おっさんずラブin the skyと、恋の呪い。
5話まで見た感想です。ではどうぞ。
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恋して楽しくてしあわせです、という人は、恋している人のうちどのくらいの割合なんだろう。
恋して苦しくてつらいです、って人の方が、実はずっと多いんじゃないだろうか。
春田とデートしているひなちゃんのお洋服もメイクも、仕事モードのジャケット姿とは全然違って、キュートでセクシーでかわいかった。好きな人とデートができる喜びでいっぱいで、鏡の前で取っ替え引っ替えしてあの服を選び、丁寧にアイメイクするひなちゃんのデートまでの準備時間まで透けて見えた。
でも、デート当日、ひなちゃんがどんな格好をしてるかなんて春田は気づいてもいない。成瀬くんには即返すのに、開いてももらえないまま溜まったひなちゃんからのラインのメッセージ。宙に浮く、差し出した左手。
「あの子」じゃない私は、どんなにかわいくしてもどんなに言葉を贈っても、好きになってはもらえない。そのことを突きつけるデートシーンは、ほんとうに、残酷だった。
「その優しさに、私は傷つきました」
そう、恋は、自分が傷つくかもしれないし、他の人を傷つけるかもしれない、おそろしい呪い。
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5話までで主要メンバーがみんな「好き」と相手に告げた中(その告げ方が全部しんどくてたいへんなわけですが)、ひとりだけ沈黙しているのが成瀬くん。
彼の中に「好き」という感情がうまく作られてない気がするんですよ。
生育環境があまりよくなかったことと、あの美貌でたくさんの人に言い寄られてきたこととが重なって「自分は愛されない」「人は信用できない」「みんな僕の見た目が好きなだけでしょ、はいはいどうぞ僕のからだを勝手にお使いください」的な、とてつもなくねじれたコンプレックスのかたまりになっちゃってないかなあ、あの人。
「好き」「愛する」「愛される」ことを理解しないまま、からだだけ大きくなった、ニンジンも食べられない、子ども。
そんな彼のところに、あの、春田が飛び込んできた。人との関わり合いをさける成瀬くんを、「ほっとけない」とやたらかまいたがる、まっすぐな春田。
告白のときも、ひとことも、成瀬くんの見た目については言わないんですよね。かわいくないしグラタン食うし、と。でも好きみたいなんだ、と。
今まで言い寄ってきた人たちとは全然違う人。コンプレックスのかたまりの、ダメな中身ごと自分を好きになってくれた人。そんな春田に、成瀬くんの気持ちが揺れないはずがない。
…でもこの人、シノさんの想いびとなんだよね。
あの笑顔、姿を目で追う様子。あれらを見てたら成瀬くんはシノさんが好きだとしか思えないんだけど…愛されない子どものまま成長し、愛を理解できていないであろう彼が、自分の気持ちを「好き」という言葉で自覚してるかどうかはわからない。たぶん「シノさんにはいつも笑っていてほしい」とか、そんなぼんやりした感覚なのかなあと。だからおかかおにぎりをたくさん持って行くし、整備の勉強もして仕事の手伝いもしたいし、春田に告白できない様子をみてイライラしちゃうし。そして思わず「好きってことだよ!」と勝手に彼の秘密を叫んでしまい、その瞬間後悔して自己嫌悪する。
そんな成瀬くんが、春田に惹かれる部分はあったとしても、シノさんが泣くことを知っていて春田とつきあうこと、できるだろうか。
それは「…ダメです」だよね…。
きちんと計画して、相手がよろこぶことだけをして、誰も傷つけず、つらい思いをしないように、自分を好きになってくれる相手を好きになって。
どうしてそんなふうにできないんでしょうね、恋って。
ひなちゃんも、成瀬くんも、シノさんも。みんなつらい。
なんだよシノさん、一週間お試しって。春田との思い出づくりして諦めるつもりにしか見えないよ。そんなの悲しすぎるよ。どうしていつも、諦めるところから始めちゃうの。
黒澤キャプテンだってつらい。「好きになった人を嫌いになんかなれないよ」と泣くところで、私も泣いてしまった。そうだよね、嫌いになれたら楽なのに、そうはできない。
「俺じゃダメか」なんて聞いてしまった春田、むちゃくちゃつらい。それを聞いた時点で、「俺じゃない誰か」がいることを認めてしまってる。自分を誰かの代替品として差し出したようになってる。それがわかっていても、自分を見てくれと言わずにはいられない。あんなひどいキスしかできない。つらい。
みんな恋の呪いの渦の中でぐるぐる回ってる。自分の意思ではこの渦から出られない。これは呪いだから。
なんてやっかいなんだ、恋は。
それでも最後にみんなが「恋して楽しくてしあわせです」って言ってくれることを、祈らずにはいられない。「あなたに会えてよかった」と言ってくれる最終回を、待ってます。
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今回のおっさんずラブ、始まる前の番宣で私が見た範囲では、どの番組でも今までのような「男同士が!」とか、おっさんというワードで笑いをとるとか、そういうのが一切なかった。以前はそういう、おっさんずイジリみたいなのに、ちょっとずつ傷ついていた気がする。みんなの顔を見られるのはうれしいけど、ちょっとだけ悲しかった。
でも今回はどの番宣もただ、おもしろいドラマ始まりますよ、だけで、誰もイジらなかった。笑わなかった。春田と成瀬くんの最初のキスシーンをばんばん見せつつ、でも誰も変なこと言わなかった。
OLの恋愛においては、男女間の差がない。今の所恋愛に絡んでいる女子はひなちゃんだけだけど、春田への恋においてはシノさんと対等なライバルで、それが物語上全然違和感がない。
むずかしいことはよくわかんないけど、流れ、のようなものをぼんやり感じてます。誰かが流れをつくっている。その、今までになかった流れをつくりだす人たちの挑戦を、応援したい。
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…で、この恋の呪いの渦ど真ん中に新キャラの獅子丸さんを投入って、正気ですか? どこまで見てるこっちの気持ちをかき乱す気なのか、毎回しっかり締めてるはずのシートベルトがいつのまにかブチ切れて窓を突き破り成層圏まで飛んでからパラシュートでギリギリ生還くらいの衝撃を受けてるんですけど?
もういいや残りあと3回(たったの3回!?)ここまできたらもうとことん飛ばしてもらおうじゃないのさ、と覚悟を決めました。宇宙までいっしょに行くよ。
ではまた、2315に。