考察しなくていいサスペンスドラマ「天国と地獄~サイコな2人~」
たいていの「サスペンスドラマ」は、「犯人は誰?」「トリックは?」「あそこのあれは、実は伏線なのでは?」と、考察ツイートが忙しく、トレンド入りもして盛り上がる…というのがお決まりのヒットコースみたいになってる気がするんですが、この「天国と地獄」は、考察する必要を感じない。
というか、見ている間に考察なんてするひまがない。
そのくらい、ぎゅーぎゅーに「おもしろい」がつめこまれてる。「サスペンスドラマ」と書いたけど、実際は「ラブ」もあり「コメディ」もあり、「SF」でもあり、「ファンタジー」でもあり…。
謎をいちいち分析するよりも、このぎゅーぎゅーさに頭から足先まで全部飲み込まれて、ぐるぐるとかき回されていたい。その方が楽しい。
なので、これは考察じゃなくて、ただのファンの「ここが好きだよ天国と地獄」という感想文です。
どうしようもない運命を、自助でなんとかしろなんて言わないで
今期は私の気持ちにフィットするいいドラマが多くて、なかなか全部をリアタイできずに録画を追いかけて見ています。
共通しているように思えるのが、
「本人にはどうしようもないことで運命が決められることと、それを肯定するような世間の流れへの怒り」
というテーマがあること。
このドラマも、「俺の家の話」も「その女、ジルバ」も、親の貧困、認知症などの介護、非正規雇用、兄弟間での扱いの違い、男女の差の話など、本人にはどうにもできないことがあり、その苦しみを自助でなんとかしろと個人に押し付けることの理不尽さを描いている。
これだけ重なったのはつまり、今の日本がそうなってる、ということでもある。これが日常。
それをきちんと描き、なおかつエンタメにしている、そういうところが好きです。
「魂が入れ替わる2人」を納得させる匠の技
「階段から転げ落ちたら、刑事と容疑者の心がいれかわっていた」という荒唐無稽な話を、卓越した演技力をもって力づくで成立させてしまう綾瀬はるかさんと高橋一生さんに、ずっと驚嘆させられている。
本来の日高と、望月が中に入った日高。望月と、日高が入った望月。
いちいち説明されなくても(最初は2人のクセでわかったけど、途中からそんなのなくても)はっきりと違いがわかる。目つき、声のトーン、歩き方。どうしてこんなに互いに似せることができているのか…。
日高が入った望月は、妖艶でおそろしい。
そうか、綾瀬はるかさんって美人だったんだ、と思い出せるくらいに美しい…綾瀬さんはアクションやコメディを多く演じていて、自らの美しさを抑えているような印象があったけど、そのリミットを外すとこんなに美しくなれるのか、と思い知らされました。ドレスアップ、すてきだったー。
望月が入った日高は、勝気でキュート。
「もお、やだー!」と叫んだり、ばれそうになると「てへ」とごまかしてる姿のかわいらしさに、なんどテレビの前でもだえたことか。かっこいいのにかわいいという、高橋一生さんの沼がまたひとつ地上に生まれた気がする。
あと、男女の入れ替わりモノでいつも気になる性的な話がほぼなかったの、ありがたかった。体の違いによる困ったことは描写されたけど、わざわざ胸を触るとかそういうのはなくて、それよりも「女の人、たいへんですね」「いや、男の人もたいへんだよー」などの、「男女どっちもたいへん」なことをお互い認め合うのが、よかった。
とはいえ、陸くんとあんなこといたしたり、陸くんがくずれおちるほどのすごいキスをかましたりする(口移しで薬でも盛られたのかと思ったよ)日高、それはなんなの日高、気になるぞ日高。
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最終回前、とうとう2人の入れ替わりが終わって元に戻ったけど、もう彼らは「元どおり」ではない。
初回の望月は、手柄をあせって失敗し、犯人は私が捕まえるんだから大事な情報は誰にも渡さないという、「べきべき」と正義には熱いけれど、自分のことしか考えてない刑事だった。
けれど入れ替わりが起こり、彼女の中に日高の持っていた「人を思う気持ち」のかけらのようなものが残った。
日高も、兄を思うあまり正義を捨てて犯罪を重ねることになったけれど、彼の中に望月の「正義への熱い思い」がきっちりと残った。
相手の中に自分のかけらを残すことで、2人はよりよい人となった。欠けていた月が満ちるように。最終回はどんなふうに、何と戦うことになるんだろう。
地獄には、誰がいくの?
高橋一生さんと綾瀬はるかさんのいいところ全部載せ
前段でも書いたけど、とにかくふたりがすばらしい。
あの美しさで腹筋が割れている綾瀬はるかさんの、アクションもできるしコメディもシリアスもできるという実力を、全部見せてくれる脚本。
狂っていてかっこよくてかわいくて、不憫な目にあえばあうほど愛おしくなる高橋一生さんの愛され加減を、全部出させる脚本。
ありがとう森下佳子さんありがとう。
このドラマにハマった人、「おんな城主直虎」も見てね。
考察はいらないけど気になるの
φは東朔也でした、彼が一連の事件の殺人犯です…
で、ほんとに合ってるんだろうか。
「考察はいらない」って言っておいてアレですが、最終回前、結構「謎」が残ってるんですよね…。
あの陸くんや仲間のみんなに愛される優しい「師匠」が、あそこまで残虐な殺人を繰り返すというのは、どうにも違和感がある。
私が気になってるのは、アパートで自殺したという「暗闇の清掃人」というマンガの原作者、「φ=クウシュウゴウ」を名乗っていた、免許証の写真だけの存在「十和田元」。
…ほんとに、死んでるんでしょうか。田口浩正さんが、写真しか出演しないなんてこと、あるかなあ?
「ミスターX」が、いるんじゃないかなどこかに。
製作陣にだまされてもかまわない、むしろだまされたい。
最終回、思いっきりだましてほしい。
最後の最後まで生き残ってくれるよね、八巻と陸くん
こわいよー、とふるえながらも見続けることができたのは、この2人のおかげかもしれない。ポンコツな八巻と、「彩子ちゃーん」とおいしいごはんを作ってくれる陸。
前回まではなんとか2人とも(すごくギリギリなところにいたようにも思うけど)生き延びてくれたので、どうか最後まで無事で、ほのぼのさせてほしい。
まさかのまさかでこのどちらかがミスターXでしたとかは、かんべんして。泣いちゃう。
さて、今夜最終回、やっぱり考察とかほんとどうでもいいの、ただひたすらたのしみー!
ぎゅーぎゅーにいろんな要素が詰まったドラマ、でも結局は「ヒューマンドラマ」となる気がします。
さて、あと一時間!
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