ケーキは飾り付けされれば綺麗だけれど、崩れたり掴んでしまえば、必ずしも綺麗とは言えない。

 胃潰瘍で入院していた父が退院しました。
 良かった良かった。

 家に帰った父は録画の溜まった番組を永遠と見ているそうです。
 入院の間、父は好みのテレビをくつろいで見ることができなかったのでしょう。

 休日の父を思い出すと、いつもテレビを見ている姿が浮かびます。本当に一日中、テレビの前にいたなぁと今から思うと、呆れるばかりです。
 とはいえ、父にとってのリラックス方法がテレビを見ることであるのなら、幾らだって見れば良いと思う訳です。

 さて、少々近況っぽいことを今回は書きたいと思います。
 今までだったら、日記という形で書くことなのですが、いつの間にか日記を書かなくなってしまいました。
 正直、僕の日常は本当に何も起こらないので、日記として書くことなんてないんですよね。

 と言いつつ、最近はちょっと色々ありました。
 前の職場の結婚した友人から「市川春子」という漫画家を紹介されました。
 知っている? とLINEで訊かれて、ぱっとは思いつかずネットで調べて「宝石の国」の人と知りました。

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 短編集が出ていて、そちらが読みやすいとも勧めてもらったので、市川春子短編集「虫と歌」と「25時のバカンス」を今読んでいます。
 勧めてくれた方が「小説のような映画のような不思議な世界観だから」と言っていたのですが、なるほどと思う内容でした。

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 普通の漫画というよりは、岸本佐知子が翻訳した海外の短編小説を読んでいるような印象がありました。
 とにかく一気に読むのが憚られる作品で一日に一編の速度で読んでいます。

「宝石の国」の方も買って、今3巻まで読みました(こちらも、めちゃくちゃゆっくり読んでいます)。
 物語の作りや世界観についてはひとまず、もう少し読んでから言語化したいんだけど、漫画が巧すぎます。
 漫画って「絵」が巧いと「漫画」が巧いで、微妙に違う部分があって、市川春子は漫画が巧い。超絶巧い。
 影の使い方がちょっと天才的すぎる。

 そんなことを考えていて、ふと思い出したのですが、数年前に行ったオタク街コンで僕は少女漫画家さんと知り合ったんです。
 コミケとかにも詳しい方で、丁度一緒に行っていた友人がコミケで荒稼ぎしている奴だったので話が合って、向こうの方の連れも含めて四人で飲みに行ったことがありました。

 少女漫画家さんと知り合えることなんて、殆どないので、その時の僕は「君はライターなの?」ってレベルで、その方に質問をしまくったのですが、そこで凄いと思う漫画家に「市川春子」を挙げていました。
 当時はそうなんだぁと思う程度でしたが、今になってはそりゃあ市川春子って言うわ!と大納得した次第です。

 そんな市川春子の漫画を読んでいる横で、河内遙の「ケーキを買いに」という短編集を読みました。
 こちらは全部、読みました。

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 性欲って、突き詰めたらこんな感情も産むよね☆
 って言うことを永遠と突き詰めたような作品でした。
 あとがきで

 この『ケーキを買いに』という連載は
 当初どこに需要があるのか
 皆目わからないまま 描きはじめたのですが
 ある時、おさなともだちの一人が
「中学の頃に こんなマンガ読んどきたかった」
 というようなことを 云ってくれたので
 ああ、そんな感じでアリな人がどっかにいればいいや
 と、ラストまで勝手気ままに描き進められたのでした。

 と書いていたのですが、ホント読む人を選ぶのは間違いないけど、僕はアリでした。超アリでした。

 ケーキは飾り付けされれば綺麗だけれど、崩れたり掴んでしまえば、必ずしも綺麗とは言えなくなるけど、それは性欲だって、そうなのでは?
 と言われ続けているような作品でした。

 あとがきにも本編にも「性欲」という単語は一切使われていないので、あくまで僕の印象ですが。

 というような漫画を最近読んでいたのですが、横でカクヨムに載せているエッセイ「オムレツの中はやわらかい方がおいしいのか?」を書いていました。

 内容は、数年前のすばるでLGBTに関する特集をしていて、その中で松田青子が「内側からの自然な声」というエッセイを書いていました。
 それはクロエ・カルドウェルの『WOMEN』という本から引用しつつのエッセイなのですが、これをとっかかりに、僕は吉田修一の「怒り」や村上かつらの短編漫画、絲山秋子「イッツ・オンリー・トーク」を引用しつつ、性欲とかセックスについて考えてみました。

 最後は、人は性を前提にしなければ「人間」について考えられないのではないか? という内容になりました。
 我ながら変な結論に落ち着きました。

 明日の9月2日の18時に更新するので、良かったら読んでみてください。


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