見出し画像

日本語は通じるが話が通じないのは何故か?

仕事の話をしていて、
どうにも会話が成立しないなとなる瞬間がある。

手順書を作成する際に、
こういうリスクがあるのでもう少し詳しく明示したい、と意見をしても
「だめなものはだめ!」の一言で片付けられたり、
「いいから早く作って!」で片付けられたり、
全くもって会話が成立しないなこの人、
という人間が、職場には少なからずいる。

そんな愚痴はさておき、一旦冷静に分析してみると
なぜ同じ会社、同じ職場で仕事をしている人間同士の会話や相談事が、
まったく成立しないなという事象が発生するのだろうか?
という
面白いテーマが生まれたので、仕事する傍らその理由を探ってみた。


■なぜ日本語は通じるが話は通じないのか


・IQが20以上違う者同士の会話は成立しないは別

「IQが20以上違う者同士の会話は成立しない」という俗説がある。
これは、一定以上知能指数が違う者同士で会話をしたところで
お互い発言内容や文脈を理解できず会話にならない、
というニュアンスの俗説なのだが一理あるとは思う。

同時に、今回の分析の中ではあまり当てはまるとは言えなかった。
なぜなら、いつも会話が成立しないわけではないからだ。

例えば、冒頭に挙げた社員の方は
何度も一緒に改善活動をしたこともあるし、
お互いにひとつのテーマについて深く話し合う事も出来る。
むしろ積極的に会話をしているタイプである。

しかしながら、唐突に会話が成立しなくなる瞬間がある。
「IQが20以上違う者同士の会話は成立しない」という俗説に照らし合わせて
分析すると、よりテーマに深みを持たせることが出来たのだ。

いつもは話が通じるのに、
唐突に話が通じない瞬間があるのはなぜなのか?
なぜ、唐突に会話が成立しなくなる瞬間があるのか?と。


・目的が違うから会話が成立しない

より深みを増した『唐突に会話が成立しなくなる瞬間がある』という
事象に対し観察と分析を続けると、その答えがわかった。

お互いに『目的が違うから』会話が成立しないのである。

冒頭にあげた
”手順書にもう少し詳しく明示したい”という内容において、
会話が成立しなかった理由はこうだ。

■ぐでたろうの目的
 今のままでは作業者が理解し辛いので
 写真などで詳しく明示して負担とリスクを減らし質を上げたい。

■相手の目的
 期限までに手順書を作る

つまり、
私はもっと使いやすく、わかりやすい手順書にしたい、
相手はとにかく手順書を作る事、
お互いの目的が違うから、会話が成立しないし
妥協も着地点も定まらないのである。

『目的が違うから会話が成立しない』という目線に気が付くと
過去の様々な会話や事象にも合点がいった。

例えば、
不具合対策などでも
『再発防止をしたい』側
『早く報告したい』側
会話は全く成り立たない事が多い。

より敷衍すると
『再発防止と恒久的な対策をしたい私』と
『さっさと報告さえ出来ればそれで終わりな管理者・経営層』の
会話は全く成り立たない。

報告するだけじゃなくて、もっと深く分析して
2度と出ないように考えましょう、などと言ったところで
『報告さえできれば上から何も言われないからいい』と思っている人間には
何を言っても伝わらないのである。

これは、作業者レベルでも起こり得る事象である。
『効率を良くしたい』作業者と
『品質を良くしたい』管理者では話が噛み合わない。
手順を変えることで作業は早くはなるだろうけど
ミスのリスクや品質に影響が出るからその変更は認められない、
と言ったところで会話・考え方が交わる事はないし
情報が伝わることもない。
双方が情報と思考をシャットアウトし、会話が成立しなくなるのである。


・製造業から離れて『目的が違う』を考える

職業柄、製造業目線で語りがちになってしまうので
『友人と二人で旅行をする』と仮定して考えてみよう。

どのようなルート、どのような交通手段、何をするのかといった
内容を話す場合、お互いに目的地が同じであれば会話は成立する。
『東京に旅行する』を共通目的とした友人同士であれば
飛行機にするのか、新幹線にするのか、夜行バスにするのか、と
言った話は通じる。
どこを観光するのか等も相談することが出来るはずである。
目的地が同じなので、整合も取りやすいし相談も当然可能である。

