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SNSの「中の人」をもっと厚遇しよう!


「自由すぎる公式SNS『中の人』が明かす企業ファンのつくり方」
という長い題名の本に出演させていただいた。

本に出演、って変だけど、5ページ分のインタビューと、巻末の対談に出させていただいたから、なんとなく「出演」ってニュアンス。

あ、帯も書いた。

「SNSとは拡散ではなく、ファンの愛着づくりです!」

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この本のメイン・コンテンツは、6人の人気「中の人」へのインタビュー。

自分で出といてなんだけど、いま企業SNSを語るなら必読の本だろうと思う。

SNS上での投稿のコツみたいな表面的な話だけではもちろんなく、ファンとどう誠実につきあうか、長くつながりを保っていくためにはどうすればいいか、企業内ではどう立ち回るといいか、など、各「中の人」たちがかなり赤裸々にしゃべっているので、いまSNSを担当している人たちにとって、それはそれは参考になると思う。

そして、「ほら、成功している『中の人』はこんな風にやっています!」みたいに、SNSに理解がない上司に見せたりするのにもとてもいいと思う。

日経トレンディ/日経クロストレンドが編著者であるのも、上司に効くと思うしねw


6人の「中の人」とは、本の登場順で言うと、

セガ(@SEGA_OFFICIAL
東急ハンズ(@TokyuHands
キングジム
@kingjim
井村屋
@IMURAYA_DM
タカラトミー
@takaratomytoys
タニタ
@TANITAofficial

こんな感じ。
それぞれの企業SNSアカウント担当者。

ボクにとっては、「中の人」というと、NHK_PRの「中の人」だった浅生鴨さんとか、加ト吉(2010年よりテーブルマークに社名変更)の「中の人」だった末広栄二さんとかの先駆者が頭に浮かぶし、本質は彼らの本ですでに語られている。

ただ、出版されて約10年経っているし、いま現在のSNS運営はより「ファンづくり」に寄っているので、彼らの本の優れたアップデート版がこの「自由すぎる公式SNS『中の人』が明かす企業ファンのつくり方」だと言ってもいいと思う。


あ、それと、大人気アカウントであり、いまの「中の人」界では圧倒的な存在感であるシャープさん(@SHARP_JPが、この本の加わっていない。

なにやら都合が合わなかったようだけど、彼のSNS上でのスタンスや考え方も、この本と合わせて是非知っていただきたいと思う。



公式アカウントが注目されるようになって12年くらいだろうか。

「SNSを上手に活用したい」という声は年々高まり、企業方面から相談を受けることも多いんだけど、うまくいかない企業のほとんどは、「SNSで拡散!」「SNSで売る!」みたいな発想から未だに抜けられていないことが多い。

マス広告やPRでの「認知させる」「周知させる」ためのお作法をそのままSNSに持ち込んで、ぐじゃぐじゃになってしまっている。


あらためて言うまでもなく、SNSは基本的に個人が友人知人とがつながっている「場」だ。

もちろん、好きなタレントや趣味の合う人をフォローするなどの特異な広がりはあるし、ツールによって少しずつ違っているけど、基本的には「友人たちとのおしゃべりが顕在化されたプラットフォーム」である。

企業がそれを利用して宣伝するということは、つまりは仲の良い人とお茶を飲んでいろいろ情報交換している「場」に、いきなりセールスの人が割り込んでくるようなもの。

拡散を起こそう、商品をアピールしようというような目的での投稿は、そういう場では「うざい」としか思われない。

その「感覚」が実感として掴めていない企業は、どうやってもSNSを効果的に活用できないだろう。


そういう中、今回の6人の企業アカウントは、「基本的に私たちはお邪魔をしている」というスタンスを十二分に理解したうえでSNSに向き合っている。

そのうえで、うざくなく企業からのメッセージを送り、飽きられないような距離感で日々ファンたちとつきあい、目立ちすぎない程度に話題をつくり、日々のちょっとした愛着を地道に作っていっている。

