、ア30 イ490 ウ1,960 となります。

高校の政経と現代社会の教科書や、大学の経済学の教科書は今でもこの『又貸し説』による説明が書かれています。公務員試験などもこの考え方に基づいた問題が出ます。

 未だにこれが正しいと信じている人がいるんですが、そういう人の特徴として、この又貸し説を否定するとブチ切れる、というのがあります(笑)。このモデルがよっぽど好きなんだと思われます。

間違っている主な理由を簡潔に挙げると、
①    最初にお金を預けるところからスタートするのがおかしいです。D社がお金を持つためには最初に預金口座から引き出す必要があります。
②    この図を素直にみると銀行預金を日銀に預けていると読めますが、預金自体を日銀に預けることはできません。批判の多いモデルなので、現金という言葉を使わないようにしているようにも見受けられます。
③    融資した相手がお金を使わずにいるという前提がおかしいです。お金を貸すのは何か使う目的があるからです。                                                                                                                                                                                                                  
 
 

今日のまとめ


今回は令和4年の大学入試共通テストに出題された信用創造に関する問題について解説しました。正しい信用創造の問題が出題されたのはいいのですが、政治経済と現代社会で全く考え方の異なる問題を出題することに疑問を感じなかったのでしょうか?

お金に関する誤解を解き、正しい貨幣観を持つことはかなり難しいことです。今年の共通テストをきっかけに高校で正しい信用創造を教えるようになることを期待します。

今回は以上になります。

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