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粋なリスペクト『森永 Hi-CROWN』

ハイクラウンというチョコレートをご存じでしょうか。

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私はつい最近までよく知らなかったのですが、いわゆる高級チョコレートの魁らしいです。発売が1964年なので、東京オリンピックや東海道新幹線と同じ世代ですね。

知ったきっかけは、最近読んだ『昨日星を探した言い訳』という小説。この物語で、ハイクラウンが割と重要な役目を果たしているんです。

(とても素敵な物語なので、ぜひ読んで欲しい……)

ハイクラウンの特徴は、タバコの箱を模したパッケージ。
印刷だけでなく、実際にタバコの箱のように開くのですから、少年少女たちの「オトナへの憧れ」をくすぐるものだったのでしょう。

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そんなハイクラウンも、チョコレート市場の拡大により高級チョコレートとしてのアイデンティティが薄れ、製造中止になってしまいました。
詳細な時期までは調べきれませんでしたが、おおよそ2010年頃のことのようです。

惜しくも製造中止になってしまったハイクラウンですが、2014年の発売50周年を機に、森永の限定ライン「Taichirou Morinaga」で復刻を遂げます。
現在も渋谷・東京・新宿・神戸の店舗で入手できるみたいです。

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入手しました。
大好きな小説のキーアイテムなんです。そりゃあ手に入れたくなりますよね。

復刻版はオリジナルのタバコパッケージよりスリムになっていますが……

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箱にミシン目が入っており、そのお陰でオリジナルと同じように開けることができるのです!

恐らくですが、復刻版のパッケージの型自体は、他の森永のお菓子と同じもの使っているのでしょう。ハイクラウン専用の型を持つより、共通の型を使って、表面の印刷だけを変えるほうが安上がりなので。
にも関わらず、復刻ハイクラウンは「パッケージにミシン目を入れる」という一手間を加えています。

それはきっと、元祖ハイクラウンが模していた、タバコの箱を再現するため。

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パッケージ自体は、ミシン目を使わなくても開けられる形状をしています。

そもそも、お菓子の紙パッケージは、
・汚れや衝撃からお菓子を保護する
・商品の名前や特徴を表示する
機能を果たしてさえいれば、最低限は事足りるはず。

次いで、商品として陳列されることを考えて、
・手に取ってもらう確率を上げるためのデザイン
・商品やブランドの価値観を伝えるためのデザイン
辺りがなされていれば、充分役割は果たしているといえます。

手に取って・買ってもらった先、開封の瞬間まで考えてパッケージをデザインするというのは、なかなか難しいことなのではないでしょうか。


一箱200円、タバコのようなパッケージ。
ハイクラウンは、チョコレートであると同時に、「オトナ」としての体験をもたらしてくれるモノだったのだと思います。

その世界観を保ちながら、現代のものづくり事情を織り込んだ、復刻版ハイクラウン。
リスペクトに満ちた、実に粋な一品ですね。

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