ファン個人個人をケアしつつ、何万人を相手にする。
ポジショントークを使わずに最大公約数とコミュニケーションする。
その日の世の中の空気に乗りつつ、リアクション芸も使いこなす。
誠実を心掛けつつ、時には隙を見せてハメをはずす。
公と私を上手に混同させる。
でも、基本「個」であることを忘れない。

・・・ちょっと全部は語れないけど、このような「とても難易度が高いこと」を彼らはさりげなくこなしているのだ。

これはわりと希有なことだ。
最初はたまたま担当になっただけだったのだろうけど、試行錯誤の末に勘所を掴み、日々自分をアップデートしていかないとそこには到達しない。

しかも、そうやってある高みに到達した「中の人」は、すでにある意味「企業の顔」になっている。

企業の顔として24時間重いものを背負い、日々世間に向き合っている。容易に炎上する時代に、毎分毎秒胃が痛い思いをしている。

それは、社内外で重責を担っている役員クラス並みの重圧だろう。
しかも役員と違って取っ替え可能ではない。
なぜならある種の特殊な才能だからだ。

いや、マジで、ヘッドハンティングで他社に行っちゃってから泣いても遅いと思うよ。

企業は、下手なタレントに何百万、何千万払うくらいだったら、こういう「探してもなかなか見つからない希有な人たち」をもっともっと厚遇すべきだ。

ボクはここ10年くらい、そう、2012年の本『明日のコミュニケーション』くらいから、ずぅっとそう訴えてきた。

全然状況かわらないけどねw

理由は企業がまだまだ昭和の年功序列だからだろう。
グローバル企業なら、素直にその才を認め、かなりの給料で厚遇するはずだ。



彼ら「中の人」は、「ファンベース」の視点で見ても、極めて重要な生活者接点だ。

ファンベースとは、企業やブランド、商品の価値を熱狂的に支持してくれる「ファン」をベースにして、中長期的に売り上げや価値を高めていく考え方。

「2割のファンが売り上げの8割を支える」というパレートの法則がほとんどの企業で当てはまることがわかってきて、いよいよファンの大切さがクローズアップされてきた。

いままでは「新規顧客を獲得して売上を伸ばす」というアプローチが定石だった。

でも、日本は人口急減時代に突入し、超高齢化も加速していく。
つまり物理的に顧客の数が減っていく。
そんな中での新規顧客の奪い合はまさに修羅の道だし、情報過多の時代で新規獲得キャンペーンなど一瞬で“消費”され、単なる一時しのぎのカンフル剤にしかならない。

それよりも、既に愛してくれ、売上を支えてくれているファンに向き合って、支持基盤を固めるほうがずっと大切だし、優先順位も高くなる。

さらに、ファンを大切にし喜ばすことは、売上の8割を固めるだけでなく、ファンからのクチコミも喚起する。

ファンは、その満足度が上がれば上がるほど、まわりの家族や友人・知人におすすめし、新たな顧客を連れてきてくれる存在だ。

そう、ファンの満足度が上がると、新規顧客が増えるのだ。

新型コロナ禍による景気の悪化がどのくらいな規模に達するかまだ見通せない部分はあるけれど、でも、少なくともいままでみたいな成長曲線は描けない。

そんな中、今後ますますファンベースの視点が重要になるだろう。


で。

そのファンベースにおいて、SNSの「中の人」が果たす役割は、またとても大きい。

ファンは、機能価値だけでなく情緒価値、つまり「共感」「愛着」「信頼」みたいな感情で好きになるので、それらを高めていくことが重要なのだけど、特に今回の6人の「中の人」の取り組みは、「愛着」を育て続けているお手本に近い。

例えば、東急ハンズさんは毎日決まった時間に挨拶の投稿をする。

「ただの挨拶? それがどうした」と思う人はもう少し感覚を磨いた方がいい。極めて重要なコミュニケーションだ。

例えるなら、商店街の八百屋のお兄ちゃんみたいなものだ。
毎日毎日、商店街で通りすがりに、あなたに「おはようございます!」「今日は天気がいいですね!」「いってらっしゃい!」とか、声を掛けてくれるようなもの。

