原里実

小説書く。短編集『佐藤くん、大好き』https://amzn.to/39ZQjMa、三…

原里実

小説書く。短編集『佐藤くん、大好き』https://amzn.to/39ZQjMa、三田文学新人賞佳作『タニグチくん』、文学金魚新人賞辻原登奨励小説賞『レプリカ』ほか。英訳作品リスト:https://bit.ly/3c69Dde

マガジン

  • アイドルについて

    アイドルについて思うことをときどき書きます。

  • ちびものがたり

    電車でも、寝る前にも、待ち合わせまでにも。短い時間と軽い気持ちで読める小さい物語です。

  • 臨月の日記

    臨月の人の日記です

  • 日記

    なるべく書く。忘れないように。

  • ごはんにまつわるエトセトラ

    三度の飯よりごはんが好き(?)なわたしが、ごはんをテーマにしたショートショートを書いています。

最近の記事

企業で働く編集者が、フリーランスになって気づいたこと

わたしはこの春まで約7年間、企業で働く編集者でしたが、少し前に退職し、フリーランスの編集者でありライターであり、コピーライターになりました。働き方を変えてみて、いろいろと思ったこと、気づいたことがあるので書きたいと思います。 そもそも、どうしてフリーランスになったの?わたしの働いていた職場は、昔からわりと退職後フリーに転向する人も多かったのですが、入社したばかりのころは(というか最近までずっと)、どうも自分とは遠いことというか、やっぱり安定した収入がないのは不安だし、自分に

    • キンプリからしか得られない心の栄養があることに気づいた

      King&Prince(キンプリ)の楽曲の一部がサブスクリプションで公開されている。テレビで披露しているのを聴いたりして好きだった曲がいくつかあったので、軽い気持ちで聴いてみたら、はちゃめちゃに刺さってしまった。 キンプリのなかにももちろんいろんな方向性の楽曲があるのだけれど、惹かれるな〜と直観的に感じる曲をピックアップして聴いていたら……気づいたらものすごく懐の深い愛に包まれて、なんだかもっと自分で自分を愛せそうな気すらしてきていたのだった。 ふだんわたしはKis-My

      • 「わんわ」と「ねね」

        このあいだ一歳三ヶ月になったばかりの息子のことを、わたしはみっちゃんと呼んでいる。近ごろのみっちゃんは、なんだかもう、あまり赤ちゃんではない。急速に、子どもへと変わりつつある。嬉しいような、さびしいような、複雑な心境だ。 最近のみっちゃんを、「子どもみたい」って感じるのは、なぜだろう。ほんのちょっと前までよちよちだった歩きが、だいぶ安定してきたからか。指さしや動作で、少しずつ意思の疎通がはかれるようになってきたからか。いっちょまえに、大人の身ぶりの真似なんかも始めたからか。

        • 短編小説『7人の妻と12人の夫たち』

          短編小説『7人の妻と12人の夫たち』の第一章の全文を、試し読みとしてこのページで公開しています。文章を書くわたしとデザインをする夫によるユニット「生活むし」が制作・販売しています。 目次大量生産された日常 訃報 コンサートホールの出口を抜ければ 再会、かもしれないもの 殖えゆく夫たち 宴もたけなわ そしてわたしたちはひとつに 大量生産された日常 夫の、右眉毛の付け根にあるほくろが好きだ。それは、ちょうど目にかかるかかからないかのところで揺れる、前髪のあいだに見え

        企業で働く編集者が、フリーランスになって気づいたこと

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        記事

          短編小説+レシピ集『我が家の永遠めし』

          いくら食べてもまだおいしい、永遠に食べられる殿堂入り——そんなごはんを「永遠めし」と呼び、大切に収集している壮亮と真美子。二人の「永遠めし」をめぐるショートショートと、そこに登場するメニューのレシピを掲載した本です。 このページでは序文と、掲載されている8つの小説・レシピのなかから「飼い慣らされたゴーヤーのチャンプルー」の章の全文を、試し読みとして公開しています。 文章を書くわたしとデザインをする夫によるユニット「生活むし」が制作・販売しています。 序 二人暮らしにして

          短編小説+レシピ集『我が家の永遠めし』

          文学フリマ東京38に参加します【生活むし R-16】

          5月19日(日)に東京流通センターで開催される「文学フリマ東京38」に出店します。出店者名は、生活むし【ブース番号:R-16】です。ぜひお立ち寄りいただけたらうれしいです。(ウェブカタログはこちら) 「生活むし」は、文章を書くわたしと、デザインをする夫のユニットです。 販売作品①:小説+レシピ集『我が家の永遠めし』いくら食べても、まだおいしい。そんな「特別に好きなうちのごはん」を「永遠めし」と呼び大切にしている壮亮と真美子。二人の永遠めしのレシピを、小さな物語とともに紹介

          文学フリマ東京38に参加します【生活むし R-16】

          沈みゆく島の高校生A

           どんぶらと窓のすぐ下で揺れる水面をながめながら、この光景も見納めか、なんてベタなことを考える。でも実際、なんだか感情のない生き物のようで不気味だとずっと思っていた灰色の水の塊も、お別れと思ってみるとほんのりかわいく見えてきたりするから不思議なものだ。 「英語では卒業式のことを『コメンスメント』と言うわけですが、これは本来『始まり』という意味の単語でありまして——」  いかにもありがたげな校長の訓示に耳を三度程度わずかに傾けながら、教室のうしろ、ずらりと並んだ保護者の列の中に

