クラファン挑戦中!書籍『学び3.0』の一部を無料公開します
こんにちは。地域を旅する大学 さとのば大学note編集部です。
10月11日(水)に公開した記事で、『学び3.0』の出版プロジェクトについての想いを紹介しました(前回の記事はこちら)。
そして今月に入り、無事にキャンプファイヤーにてクラウドファンディングを開始いたしました。
ありがたいことに、現在50人以上の方がプロジェクトに賛同いただき、ご支援の輪が広がってきています。ともに新たな学びを創っていく仲間が増えていくことを、とても嬉しく思っています。
今回の記事では、本の内容をお伝えすることで、共感の輪がもう一回り大きくなることを期待して現在制作中の『学び3.0』の一部を無料公開します。
公開するパートは、ズバリ「なぜ、さとのば大学的な学びが求められるのか?」をテーマにした第6章より一部を抜粋しました。さとのば大学的な学び、つまり学び3.0がどうして世の中に必要なのか。ぜひお読みいただけると嬉しいです。
自分の中にある多様性を、コミュニティに応じて使い分ける
皆さんもそうだと思いますが、私の中には、子どもっぽい自分もいれば、内気な自分、仕事で成果をバリバリ出したいという自分、ちょっとこじらせている自分もいます。一人の中に多様な視点や役割があるという考えのことを「イントラパーソナル・ダイバーシティ」といいますが、多様性のある「私」の人格全てを、一つのコミュニティのなかでさらすのは難しい。
でも、複数のコミュニティでならどうでしょう。会社では成果をバリバリ出したい自分を、家族の前では子どもっぽい自分を、友人の前ではちょっとこじらせている自分を、というように、複数のコミュニティで、さまざまな自分を表現できたとしたら。
ここで見せる顔と、あそこで見せる顔が違うっていうのは案外心地がよくて、一つの自分に囚われることがないため、自分を偽ることなく、ラクに過ごせたりしないでしょうか。
ポイントは、同時に複数のコミュニティに所属していること。今この瞬間に、例えばバスケットサークルに所属し、起業家サークルにも所属し、オタク的な趣味のサークルにも所属しているという状態をつくることです。
1本足と2本足と3本足とでは意味が違ってくると思っていて、1本足は、従属的になりやすい。関係性が1つしかないと、その関係に従うか、反発するかしか方法がなくなります。一方で2本足は、「どちらのほうが心地いいか、優れているか」と、比較的になりやすい。
ところが、3本足以上になると、いろいろものがあるため、自由意思で選択がしやすくなります。
特に今はICTの普及で、ワンクリックでさまざまなコミュニティを行き来することが可能になりました。オンライン会議のミーティングURLをクリックするだけで、シームレスに所属するコミュニティを変えることができます。
オンライン化が進むことで、働き方や暮らし方だけではなく、自分の表現の仕方もより自由になっていくと思います。
さとのば大学においても、地域というリアルなコミュニティと、オンライン講義を通じたコミュニティなどを使い分けながら、自分のなかの多様性をうまく表現してほしいと思っています。
プロジェクト学習は、社会実験の一つ手前にある練習台
さとのば大学では、現実の課題解決を目指したプロジェクト学習を重視しています。
私自身、学生生活を振り返ると、大教室で学ぶ講義は好きではありませんでした。経営学にしても、実社会で何に使えるかよくわからないことには、あまり頭に入ってはきません。
けれど、社会に出て、会社をつくったときは、そうはいきません。自分で決算書類を作成しなくてはならない、となったら必死で学ぶじゃないですか。
そうやって、学ぶとやってみるをセットで体験的に学んだ方が圧倒的に学びの質は高まるし、吸収するスピードも速い。そして、できることが一つずつ増えていくことを楽しみながら学ぶこともできる。
それが、プロジェクト学習を柱に据えている、一つ目の理由です。
もう一つは、「これからの社会で必要とされる力って何だろう」という問いに対する答えがここにあるから。
コロナが典型ですが、世間的な評価が高く、安定的と言われてきた企業や業界が、外部環境の変化によって、一瞬にして価値がなくなるさまを、近年、私たちは、さまざまな場面で目撃してきました。誰かに雇用されるためだけの知識やスキルは、何の役にも立たなくなっていくでしょう。
一方、「仲間とともに社会を変える」とか、「未来を自分たちで創造する」といった、変化に対応したり、それをコントロールするための能力は、ますます求められていくはずです。
