インボイス問題をエンジニア流に処理してみた
社会を1つのシステムと捉えて、
エンジニア視点で紐解いてみるシリーズ。
今回は、現在繰り広げられているインボイス騒動を、
「運用しているシステムで障害が発生した状況」
と捉えて、
『インボイス制度導入インシデント』を起票して、
システムエンジニア流に処理してみる。
インシデント概要
2023年10月から導入されるインボイス制度によって、以下が引き起こされることが問題視されている。
免税事業者の廃業
物価高騰
各事業者のインボイス制度導入に伴う会計処理の負担増
これにより、ちまたでは、
インボイス制度導入に賛成か反対か、
免税事業者が消費税をもらうことは法律で認められているか否か、
といった議論や対立が繰り広げられている。
状況整理・原因調査
前回記事参照のこと。
インボイス制度の全体像を整理してみたらトリックに気がついた話|さとちん (note.com)
関係者へわかりやすく状況説明
(ここだけ、関係者一同を前に報告しているイメージなので「ですます調」で書いています)
では、「これで誰にでも状況がわかるだろう」という動画を用意しましたので、御覧ください。
簡単にまとめると、
国という希代のペテン師が仕掛けた30年ごしのトラップに、多くの事業者が嵌められて、物価高や免税事業者の廃業を招く事態となっています。
ペテンに引っかかった多くの関係者が、そのことに気づかないまま、あるいは気づいていても後ろ暗さがあるためか、誤認識に基づく発信や要領の得難い説明が行き交い、多くの国民が状況理解に苦慮している現況と言えます。
このまま、多くの国民が状況を理解せぬまま、なし崩しにインボイス制度が導入されると、以下事態が引き起こされることが予想されます。
多くの免税事業者の廃業
物価高騰
残念ながら、ペテン師が行ったことは、
「30年前に抜け穴のある形で消費税制度を導入した」
ことだけであり、その抜け穴を利用して恩恵を受けてきたのは私たち国民であるため、訴えることは難しいと存じます。
ただし、以下点については、先方の責任として交渉材料に使えるかもしれません。
税制の抜け穴のある形で消費税制度を導入したこと
抜け穴を利用した節税を黙認し続けたこと
対処策
経済や会計については素人なので、こちらは専門家にお任せするけれど、
素人なりに状況整理した結果としては、以下が社会全体で見た時の中長期的に最もマシな対処策ではないかと予想。
インボイス制度は導入する
ただし、インボイス制度導入に伴って事業者に生じる不利益分は事業者に負わせるのではなく、最終的な価格に反映して全消費者(=全国民)が背負う。
免税事業者が免税事業を続けるか、課税事業者化するかは、以下点を天秤に乗せて、どちらが社会全体として中長期的にお得になるかで判断
仕入れ事業者側が、課税事業者が発行する領収書(仕入れ税額控除できるもの)と、免税事業者が発行する領収書(仕入れ税額控除できないもの)を仕分けるコスト
免税事業者が存続することにより、国への納税額が抑えられるメリット
国民の理解を含めた上記対処のために必要となる期間分、インボイス制度の導入を延期する。ただし、うやむやにお蔵入りさせないこと。
理由
現在の消費税制度にひずみがあるのは事実
今回、単にインボイス制度導入を見送ってうやむやにしたら、未来の世代に、このひずみを背負わせることになる
ただ、問題の発生した経緯を踏まえると、免税事業者に負担を強いてひずみを解消するのは倫理的に誤っている。
また、ひずみ解消のために小規模事業者に全負担を負わせると、一時的には現在の物価を維持できるが、結局は小規模事業者の廃業を招いて社会全体の疲弊を招く。
ちなみに、税金というのは、正しく運用されるならば国民へ還元されるものなので、納税額の多寡は、
国に運用をお任せする金額
自分たち自身で運用する金額
のバランスと捉えればOK。
根本原因
今回の問題が起こった根本原因は以下。
課税事業者が、おいしい節税話に釣られたこと。
免税事業者、課税事業者双方が、消費税制度の基本的な仕組みを理解せずに慣例に則った消費税運用を行ってきたこと。
実在するかどうかはわからないけど、以下行動をしてきた人達は、今回の難を逃れているはず。
免税事業者
