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紙の個性派!エンボス紙の魅力

昨年の話ですが、紙屋さん時代の後輩が、とあるものを買ってきてくれました。
それが、こちら。

可愛くないですか!?
カモ井加工紙(mt)×竹尾コラボのマステです。
通常、mtのマステには和紙が使われていますが、こちらの商品は竹尾のT-EOSシリーズというエンボス紙で作られています。写真左から、NTストライプGA、タッセルGA、ギンガムGAという紙です。

エンボス紙とは、模様のついた金属ロールで圧をかけ、表面に凸凹の柄をつけた紙のこと。
柄によって雰囲気が変わるところが魅力の1つで、今回買ってきてもらったマステも模様(と色)によって全然印象が違いますよね。

平滑な紙がプレーンな紙だとしたら、エンボス紙は個性派といったところでしょうか。
個性派な分、使いどころが難しかったりもするのですが、ハマれば存在感抜群の紙モノに仕上がりますよ。
というわけで、今日はエンボス紙とは何か?から魅力や使われ方、個人的に好きなエンボス紙などなど、全編エンボス紙だけで展開する、超マニアックな記事をお送りします!


エンボスとは?

本題に入る前に、まずはエンボスについて少し。
触ると一部分が盛り上がったパッケージやショップカードなどを見たことはありませんか?

エンボスが特徴的なチョコのパッケージ

こういった紙を盛り上げる加工がエンボスです。「浮き出し」とも呼ばれます。

加工方法は、盛り上がらせたい柄の凹凸版で紙を挟んで圧力をかけ、絵柄を浮かび上がらせるというもの。インキをつけるわけではないので、印刷とは違い、紙に色はつきません。
とはいえ、下記の写真のように、黒い文字が浮き上がったパッケージやカードもありますよね。これは、先に文字を印刷してから、エンボス加工をしています。

GODIVAのパッケージ。文字とロゴ部分が浮き上がっている

ちなみに、逆に紙をへこませる加工もありまして、これはデボスといいます。型押しとも呼びますね。

エンボス=浮き出し=紙を盛り上げる
デボス=型押し=紙をへこませる

前置きが長くなりました…本題のエンボス紙はといいますと、最初からエンボスで凸凹柄がつけられた紙のことを指します。
冒頭で少し触れましたが、模様のついた金属ロールを押しつけて、柄がつけられています。

エンボスとエンボス紙の違い

紙が盛り上がっているという点では共通しているエンボスとエンボス紙ですが、違いもあります。
大きな違いは、下記の2点かなと思います。

・エンボスは後加工、エンボス紙は紙

エンボスは制作物を作る過程で、後から行われる加工です。(通称:後加工)
紙があって、場合によっては印刷をして、その後にエンボス加工をします。
一方、エンボス紙はその名の通り、紙。
エンボス紙そのものに印刷や箔押しをしたり、さらにエンボス加工をすることだって可能です。

エンボスは加工の一種、エンボス紙は紙の一種ということになりますね。

・デザインの一部orエンドレス

エンボスは、例えば名刺のロゴ部分など、デザインの一部分に使われることが多い加工です。
下記の写真はマスカラのパッケージですが、文字と斜めの線部分がエンボスで浮き上がっています。

別の面はエンボスがありません。

エンボス紙の場合は、紙全体に模様が入っており、エンドレス柄になっています。

そのため、エンボス柄を考慮してデザインする必要があります。

例えるなら、エンボスは服に刺繍をする感じ、エンボス紙は刺繍の入った布から服を作る…といったところでしょうか。

ちなみに、模様が入った紙が全てエンボス紙とは限りません。
特に似ているのがフェルトマークという技法で作られた紙。以前この2つの違いについて書いたことがありますので、お時間あればこちらもお読みください!

紙は本当に様々な技術を駆使して作られています。普段何気なく使っていますが、背景にはきっと開発者の方々の苦労があるはず。そう思うと、1枚の紙も愛おしく感じますね。

エンボス紙の魅力

私が思うエンボス紙の魅力は、視覚と触覚のどちらでも楽しめるところです!