でも、いきなり社会を変えると言っても難しい。そのためには、まず、小さく実験をしないといけません。
例えば、ベーシックインカムにしても、月5万で行うのと、15万円で行うのと、30万円で行うのとでは、効果は変わってくるはずです。実際にやってみた結果、「これではダメなんだ」「こうすると良かった」など、わかってくることがたくさんある。そういう実証実験を経て初めて、社会システムとして実装されるわけです。
私たちがしているプロジェクト学習は、そうした社会実験の一つか二つ手前くらいのイメージなんです。それでも、例えば3人のチームでプロジェクトを回すだけでも実は難しいことに気づくはず。
例えば、住んでいるシェアハウスを自分たちで運用するというプロジェクトだけでも、いろいろなトラブルが起こるわけですから。しかし、そうしたことが体感できることだけでも収穫です。住人同士でミーティングをするだけでも、ガバナンスの練習になるというもの。
そうした実証実験の練習が、絶妙なサイズ感でできるのが地域社会だと思います。
「何も起きないこと」のリスクと責任
有機・無農薬野菜の流通を手掛けている企業の方が嘆いていました。
無農薬野菜の市場に買い物に来て、「この野菜に、虫はついていないですよね」と聞いてくる方が、たまにいるのだとか。無農薬で栽培した野菜に、虫がついているのは当たり前。むしろ、虫が食べるほど安全で、美味しい証です。
けれど、「虫がついている=食品衛生上NG」という安全保障をしてほしい消費者からすると、無農薬といえども、虫がついている野菜を販売するのは無責任だというわけです。
今、同じことが学校教育の世界で起きているような気がしています。
本来、社会で生きることって、とても難しく、リスキーなこと。だからこそ
「その困難な社会を生き抜くための力を学校にいるうちにつけましょう。そのためには、失敗も大いに経験しましょう。ときには、学校外の人とも協力して、多少のリスクは伴うかもしれませんが、リアルな学びが大切ですよ。でないと、これからの正解がないと言われる社会では生きていけませんから」
というのが、今の教育改革の流れであるのに、一部の保護者から、
「何かあったらどうするんだ」
「それをすることで志望校に合格できるのか」
と、リスクヘッジや品質保証を求められてしまう。
多数派ではないのかもしれませんが、そうした大きな声を前に身動きがとれずにいるというのが、今の学校の一面ではないでしょうか。
そうした声は時折り、さとのば大学にも届くのですが、私たちは、「何かあったらどうするんだ」という批判に対して、こう答えたい。
「逆に、何も起きないまま卒業したらどうするんですか。これから不安定な社会に出ていくのに、失敗も経験させずに送り出していいんですか。例えば大手企業に就職できたとして、それ自体は喜ばしいけれど、仮にその会社が倒産し、その子の生き抜く力が未熟なまま、社会に放り出されたらいったいどうするのでしょう。それこそ無責任では」
私たちはそういう思いで学校をつくっているため、本人が行うプロジェクトを、失敗しないようにサポートすることはありません。
むしろチャレンジの結果として起こった失敗も祝福し、振り返って「次に生かすには」という対話を大切にしています。
成功も失敗も同じようにみんなで共有することで、自分の経験だけでなく他の人の経験からも学ぶことができ、また「自分ならどうする?」をみんなで考えることで、異なる考え方や対処方法にも気づき、複眼的思考力が身についていくと考えています。
ありがたいことに、日々支援の輪が大きくなっています。ぜひ多くの仲間とともに、新しい学びの在り方を探究していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします!
正解のない時代を生きる若者を育てていくために、どういった視点が求められるのか。
さとのば大学の事例はもちろん、日本各地での新しい挑戦についても取材しまとめたこの一冊は、教育や人材育成に携わる方々、現代の学校システムや学びの在り方に違和感を持っている保護者のみなさまにとっても価値ある内容です。
この出版プロジェクトを通じて新しい学びの創り手、そして学び手の輪が広がっていくことを目指していきたいと思います。
どうぞご支援の程、よろしくお願いします!
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