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ひといちばい敏感な子(HSC)~「子育てハッピーアドバイス」著者・明橋大二医師に聞く(1)

2022.01.29 by 岡本 聡子

Hanakoママwebリニューアルにともない、私が取材・執筆した記事を、関係者の許諾を得て、こちらに転載しています。

「うちの子は、他の子よりも傷つきやすく、不安になりがち?」、こんな風に感じたことはありませんか? シリーズ累計500万部を超える「子育てハッピーアドバイス」著者であり、ひといちばい敏感な子(HSC)に詳しい明橋大二医師にお話をうかがいました。

第1回 ひといちばい敏感とは?

5人に1人は「 ひといちばい敏感な子 」

たとえば、
「他の子が先生に大きな声で怒られたり、友達にいじめられていると、自分のことのように感じて涙が出てしまう。周りの人の気持ちや感情をダイレクトに感じとって落ち込む。この状況をなんとかしなければと考えて、しんどくなってしまう」

「恐ろしい映画やニュースを目にして、それが自分の身にも起きるのではと受けとめ、大きな恐怖を感じる」

「音、匂い、光、痛みなど小さな変化にも影響を受けやすい。他人が自分を笑った、ささやかな励ましを受けたなどに気づき、一喜一憂するのを止められない」

「友達と何かを決める時、相手の気持ちや公平性を大切にして考え込んでしまい、なかなか行動に移せない」

このように、環境や周囲の変化、人間関係に敏感で、時には苦しく感じることがあるお子さんはいませんか? ひといちばい敏感な子(Highly Sensitive Child、以下HSC)は、5人に1人の割合で存在します。35人学級なら、約7人がこの特性を持つ可能性があります。

そして、この特性のために、生きづらさを感じている人は少なくありません。しかし、敏感であることは決して悪いことではありません。「思いやり」「芸術」「愛」などプラス面もより強く感じるからです。

そして、成長する中で体験するであろう変化、試練、悲しい怖い出来事を一緒に乗り越えられる味方がいれば、HSCはひといちばい幸せに育ちます。

ほとんどのHSCが持つ、4つの性質

HSCには、4つの性質があります。このうち一つでもあてはまらなければ、おそらくHSCではない、と判断されます。

①深く考える

普通の子どもならそこまで考えない、ということまで考えてしまいます。前述の「友達と何かを決める時、相手の気持ちや公平性を大切にして考え込んでしまい、なかなか行動に移せない」があてはまります。

買い物をする時も、すべての選択肢を考えて時間がかかることがあります。「石橋をたたいて渡る」性格。1を聞いて10を知るところもあります。

早くから社会的公正さに興味を持ち、人生の意味を探求する傾向があります。そのため、年齢のわりに大人びた考え方や発言をすることもあります。世の中の成り立ちや、生死について早くから興味を持つ子もいます。

②過剰に刺激を受けやすい

大きな音や光、暑さ寒さ、自分に合わない靴、濡れた服やチクチクする服、痛みが苦手なことがあります。楽しいはずのイベントでも、すぐ疲れてぐったり、または興奮して眠れなくなることも。人に見られたり、実力を試されたりする場面では、普段の力を発揮できない時があります。

③共感力が強く、感情の反応が強い

物事の一つ一つを深く感じ取り、涙もろく、人の心を読むことにたけています。完璧主義で、ささいな間違いにも強く反応します。残酷な映画やドラマが苦手で、不公平なことが許せません。

④ささいな刺激を察知する

小さな音、かすかな匂い、小さな変化に気づきます。人が自分を笑ったことや、小さな励ましにも気づきます。体内の刺激にも敏感で、薬が効きやすかったり、逆に、特に何かがあったわけでなくても、少しの刺激で、頭が痛い、おなかが痛い、と訴えて病気ではないかと不安を感じたりします。親からすると「大げさだ」と思えるかもしれません。

参考:HSCかどうかの23のチェックリスト

さらに詳細なHSCチェックをしたい方は、以下をご覧ください。
【エレイン・アーロン博士によるチェックリスト】
http://hspjk.life.coocan.jp/selftest-hsc.html 

HSCの赤ちゃんの特徴

HSCは、育て方でなるものではなく、持って生まれた性質です。病気や障がいではないので、治すものではなく、自分らしさを伸ばすものです。何に対して敏感かは、人それぞれ違いますし、大人になっても敏感な性質は基本的に変わりません。

赤ちゃんのうちに見られる特徴としては、以下のようなものがあります。

①よく泣く

生後4か月頃までの乳児で、栄養状態もよく病気もないのに、1日3時間以上激しく泣くことが、週に4日以上ある場合は、周囲からの刺激に敏感だといわれています。しかし、様々な要因があるので、よく泣く子が必ずしもHSCだと限りません。

「HSCの赤ちゃんは容易に刺激過多になりやすいので、一度、刺激を減らし、泣くのが治まるかどうか様子を見てみましょう。具体的には、『無理に喜ばせようとしたり、大きな声を出したりしないようにする』『眠っている間だけではなく、日中も、なるべく音や光を減らすようにする』などです」

②眠らない、すぐ目を覚ます

生後6か月頃になると、HSCの多くは、眠りにくい、すぐに目を覚ます、といったことが起こります。
日中の刺激や、直前や睡眠中の音や刺激のせいなのか、チェックする必要があります。

③注意力がある

「細かいことに気づく」「母親の動きをしっかり目で追う」などの特徴があります。HSCは新生児の時から、親の気持ちを感じやすいといわれています。

「親御さんは過度に心配せず、自分の直感を信じてください。心地よい環境を整え、赤ちゃんとコミュニケーションを図っていけばよいのです。子どものことを一生懸命考え、お世話をしていることは子どもに必ず伝わります」という明橋先生の言葉は、とても心強く心に響きました。

(取材・文:岡本聡子)

第2回「ひといちばい敏感な子(HSC)を育てる」
第3回「学校や周囲に、理解・協力してもらおう」に続きます。

【明橋 大二(あけはし だいじ)氏プロフィール】

精神科医、真生会富山病院心療内科部長。大阪府生まれ、京都大学医学部卒業。専門は、精神病理学、児童思春期精神医療。現在、児童相談所嘱託医、NPO法人子どもの権利支援センターぱれっと理事長、一般社団法人HAT共同代表(http://www.hat-a.com/)。富山県虐待防止アドバイザー、富山県いじめ問題対策連絡会議委員、南砺市政策参与。

著書は、『子育てハッピーアドバイス』シリーズ(http://www.happyadvice.jp/)など多数。同シリーズは500万部を超えるベストセラーとなり、韓国、中国、台湾、タイ、ベトナムにて、翻訳出版されている。

明橋先生の公式サイト:http://www.akehashi.com/

「HSCの子育てハッピーアドバイス」(1万年堂出版)

「子育てハッピーアドバイス」(1万年堂出版)


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