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日記 2021年1月 トンネルを抜けた先にある「別の世界」。

 1月某日

 2日に「東京・埼玉・千葉・神奈川 各県の知事 政府に緊急事態宣言を要請」された。僕が住んでいる大阪は緊急事態宣言を要請しない、とネットニュースにはあった。

 コロナウィルスによる僕の日常の変化はほとんどない。
 それでも2020年の緊急事態宣言は暗澹たる気持ちになったし、その余韻のようなものは薄く今も続いている。

 社会学者の大澤真幸がコロナ後の世界を村上春樹の『1Q84』のイメージで「一見、もとの世界と全然変わらないように見えるけど、実は別の世界で、もとの世界とは別の原理が支配している」んじゃないか。
 その世界は「ものすごくポジティヴになるかネガティヴになるというのが、僕の感覚です。」と大澤真幸は言っている。

 どちらにしても、以前と同じ世界ではなく、その世界にどのように馴染むのか、という問題を前に一度立ち止まる時間がこの先にあるのだろう。

 2日は『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』が放送された。

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 予定では2日に友人とご飯に行く約束をしていたのだけれど、当日になってドタキャンされた。理由は「お金がないから」ということだった。
 販売の仕事をしていると聞いていたので、コロナウィルス関係で収入が減ると決まってしまったのかも知れないと後々になって気づく。

 もし、知人や友人がコロナによって金銭的あるいは肉体的な窮地に立たされた時、僕は何か手助けをすることはできるのだろうか。
 あるいは、僕自身がコロナによって金銭的、肉体的な窮地に立たされた時、どうすれば良いのだろうか。

 考えてはいるけれど、具体的なことは何も浮かばない。
 ただ、コロナウィルス後の世界の物語として『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』は一つの参照になる気はした。

 取扱い方は直接的だったし、少し安易な希望を最後に示してしまった気もするけれど、社会の鏡として逃げ恥の新春スペシャルはちゃんと機能していた気がする。

 1月某日

 初出勤だった。
 朝、同期の女の子と挨拶を交わした時、今年に入って初めて人と喋ったと気づいて、それを言うと少し引かれた。
 
 同期の女の子は去年の最後の出勤の日に上着を着て帰ろうとしたところ、その上着がなくなって思っていた。
 その後、どうしたのか知らなかった為、尋ねると「間違って着て帰ろうとした人が戻ってきてくれて、それ気づいて、上着を返してもらったの。だから、寒いまま帰らなくて済んだ」とのことだった。
 それは良かった。

 初出勤は年末年始の休暇で届いたメールの処理のみだった為、お昼には仕事が終わり、部署のメンバーでランチへ行く約束になっていた。
 一人がお酒が飲みたいと言い、僕もそれに同意したところ、お店探しは僕の担当になった。
 なんでやねん。
 と思いつつ、ネットでお店を探した。お店を探したりするのは、そんなに嫌いじゃない。

 お昼からお酒が飲めるパスタのお店を見つけて、部署のメンバーで行った。唯一、お酒が飲める方が女性で、入ってきた順番的には後輩になるけれど、年齢や社会人経験的には遥かに先輩とビールを頼んで、他のメンバーはアイスコーヒーやアイスカフェラテで乾杯をした。

 お酒が飲めて、後輩だけれど社会人的には先輩の女性の方は結婚式の司会の仕事もしているので、ここでは便宜上、司会さんと呼ばせていただく。
 司会さんは結婚していて、旦那の家族と旅行へ行くくらい関係は良好らしかった。

 ただ、旦那の弟がほのかに司会さんを女性として見ている節があり、旅行へ行った際などに一度、ベッドで休んでいた司会さんの寝顔を旦那の弟が覗き込んできたことがあったそうだ。
 シチュエーション的に心配して、というのも考えられるらしいが、旦那さん経由で弟に尋ねたところ、とぼけられた。

 話を聞いた限りでは、旦那の弟は礼儀的な人間ではないようだ。部署のメンツの予想は旦那の弟は「女性との距離感を知らない童貞」という結論になっていて、いやいや、童貞に失礼だし、女性との距離感を知らないからって寝顔を見に行くってなに? 
 そして、結論が自己防衛は大事、という話で落ち着いた。

 こうして、男性の無邪気? 無意識? な性的(加害)行動によって、女性が更なる自己防衛を強いられて行くのか、と思うと暗澹たる気持ちになり、僕はひたすら「いや、司会さんは悪くないよね?」と言ったが、結論は変わらなかった。

 司会さんは社会人経験が豊富で、その上、人脈も広いようなので、どう考えても男性に気を持たせるような言動をしていないだろうし(というか既婚者だし)、他人との距離感もしっかり保ち、自己防衛って絶対しているよね? と思う。
 そんな司会さんに少しでも自分に落ち度があった、という結論は普通におかしいと思うけど、職場のランチでの会話としての落としどころとしては、その辺が限界だった。

 1月某日

 年末に母様から佐原ミズも「尾かしら付き。」という漫画が送られてきていて、それを読んだ。

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 以前、実家に帰った時に母様から勧められて一巻の冒頭だけ読んだ漫画だった。

 内容としては、「樋山那智、ソフトボールに汗を流し、日焼けに憧れる平凡な中学生。彼女は同級生の宇津美君が抱える重大な秘密を知ってしまう。それは彼に「しっぽが生えている」ということ。「みんなと違う」ことに迷い戸惑い傷つきながらも、ふたりが心を通わせあう、10年間の物語。」というもの。

