【マニアックな紙の話】フェルトマークとエンボスの違い
先日、「かにみそバーニャカウダ」なる商品をいただきました。そのパッケージがこちら。
じゃん!
とてもシンプルで紙の風合いを生かしたパッケージデザインですね。使われている紙はマーメイド グレージュ(去年、銀鼠から名前が変わったようです)でした。
マーメイドといえば、さざなみのような繊細な模様が特徴で、発売から60年以上の歴史を誇る特殊紙のスタンダードともいえる紙です。
ご存知の方も多いと思いますが、良く似た紙に五感紙という商品があります。ぱっと見はとても良く似ているので、紙屋さんで営業をしていたときには「マーメイドと五感紙、どちらを選んだらいいの?」と何度か聞かれました。実は、この2つの紙は作り方に根本的な違いがあるんです!
それはフェルトマークとエンボスの違い。
よく似た模様ですが、マーメイドはフェルトマーク、五感紙はエンボスという手法で模様がつけられています。この違いが、それぞれの微妙な個性の違いにつながっています。
そこで今日は、だいぶマニアックになりますが、フェルトマークとエンボスの違いについて書いてみようと思います。
マーメイドと五感紙を見分けられれば、紙マスターに一歩近づく、かも!?
マーメイドの模様はフェルトマーク
まずはマーメイドから。
先述の通り、マーメイドの模様はフェルトマークでつけられています。
少しだけ紙の製造工程について触れておくと、原料であるパルプと水が混ぜ合わさった状態から、水をろ過し、プレスして乾かせば紙ができあがります。(だいぶ端折ってますが)
プレスする際に模様のついた特殊なフェルト(毛布)を使って、乾かしながら模様をつけるのがフェルトマークです。
毛布といっても、寝るときに使うようなふかふかの毛布とは違いますが(笑)、それでも素材としては柔らかいですし、水分がある状態で模様をつけるので仕上がりの風合いも柔らかく感じられます。
五感紙の模様はエンボス
一方、五感紙はエンボス。
エンボスは、模様の彫られた金属ロールを押し付けることで模様がつけられます。
金属=固いので、フェルトマークに比べてしっかりと模様が紙につきます。
エンボスはフェルトマークと同じようにプレスする際に行う場合もありますし、仕上がった紙に後から加工するパターンもあります。
近頃はフェルトマークよりもエンボスの商品の方が多い気がしますね。
使い分けはどうしたらいいのか?
フェルトマークの紙=模様の主張が弱い
エンボスの紙=模様の主張が強い
傾向があるように思います。遠くから見て模様がわかりやすいのはエンボス紙の方です。
つまり、より視覚に訴えかけるのがエンボス、どちらかといえば触覚で楽しむのがフェルトマークと言えるのではないでしょうか。
例を挙げると、
ショーケースの中に陳列されるパッケージなど、少し離れたところから見るものに使う場合は五感紙
すぐ手に取れるように陳列されるパッケージで、紙の主張を抑えたい、柔らかい雰囲気を出したいときはマーメイド
といった感じで使い分けると良いと思います。
あとは自宅のインクジェットプリンタに通したいときは、フェルトマークの紙の方がちょうどいい凸凹なので綺麗に出力できると思いますよ。
冒頭にご紹介した、かにみそバーニャカウダのパッケージはネット販売が主のようなので、柔らかい雰囲気重視でマーメイドを選択されたのかもしれませんね。
紙選びをする際に、フェルトマークとエンボスの違いを知らなくてはいけないということは全くないですけれど、ちょっとした知識があると、選択により深みが出るんじゃないかなあ、なんて思ったりします。
あ、かにみそバーニャカウダはめちゃめちゃ美味しかったです。
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