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発酵教育論①:発酵食品から見るリーダー像

発酵は哲学だと思っている私。生き方を教えてくれる〈発酵〉を教育的視点から考えてみるシリーズ第1話。
(プロローグはこちら↓)

発酵食品は保存の歴史

発酵食品は冷蔵庫のなかった時代に生まれた「食品を長く保存させるための知恵」。長く保存するためには、雑菌の繁殖を抑えることが必要で、そのための方法は、①塩漬けする、②酸の力で抑える、③拮抗作用を働かせる、などがある。

①塩漬け
味噌でも醤油でも、ほとんどの発酵食品は塩を使う。これは、塩の殺菌効果や脱水効果によって雑菌の繁殖を抑えている。

②酸の力
酢漬け(ピクルスなど)にしたり、乳酸発酵(キムチやヨーグルトなど)させたりすると食品は長持ちする。これは、酸に雑菌を抑制する効果があるので、酸のバリアによって雑菌が繁殖しにくくなるということ。

③拮抗作用
拮抗(きっこう)作用とは、「ある現象に対して反対の作用をもつ要因が互いに対抗して働くこと。血液中における糖の増減を調節するアドレナリンとインシュリンの作用など。対抗作用。(コトバンク)」。

発酵食品の世界で言えば、食品に腐敗菌(悪玉菌)が増える前に発酵菌(善玉菌)を増やすことで食品を長持ちさせるということになる。

リーダーの役割は「場づくり」

塩でも酸でも拮抗作用でも、発酵食品を作るうえで私たち人間がやる事は、

「悪玉菌を押さえながら、善玉菌たちが棲み良い環境を整える」

だけ。味噌づくりで言えば、

・容器を消毒する
・寒い時期に仕込む
・塩と麹を大豆とよく混ぜる

とか、そーゆーこと。

私がどんなにがんばっても、勉強しても、愛しても、大豆を味噌にする事はできない。日本酒蔵の杜氏さんだって、寝ても覚めても日本酒の事を考えて動いているけど、お米を日本酒にする事はできない。

大豆を味噌にするのも、お米をお酒にするのも、善玉菌たちの働きによる。

蔵を回ると何度かこういう言葉を聞く。

「私たちは味噌(や醤油やお酒)を作っているんじゃない。菌たちの声を聞いて、いかに働いてもらうか、その環境を整えているだけなんだよね。」と。

菌が心地よく働く「場づくり」をするのが私たちの仕事。
これは、何かコトをなすべき時、仲間たちが働きやすいように環境を整えるのがリーダーの役割だということを教えてくれる。

目標を達成するためには周りを応援する

仲間を応援する

「場づくり」ととてもよく似ているけれど、もう一つの心持として学ぶのは、「仲間を応援する」ということ。

何か達成したい目標があった時、なりふり構わずに自分のことだけを考えて行動するのではなく、一緒に作り上げていく仲間達(発酵食品の場合は菌たち)がやりたいこと、得意なことを応援していくことが大切。

麹づくりで言えば、麹菌が暑かったら冷ましてあげる、繁殖しやすいように温めてあげるなどのお世話が約3日間必要。その間、旅行で家を空けることができない。急なお誘いもお断りしないといけない。自分がやりたいことよりも、麹菌第一主義!にならないと米麹は上手にできない。

「米麹がほしい」という最終目標のためには、麹菌たちを応援し続けないとね。

悪玉菌を殺すより善玉菌を増やそ!

塩や酸で悪玉菌を殺す=気に入らない仲間を排除する、という方法ももちろんある。時には必要だと思う。ただ、意識のベクトルとして「排除」よりも「活かす(=善玉菌を増やす)」ことを考えていた方が楽しい。

だから、一緒に働いてくれる仲間(善玉菌)たちを増やして、好きと得意で補い合っていけば、どんなことでも達成できるよね。

物事を推進するリーダーの形は多々あって、どれが間違いとか正解は無いと思う。ただ、私が発酵食品を通して感じるリーダー像は、

仲間の好きや得意・性格を把握し、彼らが喜んで動けるような場を作りながら目標に向かって進める人

かな。

このシリーズはたぶん、こんな感じで進みます。

0.プロローグ(記事を読む
1. 発酵食品から見るリーダー像
2. 日和見菌と日本人
3. 菌のバトンタッチ
4. 悪玉菌ごめんなさい
5.杉桶はペイフォワード


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