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大切なことは、準備が間に合っていないときに突然目の前に現れる。 もしくはボリショイ・バレエの楽屋でのひとコマについて。


NHKで秀逸な『バレエ学校ドキュメンタリー』を観て、またぞろバレエにハマりそうな予感」という記事とか「旧ボリショイ劇場、ステージ上から開演直前の客席を撮った写真」とかの記事を続けて書いて、すっかりバレエ・モードになったので、もう少し続けたいと思う。

まずはこの動画をぜひ見てください。
2分程度なので、まずは見てください。
見てったら見て。


この動画の黄金の偶像(ゴールデン・アイドル)を踊っているのが岩田守弘くん。

『ラ・バヤデール』という演目の「最高の見せ場のひとつ」なのだけど、はっきり言って世界最高峰のダンスであり、世界最高峰のゴールデン・アイドルである

この安定、このジャンプ、この美しさ。
どれをとってもパーフェクト。

そして、「演じる」という意味においてもパーフェクト。
こんなに「元々は重い像なのだ」と感じさせる踊りも少ない。

前回の記事「旧ボリショイ劇場、ステージ上から開演直前の客席を撮った写真」では、彼がこれを踊る前に、金色の化粧をしたまま旧ボリショイ劇場の中を連れ回してくれた、ということを書いた。

今回は、彼がこのゴールデン・アイドルの化粧をしている模様をお伝えしたい。


撮ったのは前回の記事と同じく2003年10月3日。
場所は旧ボリショイ劇場の楽屋。

当時のボクは、まだまだバレエ鑑賞の初心者だった。

たぶんいま同じ状況を体験できるとしたら、もっともっともっと深く楽しめたと思うんだけどな(写真を撮る部分も違ったと思うんだけどな)。

でも、人生とはそんなにこちらの都合通りにはならない。

大切なことは、たいてい、準備が間に合っていないときに、突然目の前に現れる。

このときもそうだった。

旧ボリショイ劇場の隅の隅まで見学できたなんて、バレエをある程度くわしくなったあとだったら発狂的にうれしかったこと。

しかも、アナニアシヴィリとかグラチョーワとかアレクサンドロワとかツィスカリーゼとかフィーリンとか、大スターたちの稽古を毎日のように見たとか、もうなんつうか「失禁もの」だっただろう。

さらに、こうして開演直前の楽屋でいまからステージに上がるダンサーとずっと話すなんてシチュエーションを体験させてもらっているのに、ボクは何も知らない初心者だったのだ。

そういうことは、準備万端のときには起こらないものなのだ。

だからこそ、打数を稼がないといけないと思うのだが、それはまた別のお話。


・・・話を前に進めよう。
楽屋で化粧を始めた岩田くんの写真からだ。

ボリショイには、もちろん専属のメイクアップ担当者がいて、開演前に化粧をしてくれる。

ま、化粧というより、仮装だけどねw

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↑ まだ金粉を塗っていない、塗り始める寸前の岩田くん。

そして、いよいよ塗り始める。

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わりと入念に塗っている。
頭の飾りも細かい。
こういう細部に神は宿る。

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顔を塗り終わったところ。
岩田くんの後ろ、鏡に写っているヒゲの人はいっしょに案内してもらった吉田さん(当時はモスクワ在住)。

↓これは塗る道具ですね。金粉だけを使うわけではない。

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で、全身を入念に塗った後、衣装担当がやってきて、カラダに衣装をつけていく。

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最後に手首にバングルみたいのつけて・・・

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出来上がり!

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ポーズをとる岩田くん。
すべてが終わるのに30分ちょい、いや45分くらい待ったろうか。

その間も、いま考えたらしょーもない話をずぅっと岩田くんとしていた。

もっと聞くこと、聞くべきこと、聞いた方がいいこと、聞いてみんなに伝えるべきこと、が、たくさんあっただろう。

なにしろ世界最高峰のゴールデン・アイドルを踊る人の、出番前を独占しているのである。

でも、仕方ない。
ボクはバレエのことを何も知らない初心者だったのだ。

でも、その後、こんなにバレエを好きになった。

ある意味、大切なチャンスを掴んだ、とも言える・・・かなw



・・・で、第二幕での出番を終え、万雷の拍手に送られて戻ってきた岩田くん。

晴れ晴れしいね。

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ボクたちは、日々、気づいていないけど、いろんなチャンスを目の前にしている。

準備は間に合ってなくても、どんどん喰いついて行かないと。

16年前の写真を見ながら、そんなことを再確認したボクなのでした。


それでは、また。
(近いうちに、ボリショイの大スターたちの稽古風景についても別記事で書きますね)


古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。