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HSPという言葉の問題(その2)

基本的にはHSPという言葉を雑に使いすぎであるという指摘。
その1は以下のリンクから

高い責任感と倫理観が求められる
生死に関わる言葉である

 前回書いたように、HSPという概念はADHD/ASDやうつや双極性障害や社交不安障害などの患者含んでいる概念である。当たり前であるが、HSPがこれらの精神疾患を含んでいる限りは、HSPが云々と表立って言うときに
必ずこれら精神疾患の扱いについて不適切なことを流布してはならないという責任が生じる。生死に関わるからだ。
 これら障害をはじめHSP該当者に対して色々とためになることを言いたくなるのは分かるのだが、実は精神科医でもなかなか苦労するほどに臨床上これらの扱いは難しいのである。例えばうつ病患者に対してはSSRI(いわゆる抗うつ剤)を処方するのが一般的であるが、まずもって双極性障害のうつ状態とうつ病を区別するのが難しい。ここで誤って双極性障害の患者にSSRIを処方してしまうと、躁転による自殺リスクが高まるのだ。また躁転というのもなかなか厄介で、本人も、周囲の人も実はなかなか気づきにくい。またうつ病一つ取ってみても難しい。時期によって患者の振る舞いが全く変わるもので、そもそも一切動けないので休ませておかなくてはならない時期もあったり、妙に活動的になって、放置したら自殺することもある。
別に一銭ももらっていないが、ADHD/ASD、及び二次障害としてのうつ病当事者としてぜひ社会全体に共有されて欲しい内容であるので、この際早稲田メンタルクリニックの益田先生の動画を紹介しておきたい。
 なお先程書いたSSRIの躁転のリスクについては益田先生の動画を参考にしている。

HSP一律のアドバイスは意味がないばかりか
無責任に患者の人生を弄ぶ最低の営みである

 精神医学の範疇に触れてしまった時点で、それは素人ではなく適切な知識を持った専門家が対処すべき問題なのである。
さっき書いたのはほんの一例であるが、薬物治療だけでなく、一般的に診断が違う人に対して一律に同じ対応を取ってはならない。適切な診断と、診断に合わせた慎重な対応が必要になるものである。
HSPだからといって一律に同じ対応をしたら最悪人が死ぬのである。
「貴方はHSPだからこうなんだ」
などと軽々しくHSPという言葉を使っている人たちは、このことに対応できるだけの知識と責任感・倫理観を持っているのだろうか。人命さえも左右する言葉を濫りに使いすぎであると思う。同じ境遇の人と共感したいというのは自然な動機であるしそこを否定するつもりは毛頭ないが、もう少し使う言葉を考えるべきである。

精神疾患の話はしていない
などという理屈は通じない

HSPという言葉をよく使う人で、この記事を読んで
自分は他者と共感したかっただけで上で書いたような悪質な内容は意図していない。精神疾患の話はしていない。
と思う人は多いだろう。警告しておくが、
「HSPって○○だよね。」
といったとき、貴方が
HSPのうち特に精神疾患のない人だけを意図しているということは、誰も汲み取ってくれない。
貴方が頭の中で勝手に思っているだけで意図を相手に提示していないのだから、受け手は貴方の意図を知る術を持たない。書いてある言葉が貴方の全てである。貴方がHSPを主語に置いた時点で、それに該当する全てについて主張しているということになる。それで生じた問題について自分で責任を負うことが社会人であれば当然求められることである。
 またそもそも全員が貴方と同じ頭の構造をしているのではない。
貴方と同じことをしたら死ぬ人もいる。
私は、自分の能力を超えた責任が生じるような言動は慎むべきだと思う。

さいごに

 もちろん扱いをミスったらすぐ死ぬような人というのはHSPだけでなく存在するので私の指摘する程度の責任感というのがやや過敏と言えなくもないのだが、私がHSPという言葉に特に警戒する理由には、この言葉が極めて多くの精神疾患を実際内包してしまっているという上で述べたようなことがまず1つ。それから特に、昨今HSPという言葉を使用する人の多くで医者の領分に入って不適切な言説を流布するような雰囲気があり、なおかつ情弱をカモにした情報商材ビジネスにでもつなげるような観があるというのがある。
これは社会的に頗る悪い営みだと指摘するほかない。
 精神科にうんこを撒き散らして迷惑を掛けつつネギ背負って詐欺師に向かっていくカモなんていうのは目も当てられないということで、言葉の使い方一つでここまでのリスクがあるのでもう少し言葉に関心を持ってくださいという思いです。

更新日時
2023/02/24 3:38; 投稿
2023/02/26 21:43; 主語だけ書いてあり後続の文章に適切に接続していない謎の部分を削除

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