この毎日の小さな繰り返しが愛着を育み、親近感を増大させ、ファン度を高めていく。

本の中で、東急ハンズさんは「おしゃべり8割、情報2割」、キングジムさんも「雑談7割、商品情報3割」と語っている。

投稿の割合はそれぞれで異なるものの、こういう日常のやり取りこそが重要なのだ、とわかってやっているわけだ。

印象的なのが、6人全員が「ツイートを見たからといって、商品を買ってもらえるわけではない」と口を揃えること。

八百屋のお兄ちゃんが「おねえさん、大根安いよ!ねえ! 買って! 買ってよ、ねえ!」とかって毎日寄ってきたら、うざいだけで誰も好きになってくれないよね?

かといって、まったく勧めてくれないのも寂しいというか他人行儀だ。

優れた「中の人」は、経験や体験によって「うざくならない微妙な距離感」をしっかり身につけていて、こちらを気持ちよくさせてくれ、日々の愛着を深めてくれる。

そして、何回かに一回、通りすがりに買ってくれることもあるけれど、それを目的にすると愛着は育たない。

その辺のことをよーくわかって、謙虚にアプローチを続けているわけだ。

 
もう一つ、愛着を育てるのに大切なのが、つぶやいているのが「企業」ではなく「個人」であると感じられること。

井村屋さんは「ご近所さん」、東急ハンズさんは「そばの人」、キングジムさんは「サザエさんの浮江お姉さん」など、表現こそ異なるが、すべて親近感を持ちやすい「個人」をイメージして投稿している。

ここ、かなり大切。

企業スタンスで投稿すると、どうしてもポジショントークになる。

結局、人は人にしか共感しないから、企業のポジショントークとわかった時点で、読むことすらしなくなる。

だからこそ、切れば血が出る「個人」ということを前面に出して、体温ある言葉で彼らはコミュニケーションをとるわけだ。

その辺のことも肌感覚でわかっているのも、彼ら「中の人」なのだ。


いやぁ、ほんと、大切な存在だと思うなぁ・・・。
この6人はもちろん、他の「中の人」たちも全員。

日本はデジタル後進国で、SNSを活用している人もまだまだ少ないけど、でもイノベーターやアーリーアダプターはかなりSNSに集まっている。

そういうプラットフォームで日々「愛着」をつくっている「中の人」たち。

いやマジでもうちょっと全体的にSNS担当者の待遇を見直した方がいいと思う。

なんでこんなことをしつこく言っているかというと、「SNSなんか若者感覚でちゃちゃちゃと適当にやってくれりゃいい」「なんならセンスのいいアルバイトでも出来ることだろ」くらいに心の中で思っている管理職とかがまだまだ多すぎるから。

もしくは「SNSは拡散の道具」「いいね数とかちゃんと稼いでくれないと人件費の無駄」くらいに思ってる露出脳のマーケとかがまだまだ多すぎるから。

いや、優秀な「中の人」がヘッドハンティングされちゃったら重罰ものだと思うので、ホントご注意を。


↓本の対談部分が公開されているので、こちらもご参照ください。



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古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。

ありがとうございます!じっくりじんわり書いていきます。
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コミュニケーション・ディレクターです。 さとなお名義で食やエッセイの本、佐藤尚之名義で広告関係の本を書いています。最新刊は『ファンベース』(ちくま新書)。 1995年から個人サイト「さとなお.com」を運営しています。

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ファンベースのこと、マーケティングのこと、クリエイティブのことなど、少しずつ書いていこうと思います。

コメント (2)
「さとなお」というブランドについては、さとなおさんという中の人が、上手くPRしているのかなあと思っています。かくいう私は、さとなおさんと年齢が非常に近いという以外、仕事でも趣味でもほとんど接点なしですが、今じゃすっかりさとなおファンの入口に差し掛かっているところです。何とか20%に入れるかなあ。
『SNSとは拡散ではなくファンの愛着作りです!』このフレーズに一目惚れしました。
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