見出し画像

春闇

「一幕」

暗き闇のあわいより

上り来れる精霊の

暗き春のあわいから

持ち来たれりしその鍵の

陰影纏うその光

いづこ扉の鍵なれや

いづこの鍵や

「二幕」

知らぬ扉を押し開けて

踏みてゆきたる芝の生う

緑の庭の奥の園

激しき愛と喜びを

鋳て溶かしたる花の園

耀き溢る日輪の園

日輪の園

「三幕」

深い淀みの淵よりも

悲しき死別の苦しみに

泣き暮れ過ぐすその日々に

変わらず咲ける野の花よ

淡く儚き花とても

ゆめこの愛に於き遅るるか

この愛で遅るるか

「四幕」

花の四方よも咲く山の中

人に知られず咲く花の

俄かに人と巡り会い

己が美貌を知りたるか

知らず知られぬ宝倉ほくらのごとく

春納めたる保倉のごとく

花の四方咲く山はあり

幻の花 幻の山

幻の花

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?