しかし、
一方が『北海道』、一方が『沖縄』を目的地として
話したとしたらどうだろうか。
全く会話が成立しない瞬間が出てくるはずである。
どんな交通手段か、どこを観光するのか、など
そもそも目的地が違うので話にならないはずである。

ある一つのテーマや論題を話す際には、
目的が違う者同士で話をしようと思うと会話は成立しないし
なおかつ歩み寄る事が無い者同士で話をすること自体が
無意味とすら認識することが出来る。


・合意形成のパラドックス

では、どうすれば良いのか?
答えは簡単である。
『まず最初に目線(目的)をお互いに合わせる』

一方的に合わさせるのでもなく、
互いに相違点を解消することで目線を合わせることが重要である。
『今回の旅行は沖縄にしたい』
『俺は北海道行きたい』といった互いの意見や
行きたい理由を出し合って、じゃあこっちにしようと決めれば
済む話である。
今は無理でも次の機会はこっちにしよう、とか
前向きに目線を揃えることが出来ればお互いに嫌な思いは
しないで済むだろう。

しかし、Noteを見て頂いている諸氏ならおわかりだろう。
答えは簡単でもそれを実行・実現できるかは別なのが
『社会であり現実』である。

『最初に目線を合わせる』という答えは簡単でも
実際に仕事で会話が成立しない相手に対して
お互いに目線を合わせましょうなどと言ったところで、
合わせることが出来るイメージを浮かべられる人間が
如何ほどおられるだろう。

唐突に会話が成立しない人間ならばともかく、
普段から仕事上で全く会話が成立しない相手に対し、
目線を合わせましょうなどと持ち掛けたところで
相手が考え方や思考を変えることはまず無い事は明白である。
(立場や年齢といったものが加わると尚更)

そもそも、
『目線を合わせましょうといって目的や内容のすり合わせを行い、
 前向きに話が出来る人間とは最初から
 会話が成立しないといった事象は起こり辛い』
とも考えられ、
『合意形成におけるパラドックス』
とも表現できる。


・触らぬ神に祟りなし

では、お互いに目線を合わせる合意形成が難しい相手と
どのように仕事をするのか、話をしていくのか?
これも答えは簡単である。

『そういう人間とは話(仕事)をしない、そういう人間とは距離を置く』

そもそも話が通じない相手、なおかつ自分の主義主張や
自分こそが『正』という人間に時間を使うのは無駄である。
(その人のやり方で効果が出ていたり、
 筋が通っていたり、理にかなっていれば話は別ですが)

しかし、Noteを見て頂いている諸氏なら(以下略

『そういう人間とは話(仕事)をしない、そういう人間とは距離を置く』と言うのは簡単ではあるが、そうはいかない。
どれだけ話が通じなくとも、
反りが合わない人間であろうと避けては通れないからこそ、人は悩むのだ。

その場合は、
そういう人間を避けては通れないような状況・環境に
身をおいている時点で自分自身の責任と割り切る他ない。

会話が成立しない人間が上司ならば、
我慢をするか、
相手に気に入られるように立ち回るのか、
黙って転職をするか、が今の日本社会の最適解ともいえる。


・自分が使える『解』

『唐突に話が通じないのはなぜか』という気付きから
観察・分析・推論形成・省察を繰り返していくうちに
自分自身の中でひとつの『解』に辿り着いた。

『自分のマインドセットを見つめ直す』である。

私は記事を作成する過程において、下書きを読み直している際中に
ここまでつらつらと書いてきた内容の節々には
『自分が正』という無自覚な自己認識が含まれていることに
気が付いたのである。

事例にあげた、
『再発防止と恒久的な対策をしたい私』と
『さっさと報告さえ出来ればそれで終わりな管理者・経営層』という
文脈に着目して頂きたい。

一見すると、発生した異常事象に対して
深く掘り下げ、調査分析し再発防止と恒久的な対策を行いたいという
理にかなった発言や態度を示しているのかもしれないが、
それは私の主観によるところもあるのではないか。

つまり、管理者・経営層側の立場にたって考えてみると、
私は彼らが求められている事やおかれている状況・立場に対する
認知や認識が無い
のである。
自分の発言が、
『良いことをしようとしてるのに何でわかんないんだよ』と
言っているようにも捉えられるのではないか。
このように客観的な目線で自分自身の発言や行動、
態度を省察すると見えてくるものもある。