消費税欄は記載せずに請求書や領収書を発行。仮に求められても断ってきた。
増税時は、「増税に伴う製造価格の上昇」として販売価格を値上げ。
個人事業主の生活費=人件費なので、増税に伴って製造コストが値上がりするのは当たり前。
仕入れ事業者(課税事業者)
免税事業者からの請求書や領収書に消費税が記載されていたら訂正を求めた。
課税事業者の領収書(仕入れ税額控除できるもの)と、免税事業者の領収書(仕入れ税額控除できないもの)を分けて会計処理を行ってきた。
今回のインボイス導入によって会計処理が増えるのは、課税事業者が発行する消費税額の記載のある領収書。 以前から、領収書を仕分けていたならば、「免税事業者との取引の手間が増える」ということにはならないはず。
税理士・会計士
クライアントに上記振る舞いをすることをアドバイスしてきた。
再発防止策
制度の抜け穴を利用した儲け話は、法律が変わった時に痛い目に遭うので、「制度の抜け穴」はあっても利用しない。
慣習であっても、なんか変だな?と思ったらちゃんと調べる。
税務の専門家は、「クライアントをお得に節税させること」ではなく、「クライアントが正しく納税の運用することを手助けすること」を目的として行動する。事業者は、そういった行動指針の専門家をパートナーに選ぶ。
添付情報:エンジニアTips
エンジニア業界は障害インシデント対応が日常茶飯事なので、本インシデント対応において有効そうなTipsを紹介。
まずは公式ドキュメント、さもなければ書籍
「まずは公式ドキュメントを読め。それがわからなかったら書籍。ネットの情報は間違っている可能性のある前提で読むこと」
先輩エンジニアが若手エンジニアに口を酸っぱくして言うセリフ。
今回の件では、私はたまたま自分が当事者として関係していたので、書籍を買って読んで理解して、その後にインボイス制度に関するネットの情報を見る、という流れだった。
だから、ネットの情報を見た時に、
「誤認識に基づく話が行き交っているな」
「『消費税を支払っているのは消費者ではなく事業者』というのは、"売買への課税を事業者が納税する"をどう捉えるかの違いであって、消費税の仕組み自体は自分が理解した内容で合っているな」
などがわかったのだけど、もしも書籍を読んでなかったら、
「法律に書かれている」
と言われた時点で、専門家の述べる解釈や結論を鵜呑みにしてしまっただろうと思う。
システムでもよくあることだけど、
原理は1つでも、捉え方や言い方は、いくらでもバリエーションを持たせられる。
今回の件では、公式ドキュメント=法律となるので、「よくわからないな。よし、法律を確認してみよう」なんて思うことはまずないけど、
本屋に行けば素人にもわかりやすく図を使って説明してくれてる書籍もいっぱいあるので、まずそういう書籍を手に取ってから、ネット上の情報を吟味することが大切なんだな、と学習した。
障害が起きた時は「犯人は誰か」ではなく「どう解決するか」
再発防止策を考える上では、責任の境界を明確にすることは大事だけど、
障害発生している真っ最中に、責任のなすりつけ合いをしていても、問題は何も関係せず、プロジェクトメンバーの心がすり減っていくだけ。
問題の原因を作った人間が責められる空気のプロジェクトでは問題の報告があがりづらくなり、それがもっと大きな問題を引き起こすことに繋がっていく。
障害報告を受けた時には、
「えー、マジでー?勘弁してよー」
って、ひと言だけ言ってから、
「まぁ起きたものは仕方ない。よし、対処策を考えよう」
って切り替えて、みんなで対処策を考えていくプロジェクトがうまくいく。
インシデントのクローズ条件
当該インシデントは、
「社会全体にとって、もっともマシな対処策が導き出され実行されたこと」
の確認をもって、クローズといたします。
注意事項
本インシデントは、会計の素人が、書籍の内容と自身の経験を照らし合わせながら記載したものなので、誤っている箇所もあるかもしれません。「ネットの情報は間違っている可能性のある前提で読むこと」を踏まえて、お読みください。
誤っている箇所を見つけました際は、ご指摘お願いします。
インシデントクローズできると、いいな。
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