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短歌、70首くらい(8/7~9/13)

(ミニノート等に書いていた短歌、ほぼ全部)

(日付不明)

春の夜の花の散り行く川のにオフェリアのごと悲しみは逝く

輝きて輝きたのち夜あればその裡にすら光宿らん

星と人と花と岩とをる人に数多甘露の香油の薫る

母と子と子と母をう愛の果て悲しみを越え胸宿る色

星の人バラやキツネの友のため涙一粒そらへふりまく

8/7(原爆についてのもの)
「葉月なる六日九日十五日」吾神恋うる心加えん

白鳥しらとりの悲しみまとい飛ぶ空と海の宏さに日の神のます

白鳥の群れ飛ぶ空の裂け目より漏るる祝福憎しみに愛

十字架の上より空を見上ぐれば眼下の衆生慈しく

キリストの見し山脈と光彩を黒々渡る雲ぎ行くか

時超えて一千九百四十五の西暦に火の長崎くだ

浦上の天主の堂はキリストの像を抱きて燃ゆる人々

鐘は鳴りミサの祝福せし時に十一時二分膨らむ視界

広島をヒロシマと云う長崎をナガサキと書く只、二つの火

三つ目の火はくだりたく矢をつがい小倉窺う恐ろしき目よ

愛を誰そ求め給いて建てたるや彼の十字架の数多立つ墓地

ただ一つただ一つたる神の名と数多正義の人の世の罪

吾は恋うこの日の本の最果てに凍え輝く北十字星

「ハレルヤ」とあめの河原の凍えたる美と悲しみに南の十字

水流れ川流れてし水の無き炎のしぶく河原に眺む

背を速み黒々と照る川底の瑠璃に十色といろに星の輝き

我等誰そ国人くにびとに殺されし同じ国民くにたみののしりしヤソ

日は流れ涙渇きしこの国にあくびこらゆる式典のある

マリア様 海の星にもたぐえたるかの観音に乞うる贖い

弁天のさやるヒロシマ 観音の燃ゆる涙の川に映る灯

声の無く泣ける慟哭せる水に数多の罪を流し許さん

8/22
世界への胸一杯の愛抱き再び白い花を投げよう

吾は知るうからやからの血の強さ又水のごと清き想いを

「我は照り我は輝き潤せり」天と地と人とよもす祈り

愛を知り影と歩みし夏の日にいたつき眺む狩野川の火よ

8/23
紫の火花のごとき印象をただ一瞬のその眼差しを

風は止み花の灯火遠くなり未だ恋うるか憧れのごと

夜の中沼津あめよりがるるか窓の雨滴も慈しきかも

遠くなる只、遠くなるこの日々を吾に教うる黒き狩野川

美しき只、美しきこの川を街の灯りで沼津は飾る

いと惜しき只、愛おしき君が手を夜の風にて吾離れ飛ぶ

風花かざばなの狂い乱れし吾のうちこの体温で溶ける涙か

夏の火は強く優しき花の名と心に宿る星夜浮かべり

闇深みシロツメクサの光彩と心は描く朝焼けの線

8/24
烈しくも川面輝き荘厳す日の照る国の命の目覚め

8/25
狩野川の岸辺の灯り遠見せば吾恋いめやも人恋うるごと

狩野川の川鵜のごとく水底のうおを追いたる手をかざし夏

狩野川の照り映うおもの輝きに互い違いに飛ぶ鳥を見る

カーテンの内側入り見る川 虫の聞こゆ人の灯見ゆる

朝をゆき夜を渡りゆく光輪にさきくまさきくがくのあれませ

8/26
雨音で気づく夜雨の柔らかさ窓てう窓に温もりのあれ

8/27
沼津なる狩野川に照る朝の陽を眺めせしかば街も輝く

モノクロの花を彩る真夜中の絶望の底 輝く希望

龍の角 恵沢の後 雲開き日の散乱をいかに言祝ことほ

8/29
濃く薄く青きみ空を白鳥しらとりの端から端へ渡りゆく窓

雲が湧き麗しき山隠す前 美空支えて不二の立つ夏

母になし父になせるを吾知れり如何に罪とが滅ぼすべきや

苺貫山かぬきやま 二等辺なる頂きに御神威みいづ天降あもりて夕を待つ鳥

夕映えに狩野川染まり吾は知る鳥の行方と恋の行末

夜の川 岸辺の街の灯のごとく瞳にちろり炎吾見き

日は没し夜のとばりの黒き河 君問いませば吾は応えん

黒き河 岸辺走りし人等見て火は灯りたりをちこちの吾

8/30
誰そ彼の狩野川しぶく瀬の水沫みなわ 岸辺に灯る窓もかくあれ

狩野川に「おやすみ」という吾も又 川面光りて返しがるる

9/2
苺貫山かぬきやまこいねがわくは皆人のいたつく悩み除きあれませ

淡く淡く柔く優しき眼差しは花冠のふさう心か

9/3
「我は愛 我は輝き 我は水 天と地と人照らし潤す」

9/9
猫の旅 喜怒哀楽を糧として舞い踊りてし散り積む言葉

9/13
鈴虫の清らな音にも祈りてんいたつき悩む人の幸い

来し方の道 ようとして遥かなりその行く末も幸くあれませ

春風や和ら陽の中菜摘ます子その微笑みに人は酔いたり

乱れ世の闇深かりしこの夜に堕ちても咲ける花のマンダラ

(日付不明)
猫の背に跨り小人旅に出る風も嵐も詩と歌にして

猫の背に跨り旅に出た小人 月の野原に草笛を吹く

雨の街 密林を行く虎のごと猫は小径の角に消えたり

金の雨この世の果ての路地裏で亡くした筈の猫が振り向く

星の夜 猫と小人は故郷の面影思い祈り歌とす

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