 一巻の冒頭で主人公の女の子、那智がしっぽが生えた赤子を出産している為、「しっぽが生えている」同級生の宇津美君と結ばれるのは分かっているのだけれど、2巻までで中学生の息苦しさや純粋さの噛み合わなさが描かれていて面白い。
 佐原ミズと言えば、新海誠の「ほしのこえ」のコミカライズを以前していた。実は映画版より、僕はコミックの「ほしのこえ」が好きだった。
 そのせいか分からないけれど、佐原ミズの漫画を読むと、新海誠が描かなかったもう一つの世界みたいなものを読んでいるような気持ちになる。

 1月某日

 最近、気づいたこと。
 東京・埼玉・千葉・神奈川が政府に緊急事態宣言を要請したけれど、大阪は要請しない、と発表。その三日後(1/7)に大阪府「緊急事態宣言要請すべき」になっていて、なんかよく分からないコメディ映画を観ている気分になる。

 最近、気づいたこと。
成田凌のオールナイトニッポン」を聞く。

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 兄からウォシュレットを「強」にしていると友達を失うぞ、という忠告を受けてからは、ウォシュレットを「弱」にしている、という成田凌のエピソードが一番好きだった。

 最近、気づいたこと。
 2020年9月に「日本SF作家クラブ」の第20代会長に声優でエッセイストでも活躍する池澤春菜が就任した。
 その時は、「SF小説の著作を持たない初の会長」だったが、大森望責任編集によるSFアンソロジー『NOVA』最新号(河出文庫、2021年春刊行予定)にて、池澤春菜の初のSF小説が発表される、とのこと。
 池澤春菜と言えば、作家の池澤夏樹の娘で、最近「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集&日本文学全集」について考えていたので、タイムリーなニュースだった。
 世界文学全集と日本文学全集を個人で編集した方の娘が書く、SF小説。話題になるのかは分からないけれど、声優でエッセイスト、そして日本SF作家クラブの会長で池澤夏樹の娘が書く小説には注目したい。

 最近、気づいたこと。
 仕事の休憩中に「五等分の花嫁∬」を見る。

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貧乏な生活を送る高校2年生・上杉風太郎のもとに、好条件の家庭教師アルバイトの話が舞い込む。ところが教え子はなんと同級生!! しかも五つ子だった!! 全員美少女、だけど「落第寸前」「勉強嫌い」の問題児!
 というラブコメ作品で、「五等分の花嫁∬」はその二期だった。五等分の花嫁を見たら、五つ子の中の誰が好みか? という話をするものなのかな? と思って、休憩戻りに隣にいた後輩の男の子に「五等分の花嫁って見てたっけ?」と尋ねた。
「郷倉さん、それ100回くらい聞いてきてますからね。見てないです」
 ごめんって。

 最近、気づいたこと。
 米澤穂信の「さよなら妖精」を読んだ。

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 詳しくは別の機会に書きたいけれど、傑作だった。米澤穂信は徹底的に知を積み重ねて、これを書いたんだなと思う。
 もちろん発想はバケモノ級だけれど、それを成立させるだけのロジックと知識を持って本書を書いている。
 実は「古典部シリーズ」の最終巻として、用意されたシナリオが「さよなら妖精」だと聞いていた。それを踏まえると、なるほど、と頷けるところが多々あったけれど、「古典部シリーズ」のメンツだと、こんな鮮烈なオチは描けなかったんじゃないか、と思う。

 最近、気づいたこと。
月がきれい」というアニメを3話まで見る。

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 中学生の恋愛模様を描いた作品で、彼らは15歳くらいで僕の半分くらいしか生きていないのか、と思うと、よく分からない切なさと恥ずかしさが込み上げてきて、4話以降がまだ見れていない。
 多分、僕は「月がきれい」の登場人物たちが、この先に感じるだろう挫折や絶望、羨望、悦楽を勝手に想像して、その苦しさに耐えられなくなっている。
 想像力が豊かというよりは、要らない想像力で作品が観れなくなるって我ながら呆れる。

 最近、気づいたこと。
 ツイッターを徘徊していると「20代は劣等感をエネルギーに変えられる人が強い。30過ぎてからは好奇心を維持出来る人が強い」とあって、更に「40代からチャンスが増える」というのもあった。
 好奇心かぁ。

 最近、気づいたこと。
 好きなライターの方が旦那さんと離婚した後に、マッチングアプリをインストールしたけど、2週間後にはアンインストールしたってnoteに書いていた。
 旦那さんと一緒に過ごした1年半は常に「旦那さんが一緒なら」という想定で未来予想図を考えていたけれど、「別れを通してわたしはぼっちの孤独と引き換えに再度ひとりの自由を得た」と書いて、結論が「めっちゃ沖縄に住みたい」で最高ってなる。
 僕も今は「ぼっちの孤独」状態なんだから、「ひとりの自由」を使って、自分の未来予想図みたいなものにちゃんと向き合うべきだよなぁ、と思う。
 けど、今はとりあえず小説を書ききりたい。

 1月某日

 1月7日に新型コロナウイルスの感染者は2447人と発表した。東京で初の2000人超え。
 緊急事態宣言が出された。
 1月9日に村田沙耶香がツイッターにて「昨年の4月16日から7月30日まで描いた日記があるのですが、昨日からまた書き始めました。
 ご飯とお天気のことばかりですが、それでも頭の中に散らばっているものを少し整理できる気がします。

 と呟いている。
 僕が日記を始めたのは4月5日だった。

 自分や世界の日常が大きく変化する時、日記などの記録をしたくなるのかも知れない。
 村田沙耶香は「ご飯とお天気のことばかり」とのことで、僕は映画のこと、職場の同期や後輩のことばかりだ。

 前回の緊急事態宣言がなされた時、僕は明るく染めていた髪を黒くしたのだけれど、今回は赤くした。
 特に理由はないし、真っ赤という訳ではないが、鏡を見ると「コイツ誰だろう?」と思う。

サポートいただけたら、夢かな?と思うくらい嬉しいです。