白くて模様のない紙は、手触りがあったとしても見た目ではわかりにくいんですよね。特に写真が難しい!このnoteでも何度かアラベールなどの風合いのある白い紙の写真を載せていますが、毎度「うん…全然良さが伝わらん」と思ってます…。
(写真の腕のせいもあるかもしれませんけども)

その点、エンボス紙は写真でもわかりやすい!
カラフルなものならより写真映えします。
小物や商品を撮影するときの背景にも使えますね。

TS-1というエンボス紙

そして、紙が浮き出して凸凹しているわけですから、触感も楽しいんです。
ざらざらした風合いとはまた違う、メリハリのきいた触り心地です。

また、柄によって魅力のタイプが変わるのも面白いところ。
大きかったり変わった柄のエンボス紙は、インパクト抜群の制作物が作れます。名づけて、「インパクト系」!(今、名づけました)
一方、さりげないエンボス柄は汎用性が高く、デザインを邪魔しすぎない点が魅力です。こちらは「シンプル系」ですね。

エンボス紙が使われているモノ

えーと、いっぱいあります!
封筒やノートの表紙などの紙製品や、ハードカバーの書籍、パッケージまで…ありとあらゆる紙モノに使われていますよ。

次にいくつかエンボス紙をご紹介するので、ぜひ探してみてください~!

いったいどんなエンボス紙があるの?

というわけで、ここからは代表的なもの+個人的に好き・気になるエンボス紙をご紹介します。
先ほど勝手に名付けた「インパクト系」「シンプル系」の分類も、独断と偏見でさせていただきます!

タント

まずはよく見かける、代表的なエンボス紙から。
このnoteでも何度か取り上げているタントです。

何回も出しすぎかなと思いつつ、やはりエンボス紙の代表として外せない…!
どんな柄なのかを言葉で表すのはなかなか難しいのですが…ちいさな凸凹がランダムに入っている感じ?
シンプル系エンボス紙の代表格と言っても過言ではありません。
色数も200色と群を抜いて多いので、書籍・パッケージ・封筒など至るところで見かけることができます。

書籍の見返しに
貼り箱に

レザック66

続いては昔からあるエンボス紙の1つ、レザック66

レザックとはレザーライク(皮のような)の意味で、皮をイメージしたエンボス柄になっています。個人的にはインパクト系に分類したいですね。

ちなみに「66」は発売年の1966年に由来しています。2024年現在、発売から58年も経っている…!私からみると人生の大先輩です。

このレザック66、一定の世代以上の人には馴染みのある紙なんじゃないかと思います。文集や大学のシラバスの表紙などによく使用されていました。

あとは台本の表紙にもよく使われていたみたいで、今でも時々俳優さんのSNSにあがっている台本の表紙をみるとレザック66だったりします。
それを見て私は「あ!66だ!」と密かにテンション上がってます。

今はきっとシラバスもオンラインが多いでしょうし、昔より見かける機会が減っている気がしますね…。
とあるベストセラーの書籍の表紙がレザック66でしたけれど、これももう10年前かー。

もう少ししたら馴染みのある世代が減って、一周回って新鮮に思われるかも!?

ジャガードGA

自分の好きなエンボス紙って何かな…と思ったときに、頭に浮かんできたのがジャガードGAでした。
織物柄でシンプル系のエンボスです。

冒頭で紹介したマステに使われているNTストライプGA、タッセルGA、ギンガムGAのお仲間で、T-EOSというエンボス紙シリーズの一種です。
T-EOSシリーズにはシンプル系からインパクト系まで様々なエンボス柄が用意されています。エンボスする前の元々の紙は同じなんですが、模様が違うと印象が変わるのが面白いですね。

同じシトロン色でも、エンボスが違うと雰囲気が変わる

私の場合、好きな紙の理由は可愛いからなことがほとんどでして。ご多分に漏れずジャガードGAも可愛いと思っているのですが、紙そのままよりもイラストなどを印刷したときに優しい雰囲気になるのが良いなと思っています。

ジャガードGAが使われているフレグランスジェルのラベル。
紙のおかげでイチゴの可愛さが増している気がします


かぐや

かぐやは発売時に「強烈…!」と思ったインパクト系の紙です。
というわけでインパクト系の代表かなと思い、記事を書くにあたって紙を取り寄せてみたんですが…。

なんだろう、見慣れたのかな。以前よりもシンプルに見える…!