          沈みゆく島の高校生A

          ここから先は赤ちゃん

          「生活むし」は、文章を書く私と、デザインをする夫のユニットです。ふたりでつくるZINEの第一弾、エッセイ『ここから先は赤ちゃん』を現在Boothで販売中です。まえがきと第一章を、このページで公開しています。 まえがき やわらかく小さな、ほんのりと湿り気を帯びた手のひら。ほんの少し前まで、ふやけたようにしわくちゃだったはずなのに、今はもうふっくらと丸みを帯びて、力強くわたしの胸を押し返してくる。  なんにもないところに突然あらわれた、筆の先っぽほどの小さな点が、たった一年ほ

          ここから先は赤ちゃん

          文学フリマ東京37に参加します【生活むし L-34】

          11月11日(土)に東京流通センターで開催される「文学フリマ東京37」に初出店します。出店者名は、生活むし【ブース番号:L-34】です。ぜひお立ち寄りいただけたらうれしいです。(ウェブカタログはこちら) 「生活むし」は、文章を書くわたしと、デザインをする夫のユニットです。 販売作品①:エッセイ『ここから先は赤ちゃん』妊娠中から出産後にかけて考えた、生きることや死ぬこと、日常のかがやき、時が過ぎてゆくさびしさ、家族の記憶などについて書きました。夫が装丁をしています。 「毎

          文学フリマ東京37に参加します【生活むし L-34】

          あわいの日々

          あわいの日々

          誕生【臨月の日記 4/18】

          4/18の朝6:49に出産した。 陣痛よりも破水が先にきて、早めに入院し、病院でほかの妊婦さんの分娩中の苦しそうな声や、赤ちゃんの産声、産まれて数日後の入院中の赤ちゃんの泣き声などを病院で聞きながら、陣痛がくるのを一日中待ってからの出産だった。 恐れていた陣痛は、今までに感じたことのないような強さと種類の痛みだった。徐々に強まるので、もうこれくらいで最大かな……? と思ってもそれより上がどんどんくる。腰痛、下腹部痛、お尻への圧迫感、全身の血管が怒ってるみたいなどくどく感。

          誕生【臨月の日記 4/18】

          にんにくマスク【臨月の日記 4/16】

          今日は夫と高円寺で待ち合わせをして遊んだ。集合してまずもんじゃ焼きを食べ、古着屋などを見ながらぶらぶらしたあと、またおなかが空いてきたのでたこ焼きとお餅を食べ歩き、そして最後に沖縄料理屋に入った。 もんじゃ焼きの店で隣になった、4人家族の父親が、どことなく横柄な感じでわたしはあまり好きではなかった。店を出たあとに夫が同じ感想を口にしたので思わず大きな声で同意してしまった。最後に食べたねぎ塩豚もんじゃというのがにんにくが効いていて、店を出てしばらくマスクのなかににんにくくささ

          にんにくマスク【臨月の日記 4/16】

          ビスケットvsシュークリーム論争【臨月の日記 4/12】

          実家に帰ってきてから食べる量が増えている気がする。健診では、胎児の推定体重は一週間前とそれほど変わらなかったのに、わたしの体重は増えていた。 内診の結果では、子宮口は少しひらいてきており、産道もやわらかくなってきている、しかし赤ちゃんはまだそれほど下には降りてきていないということだった。「まだもう少しかかりそうな感じですか?」とたずねてみると、「なかなか予測するのは難しいんですけどね……今日明日ということはないでしょう」と言われた。院長はけっこう淡々としている。「変わりない

          ビスケットvsシュークリーム論争【臨月の日記 4/12】

          プチ引越し(臨月の日記 4/9)

          妊娠初期の頃、漫画で『コウノトリ』を読んでいて、さまざまな妊娠のケースなどとても勉強になったのだが、大きくなったお腹の中で赤ちゃんが動いているコマにはいつも擬態語として「ぐいーん ぐいーん」と書いてあって、赤ちゃんはぐいーんと動くのだろうか……ということがうっすらと気になっていた。今になって、まさにぐいーんという表現がぴったりだと思う。 今日から里帰り出産のためにわたしが実家に帰るので、今朝は残っていた2個のキウイと、2個のスコーンをわけて朝食にした。夫は基本的に料理をしな

          プチ引越し(臨月の日記 4/9)

          臨月の日記 4/3

          キッチン用の棚をDIYしようと、週末にホームセンターで木材を買ってきた。今日はそれをやすりで磨いて、ワックスをかけただけでほぼ一日が終わった。肉体労働したせいか、いつにも増して眠い。 「ワックスをかけたら艶が出たよ」と夫に報告すると、「気づいていないかもしれないけど、艶のほかにも出たものがあるよ」。何かと思ったら「愛着」ということだった。たしかに。 晩ごはんは鮭の西京焼きと、近所の養鶏場で買った卵の卵かけごはん、里芋の煮物、玉ねぎとじゃがいもの味噌汁、野沢菜の油炒め。

          臨月の日記 4/3

          うぐいすの方言、お母さんヒス構文(臨月の日記 4/1)

          今日は朝から天気がよくて、ベランダに椅子とテーブルを出して朝食兼昼食を食べた。フレンチトーストと残り物のポテトサラダ、ウィンナーとミニトマト。フレンチトーストはたいてい適当につくるけど、黄金比とかあるのだろうかといつもぼんやり気になってたので、クックパッドで殿堂入りみたいなレシピを見てつくってみたらすごく美味しかった。卵液の卵・牛乳・砂糖の比率のほか、短時間でパンの中心まで液を染みさせるコツと、ふんわり焼き上げる火加減のコツがあった。やはりレシピは偉大だ。 最近ちょっと気取

          うぐいすの方言、お母さんヒス構文(臨月の日記 4/1)