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紙屋さんに勤めていたわたしがおすすめする活版印刷にぴったりの紙

突然ですが、活版印刷は好きですか?

「好き!」という方、結構いらっしゃるんじゃないでしょうか。私が紙の専門商社に新卒で入社したのが2010年。2年目のころにはもう「活版印刷がブームになっている」と認識していたような気がします。

わたしは関西在住なので関西の話ですすめますが、活版WESTといった活版をテーマにしたイベントも大盛況!デザイナーさんと名刺交換するときも、活版印刷で刷られた名刺をもらうことが結構ありました。

今では名刺やショップカードを印刷するときの選択肢としてすっかり定着した活版印刷。わたしが紙屋時代にもよく「活版印刷に合う紙は何ですか?」と質問いただいていました。

というわけで、今回は元・紙屋さん視点で活版印刷に合う紙をご紹介したいと思います。


活版印刷とは

活版印刷とはもともと活字を組んで、その上にインキをつけて紙に押し当てる凸版印刷です。今は活字ではなく樹脂や金属で版を作ることがほとんどなので、文字に限らずイラストなども手軽に印刷できます。

活版印刷の特徴の1つが、印刷した部分の紙がへこむこと。そのへこみが味わいがあると人気になりました。

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余談ですが、昔は「いかにへこまさずにフラットに印刷するか」が印刷工の腕の見せどころだったそうで、紙がへこんでいる=下手 だったそうですよ。

時代が変わり、オフセット印刷が主流の今はあえて少しへこませることが活版印刷の持ち味に。こうやって時代に合わせてアップデートしながら愛されていくのって素敵ですよね。


活版印刷に合う紙ってどんな紙?

ハンコのように上から圧をかけて印刷するので、基本的にどんな紙でも印刷できますが、一般的にはコットンが配合されている柔らかい紙や非塗工紙(表面に塗料を塗っていない紙)が合うと言われています。

活版印刷をするということは、手触りに重きを置いていると思うので、紙本来の風合いが感じられるコットン紙や非塗工紙が合うというのは理にかなっていますね。へこみを感じたい場合は、やはり少し厚めの紙を選ぶことをおすすめします。

迷ったら「厚め」「柔らかい」「非塗工紙」の紙を選べば失敗は少ないと思います。


活版印刷に合う紙5選

ここからは具体的な商品名でご紹介!わたしが活版印刷をされているデザイナーさんから聞いたり実際の印刷物を見たりして、定番でおすすめできる5種類です。

1.ハーフエア

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活版印刷といえば、の定番の紙。名前の通り、半分空気を含んだ柔らかい触感が特徴です。紙の世界では軽いけど厚みがある紙を「嵩高(かさだか)」と呼ぶのですが、ハーフエアはその嵩高紙。紙の繊維の密度が低いので軽くてふわっとしているのです。その分、印刷部分がキレイにへこみます。紙の色もきなりっぽい白なので、ナチュラル感を出すには最適。


2.特Aクッション

多分活版印刷ではこの紙が一番人気で有名なんじゃないかな?と思うほどよく聞く紙。(写真なくてごめんなさい!)

通常、紙の厚さの単位は「㎏」(紙を1000枚積んだ時の重さ)で表すんですが、この紙は厚みを「㎜」で教えてくれるのでわかりやすい!0.6㎜、0.8㎜、1.0㎜と3種類。その名の通りクッション性が高いので活版印刷との相性は抜群。多分もともとはコースター用の紙なんじゃないかなと思います。


3.グムンドコットン

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ドイツの製紙メーカー、グムンド社のコットン100%の紙。グムンド社のグムンドコットンの見本帳、マジで格好いいんですよね。グムンドコットンに限らず、海外メーカーの見本帳はすごく凝っていてエッジが効いたものが多いです。

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お値段は高いですが、その分やはりとてもキレイに印刷できると活版印刷所の方もおっしゃっていました。コットン100%だと柔らかすぎて角が折れやすい紙もあるのですが、グムンドコットンはほどよくコシもあるので、名刺にもぴったりです。

日本発売時の7、8年前からご使用いただいている桜ノ宮 活版倉庫 小瀬さんによると、最も厚い420㎏の質感が1番良いとのこと!ご自身の名刺にも使っていただいています。


4.GAファイル

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上3つは柔らかい紙でしたが、GAファイルは固い!固いからこその武骨な感じが個人的には結構好きです。色展開も武骨!900㎏にいたっては厚み1㎜以上です。


5.スノーブルーFS

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非塗工紙の方が活版印刷に向いている、と言いましたが塗工紙にもメリットが。それはインキの発色がいいということ。

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スノーブルは微塗工(少しだけ塗工している)なので、非塗工紙に比べてスミもより締まった黒が印刷できます。

あと紙の色が高白色なので、「真っ白」の厚い紙を使いたい場合もおすすめです。お値段もそんなに高くないですしね。


紙を指定するには

基本的にはお願いする活版印刷所さんに紙の名前を言えば、その紙を仕入れて印刷してくれます。

ネットで依頼するよりは実際にお店を構えているところに行くほうがおすすめですね。紙の相談にものってくれますし、たいていハイデルの活版印刷機が置いてあって、それを見るだけでテンションが上がるので!!

さいごに、5種類挙げておいてなんですが、基本的には好きな紙を使えばいいんです!紙の選択肢が他の印刷よりも幅広い懐の深さも、活版印刷の魅力の1つだと思います。

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