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片付けはLove Phantomを口ずさみながら(2/2)

おおかた不要な物は処分した。

狭いわが家ではあるが、物が減るだけで部屋がスッキリする。
三男をお迎えできるよう、心機一転だ。

さて、次は収納力の底上げにとりかかる。
目指すは2倍の収納力と、見た目の美しさ。

一家の大黒柱として、父として、男として、きっちりと仕事(DIY)を果たさなければならない。

まずは、今あるカラーボックスを撤去し、新たに棚を据え付ける。

ところで、カラーボックスというのは便利なようで意外と収納力は高くない。
幅はまぁ及第点だか、問題は高さだ。

私は声を大にして言いたい。
なぜA4サイズの縦置きができないのかと。

一般的な安っすいカラーボックスはA4が縦置きできない規格になっている。
しかし、世の中はA4サイズで溢れ返っている。

仕事の資料もそう。
保育園からのお手紙もそう。
地域のお知らせもそう。
雑誌もA4が多い。
絵本なんかもっとでかいの沢山あるし。

入ってほしいのに入らなかった悔しさ、どれだけ多くの人が体験しただろうか。
一人一人の悔しさは僅かかもしれないけれど、みんなの思いを集めると結構強い呪霊ができると思う。(呪術廻戦参照)

「B5なら入るじゃないかーっ!」

はい。国会の野次みたいな感じで私の脳に異議申し立てが入ってきましたよ。

そう。入る。
でも、B5ってなんでしょう?
パッと思い付くのは大学ノート。
けれど、カラーボックスの1マスを埋める程の冊数使いますか?

「本も合わせて入れたらいいだろーっ!」
また野次だ。

本だと上に余白がありすぎる。
それが文庫本や新書ならより際立つ。

私はデザイナーの端くれであるから、余白の大切さは重々承知している。しかし、カラーボックスの余白は別の話だ。

「少年ジャンプはどうなんだーっ!」

だからね!少年ジャンプなんか!
ジャンプなんか...B5だ。

学生時代はジャンプ買ってたよな。
しかも、カラーボックスにぴったりなんだわ。
毎週1冊買うから、カラーボックスなんかすぐ埋まっちまうんだよな。

ノートや教科書よりジャンプで埋め尽くされてさ、溢れたやつボックスの横に積んでいくんだよ。
まとめて廃品回収に出すときに、何故か読み返して「早くしなくちゃ!」って焦ったりさ。

読み始めたのは、ワンピース、ナルト、HUNTER×HUNTER、その辺の連載が始まった頃だったかな。
コロコロコミックは卒業して、ジャンプに入学したんだよな。
そんで、ジャンプと一緒に成長してさ、大人になってんのにいつまで少年ジャンプ読んでんだよってさ...

そっか。
カラーボックスってのは少年少女のためにあるのかもしれないな。

私が間違っていたんだ。
それに、本当のところは、A4が入らなくても適材適所で使ってきた。実はそんなに困ってない。

ちょっと都合が悪くなったからといってカラーボックスを貶すようなマネをして申し訳なく思えてきた。

ごめん、カラーボックス。
こんな不毛な話で目の敵にされるなんて、つらいよな。

そういうわけで、カラーボックスを撤去した。

移動してみて分かったことがある。
人は知らない方が幸せなことがあるということだ。

ボックスの下は埃まみれ。
それだけならいいが、二体のGの亡骸が横たわっていた。

この家に来てから、G対策は大げさと思えるほどにやってきた。
住み始めは何度か見ることがあった。妻が青ざめて私に駆除を依頼してきたが、ここ2年ほどは全然ない。

しかし、奴らは暗躍していたらしい。
見えないところで、知らないところで、私たち家族を嘲り笑うように、寝首をかこうとしていた。

知らないから笑っていられた。

そういえば、前に知り合いのおっさんが言っていた。

「ウイルスや菌が肉眼で見えるようになったら、人間は今みたいに生きていけない。見えない、知らないからやっていけるんだ」

ちなみにこれはコロナ禍前の発言だ。

コロナ禍になって、ウイルスは目に見えないものの、感染状況が可視化されるだけで社会機能は滞った。

おっさんの慧眼すごい。今度あったらコーヒー差し入れしよう。

人は知りたがる生き物だと思う。
知らないことはこわいのだ。
けれど、知らないというのは無神経でいられることでもある。
知れば知るほど生きづらさに繋がるのかもしれない。

そんなことを思いながら、棚を完成させたのだった。

家が綺麗になった。
家族からは英雄のようにまつりあげられた。
秘密裏にGを片付け、それを知らないままに家族は笑う。

私だけが真実を知る。
明日からより一層のG対策に取り組む。
知ってしまった者の宿命として。

LovePhantomの締めくくりにこうある。

“幻をいつも愛してる 何もわからずに”

「安心安全、自分たちは大丈夫」という幻を私たちは見ているにすぎない。
そうであってほしいという平穏を愛しながら、残酷な現実を知らないで生きているのだ。

んー...
タイトルに「LovePhantom」入れちゃったのでなんとか回収しようとしたけど、無理矢理過ぎてしっくりこない。

こんな駄文、いらない全部捨ててしまおう。

〈完〉



棚をつくる過程を書きたかったのになんでこうなったんだろう。

読んでいただきありがとうございました♪

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