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④わが子がダウン症だった(胃腸壊滅編)

夕方、子どもたちを保育園へ迎えに行った。
車の中で二人に伝える大ニュース。

「なんと、今日は...お母さんが帰ってきましたー!」

「やったあーーーーー!イェーイイェーイ!」
四歳の長男は大はしゃぎ。
二歳の次男も「おかぁしゃん?いるの?」とニコニコしている。

一週間ほどの入院期間、二人ともよく頑張ってくれた。私も子どもたちがいたから頑張れたと思う。

そして、妻と子どもたちは涙涙の再会を果たした。
泣いていたのは妻だけだったが。
あとは、入院中の三男が無事に退院できれば、新しい日々が始まる。

私の気分は爽快としていた。
悩みがないといえば嘘になるが、妻も退院し、覚悟も決まり、心に余裕がうまれていた。

エビやザリガニは水質が変化すると、ストレスによって脱皮するらしいが、私の精神も同じ理屈で脱皮を果たしたような気がした。

ひとまわり大きく、たくましく、強くなった、はずだった。

妻の退院から数日後、私の身体に異変が起こった。
友人から突然ビデオ電話がかかってきたのがきっかけだった。

「久しぶりー!今飲んでんねーん。ほらー、メンバー見てー!お前も来れたらよかったなー」

学生時代の友人達だった。
私が田舎に帰ったのと、コロナの影響でここ数年は酒を酌み交わしていない。

それでも、たまに連絡をとって、お互いに何となく近況は分かっている。

「そういえば、そろそろ3人目生まれるころやっけ?」

「おー、そうそう、つい数日前に生まれたよ。でも、生まれてすぐに入院したんやわ」

「え!そうなん?大丈夫なんか?心配やなー。」

私はここでダウン症のことを言うか迷った。しかし、隠したところでいずれ分かること。気心知れた仲間でもあるし、打ち明けることにした。

「実はダウン症って診断されてなー。命に別状はないけど、身体ちっさいし、色々検査もあるみたいで入院ってことなんや。」

「そうかぁ...ほんまかあ...」

なんともいえない空気になったのが分かった。
せっかくの酒宴に水を差してしまい、バツの悪い思いがした。

そのときから、鉛のかたまりでも飲み込んだみたいに、胃のあたりがズンと重だるくなった。
話すにつれて、痛みも出てきた。

私は子どもを寝かすからと言って、挨拶もそこそこに電話を切った。

突然の不調だった。すぐにおさまるだろうと、子どもと一緒に布団に入ったが症状は悪化していく。

ついには吐き気も催すレベルに至った。

これは...なんだ...

悪いものを食べた記憶はない。
熱中症とも症状は違う。
心霊スポットで呪われたりもしてない、多分。

もしや、無意識下でのストレス?

私は脱皮して強くなったはずだった。
悩ましい時間を超えて、はつらつとしていた。
食欲も戻り、トレーニングもしていたくらいだ。
だから、ちょっとやそっとじゃ挫けることはないはずなのだ。

それが、一体どうしてこうなったのか。

自己分析した結果、潜在的にダウン症を打ち明けることを恐れているのではないかと考えた。
認知していなかったステルスストレスだ。

息子がダウン症と知って、自分自身が複雑な思いを抱いたように、打ち明けた相手も何かしらの衝動を受けるだろう。
その表情や空気を避けたかったのではなかろうか。

「どうせ後で分かること」と一応合理的な判断から友人に打ち明けたが、心には予期せぬ負荷がかかっていたのだ。

ステルスストレス。
こんなどこぞの漫才コンビみたいなやつにやられるとは、不覚だった。
でも、韻踏んでて言いたくなる言葉だなって思う。

オレンジレンジとかハンプティダンプティとか、
パンダコパンダとかサマンサタバサとか、そういう類の語感があって悪くないと思う。

そんなことはどうでもいい。

このステルスストレスによって、私の胃腸は丸一日壊滅した。
嘔吐こそしなかったものの、ことあるごとに胃は痛むし、何度も腹を下した。

でも、一日経って、とりあえず「逃げる」ことに決めて落ち着いた。
面と向かって誰かに打ち明けることはやめることにしたのだ。

相手も突然聞かされると、どう反応していいものか分からなくなって当然だ。
身近な人で、いずれ知ることになるという人には「今はちょっと入院してるんですよ」程度に留めることにした。

少しずつ知ってもらった方が相手にとっても優しいだろう。

友人知人には、インスタでこのnoteを紹介しているので、いちいち反応を見ずに認知してもらえる。SNSの良いところだ。
これに関してはステルスストレスは反応していないので大丈夫らしい。

また一つ、心の勉強ができた。

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次回は息子の諸々の検査結果を面談で聞いてから書くつもりです。
他にも書きたいテーマはあるので、短めで何か書きたいと思います。

ちなみにエビ、ザリガニは脱皮したてが一番弱いので、私もそのタイミングだったからやられたのかもしれません。

読んでいただきありがとうございました。

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