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推しが生まれた日の天気を知っているか ~新たな推し活の提案~
皆さん、こんにちは。
「さとかな」こと佐藤可奈子と申します。
ふだんは気象予報士として働く、O脚のアラサーです。
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突然ですが、皆さんは「推し活」していますか?
推し活とは
自分にとってイチオシの存在「推し」に、情熱を注ぐ活動のことを指します。
その活動内容は多岐オブ多岐。
イベントに行ったりグッズを買ったりはもちろんのこと、二次創作やSNSのチェック、DVDや写真集の鑑賞会、聖地巡礼。さらには、推しのイメージカラーで私物を統一する、壁には推しの身長と同じ高さにマスキングテープを貼るetc…
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大事なのはそう「推しを感じる」ということではないでしょうか。ね、絶対そうですよね。
そこで私は新しい「推し活」を考えました!
それは
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推しが生まれた日、それはファンにとって最もかけがえのない日でしょう。
ただ、その推しがどんな空のもとに生まれたのか、ご存知ですか?じりじりと肌を焼く炎暑だったのか、それとも爽やかな風が吹き抜けていたのか……。推しがこの世に生を受けし日の天気を知れば、より推しに思い馳せ、より深い推し活ができそうではありませんか。
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それでは早速!
国民の推しとも言える、こちらの方の生誕天気を調べてみようと思います。
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メジャーリーガー大谷翔平選手です。
大谷選手が生まれた日の天気を調べる
大谷翔平
生年月日:1994年7月5日
出身地:岩手県水沢市(現 奥州市)
さぁ、彼はこの日、どんな空のもとにお生まれになったのでしょうか。
※大谷選手が生まれた病院も同じ奥州市とは限らないことは重々承知しておりますが、そこはご容赦ください。
ここからは私も、大谷ファンの魂を降臨させてお届けしようと思います。
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まずは天気図を見てみよう
1994年7月5日午前9時の実況天気図がこちらです。
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原典:気象庁「天気図」、加工:国立情報学研究所「デジタル台風
おっと、いきなりこれだけ見せられても、早口のオタクに会った時のような気持ちになってしまいそうですね。
こちらは専門天気図なので、ふだんの天気予報で目にするものより情報量が多くごちゃごちゃしています。白黒なのはFAX送信を想定されているからです。では、わかりやすいところから紐解いていきます。
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日本列島に梅雨前線が伸びています。おそらく東北地方は梅雨の真っ只中。大谷選手が生まれた岩手県にも前線がかかっているように見えますね……。
これは、かりそめファンの個人的な見解ですが、
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大谷選手に梅雨前線は似合わない……!彼自身が常にチームの最前線にいて太陽のような存在なのだから。
反対に、前線の南側は太平洋高気圧に覆われ、晴れて暑かったものと思われます。
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その証拠に、この日は群馬県神流(かんな)で最高気温38.7℃、静岡県川根本町で38.6℃など、これまでの観測史上もっとも高温になった場所がありました。(川根本町の高温記録は2001年に更新されています。)
でも……
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大谷選手には猛暑も似合わない!!!!(あくまで個人的な見解です)
どうかちょうど間をとった天気であってくれ~~~~!!!!
もっと細かく解析してみた
まだまだこの日の天気はざっくりとしか見えていません。推し活に落としこむのはここからです。
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専門天気図をよ~~く見ると、あちこちに棒人間みたいなのが書かれています。これは、◯の中に雲の量、棒に風向きや風の強さ、その周辺には気温や気圧変化、雲の種類などが書かれていて、気象観測データの宝庫なんです。
早速、大谷選手の出身地である岩手県奥州市に近い、盛岡と仙台の棒人間を見比べてみましょう。
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解像度の低さと梅雨前線が邪魔でほとんど読めません。
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しかし、ここで諦めるわけにはいきません。
気象庁ホームページからダウンロードした仙台と盛岡の観測データを元に、それぞれの市内の上空はこんな感じの空だったと推測しました。
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梅雨前線の南側にあたる仙台市内は晴れ(ただし雲量8と多め、わた雲メイン)。
一方、盛岡市内は雨。海風も吹いてもちろん日照時間は0、低く暗い雲に覆われていたと思われます。
この2地点に挟まれた大谷選手の出身地・奥州市は、空模様もあいだをとった感じと言えそうですが、推し活するにはもう少しイメージを膨らませたいですね。
奥州市にフォーカスする
さて、今度は気象庁のホームページから、1994年7月5日の岩手県奥州市の観測データを確認しました。奥州市には江刺(えさし)という地点にアメダスが設置されているのでそこのデータです。
盛岡市内は雨でしたが、江刺は……
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あ~夕方に雨が降ってますね。天気図を見ても、朝から夜にかけて梅雨前線が南下しているのがわかります。
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梅雨の真っ只中ですし、1日どんよりとした空模様だったのかもしれません。
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ここで、私はあることに気が付きました。
謎の暑さ
この日の江刺の最高気温は29.0℃、平年より2℃ほど高く真夏並みでした。1日中くもりや雨ならここまで気温は上がらない気がします。
そこで日照時間を確認したところ、
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わずかですが、午前中は日が射していました!(合計0.7時間=42分)
ず~~っとニコニコなわけじゃないけど、ふとした瞬間に見せるこのくらいの明るさが、いいじゃない(あくまで個人的な感想です)。
この時間に見上げた空はこんな感じだったかもしれません。
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ああ、ね。っぽい。
ただ、まだ疑問は残ります。こんな短時間の日差しで29℃まで気温が上がるものでしょうか。
「どこにそんなエネルギーが?」
大谷選手の活躍を見て抱く疑問と、同じですね。
この暑さは日差し以外にもなにか秘密があるはずです!そう簡単には素顔を明かしてくれない感じも推し甲斐があるというものです。
その原因は
日差しが控えめでも気温が上がる要因の1つに、風があります。
この日、江刺でもっとも強い風が吹いたのは午前11時、西風でした。
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そして、最高気温29℃を観測したのも…
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同じ午前11時なんです。
これは偶然ではなく、フェーン現象と呼ばれるもの。簡単に言うと、風が山を吹き下りながら乾いた熱風になるという現象です。この日、観測史上もっとも高温になった群馬県神流(かんな)や静岡県川根本町でも同じ現象が起きていたものと思われます。
きっと奥州市でも、奥羽山脈を越えた西風がフェーンを起こして、午前11時頃にほんの一瞬だけ気温が上がったのでしょう。
その瞬発力、アメイジング。
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まとめ
これまでのことを総括すると、大谷翔平選手が生まれた1994年7月5日の岩手県奥州市は
・梅雨の真っ只中にも関わらず、控えめな日差しが届いた(かっこいい!)
・ドライな西風によって気温は平年以上に上昇(かっこいい!)
・しかし午後はサッと通り雨があり、暑さは長引かず(かっこいい!)
つまり、晴れと雨の二刀流、暑さと涼しさの二刀流。情熱と冷静さを兼ね備えた大谷翔平選手らしい1日だったと受け取れます。もちろん偶然とこじつけですが、大谷選手推しの方は是非そこに何らかの因果を感じて「ほう……」と淡いため息をついてみてください。
いかがでしょう。推しの生誕天気を知るというのもまた一興、新たな推し活に役立てられそうではないでしょうか。その時もし気象予報士を頼りたいという人がいたら、この私を推しておいてくださいね。ちなみに私が生まれた日は平年より10℃も気温が低くて雨が降るのか降らないのかハッキリしない日でした。
それではまた!
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