月のクレーターを模したエンボスなんですが、じっと見てたら顕微鏡で見た何かの細胞っぽくも思えてきました(個人の感想です)。

この紙は色名が月に関連する名前になっているのが面白くて、左の黄色が「三日月」で、グレーが「たちまち」。

恥ずかしながら「たちまち」を知らなかったので調べてみると、陰暦17日目の月のことだそうです。十五夜よりも月の出が遅く、立って待っていることから立待月たちまちづき と呼ばれているとのこと。
夜のイメージでグレーをたちまちにしたのかな。ちなみにもっと遅い時間にのぼる19日目の月は寝待月ねまちづき と呼ばれ、かぐやではたちまちよりも濃いグレーに「ねまち」と名付けられています。

FAVINI TOKYO

最新のエンボス紙ってどんなのかなと思い、かぐやを取り寄せるついでに一緒に買ってみました。

2023年発売、FAVINI TOKYO(ファヴィーニトーキョー)という紙です。
イタリアのファヴィーニ社から発売されており、現代の東京をイメージした紙だそう。
錆や石、コンクリートなどを思わせるカラーラインナップとのことで、今回ライトグレーを購入してみたのですが、これはコンクリートのイメージなのかな。
イタリアから見た日本ってこんな感じなのか…!
日本人(関西人)の私が見ると、東京というよりは安藤忠雄建築のイメージでした(色に引っ張られ過ぎかもしれませんが)。

本題のエンボスは、シンプル系で硬質な感じ
スタイリッシュで使い勝手が良さそうですね。

ちなみにFAVINI社のホームページを見ると、特種東海製紙とコラボしたと書いてありました。
イタリアがプロデュースして、日本で作った、日本をイメージした紙ということか。
逆があっても面白そうです。

ミリオン

もうすぐバレンタイン!ということで時々バレンタインチョコやお菓子のパッケージで見かける紙をご紹介。なんだか財布みたいで可愛いこの紙は、ミリオンといいます。

パール加工+エンボスでラグジュアリー感たっぷりの紙です。
インパクト系だとは思いますが、個性的すぎない柄なので使いやすいと思います。

こちらはクッキーのギフトボックスです。

ロゴはレインボー箔。紙が華やかなのでリボンを結ぶだけで十分ですね。

ちなみにミリオンはこの柄だけじゃなくて、色々なエンボス柄があります。

ちょっとまだバレンタインチョコ売り場に行けていないので、今年もミリオン使用のパッケージがあるかはわからないのですが、見かけたら「あ!ミリオンだ!」とぜひ愛でてください〜!

…本当はもっともっとたくさんのエンボス紙を紹介したいのですが、文字数がえらいことになるので、一旦ここで打ち止めにします。
でもでも、タントから派生した両面エンボスのタントセレクトも良いし、レザックだってレザック80ツムギとかレザック16とか他にも種類があるし、T-EOSシリーズもジャガードGA以外も可愛いし…ごにょごにょ。
いつか再びエンボス紙の記事を書く日が来るかもしれません。

さいごに

この記事を書こうと思って下書きを作ったのは昨年の10月。なんやかんやあって寝かしまくってるうちに、冒頭のマステで使われていたギンガムGAが非常備銘柄(※)になってるーー!

※非常備銘柄…在庫が置かれていない。一定のロット条件を満たせば別注できる

今後は1枚とかでは買えなくなるんですね…。残念…。
ほらーもう、早く書かないから…(自分への戒め)。

最後は反省になってしまいましたが、少しでもエンボス紙の魅力が伝わっていれば幸いです!皆様も好きなエンボス紙がありましたら、是非教えてくださいね。

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