しかし、発生した異常事象を素早く報告するために
その対応を妥協させることが正しいとは私は1ミリも思ってはいない。
ではどのように折り合いをつけるマインドにするのか。

『上が判断したんだから、再発してもしょうがない』と割り切りのだ。
少し表現が悪いかもしれないが、
『相手が求めた結果によって発生した事象は相手の責任』
割り切って考える事にした。

つまり、今回の件では
私は『再発防止と恒久的な対策』を併行して進めながら
情報をまとめて報告すべきだと進言をしたが、
管理者や経営層はその必要無いと判断をした。
その結果、同じ異常事象(不適合品流出)が再発したとしても
それは必要無いと判断をした側にあるし
結果顧客先から『指摘』されたり苦労すれば良いのである。
それが、『彼ら自身が求めた(招いた)結果なのだから』


■まとめ

少し長くなってしまったので、
『なぜ会話が成立しない瞬間があるのか』というテーマを
分析した結果をまとめてみよう。

・なぜ会話が成立しないのか?

  互いの『目的が違うから』
  『良くしたい』人間と『早くしたい』人間で
  ひとつの議題を論じた所で、会話は成立しない。
  『北海道に行きたい』人間と『沖縄に行きたい』人間で
  旅行の計画を論じた所で、多くの会話は成立しない。
  このように、そもそもの目的(あるいは主義主張)が違うまま
  会話を行っても多くの場合成立しない。

・対処1『互いの目線(目的)を合わせる』

  最も良い方法は互いの意見や主張、目的を出し合って
  目線を合わせる、あるいは妥協点を決める。
  どちらか一方の意見を全面肯定も否定もするのではなく
  互いの立ち位置・おかれている状況・時に熱量も加味して
  会話を成立させる。
  ただし、この手法が通じる人間の多くとは
  最初から会話が成立しなくなるほどこじれる事が少ないという
  合意形成のパラドックスとも呼べる矛盾が想定される。

・対処2『触らぬ神に祟りなし』

  一番手っ取り早いのは、そういった手合いの人間とは
  話(仕事)をしない、あるいは距離を置くことである。
  何か必要事項であったり、確認事項があったとしても
  そのような人間を避け、会話が成立する人間と行う。
  しかし、往々にして社会生活の中では
  そのような手合いの人間と関わらなければならず、
  『避ける』という選択肢を取れないからこそ悩むものでもある。

・対処3『トップになる』

  本文には入れていないが、こちらもひとつの手法である。
  自分がトップとなり、そういった人間をそもそも
  集団・組織に入れないといった対処法も考えられる。
  あるいは、自分が会社や組織を立ち上げ
  初期の段階からそのような目線で組織構築を行う事も考えられる。
  ただし、あまりにも非現実的でありこれを実現することは
  かなりの努力・能力・覚悟と理念を共にする協力者も
  必要であることが予想される。

・対処4『自分のマインドセットを変える』

  自分自身を『正』として自己認識し過ぎない。
  客観的な目線から相手の立ち位置・状況・思考などを鑑みて
  時には一歩引くことも必要である。

  話が通じない組織・人間が多くを占める場合、
  そこに自分の情熱やリソースを注ぎ込むだけ徒労に
  終わる可能性が高いので、私はおすすめしない。

  ワーカーなのであれば、
  雇用主が求めているレベル、求めているアウトプットを
  出す程度で良い。
  将来自分の意志や思考、能力や資質を活用してもらえる
  会社・組織あるいは環境に身を置くための活動や自己研鑽に
  労力や気力を回す方が良い、と割り切る。
  
  仮に雇用主の要望によってあなたが思う万全を期せずして
  行った事に対し、何かしらの不都合や問題が発生したとしても
  雇用主(マネジメント・経営層側)が求めた結果で
  あり自分(あなた)の責任ではない。
  ワーカーはあくまでもワーカーであるという
  割り切りもあったほうが良い。
  でなければ理不尽に潰されてしまうだろう。


日本語は通じるが話は通じない、ふとした疑問から
観察し、分析し、省察することで思いがけず
色々なものが見えたものである。

このほかにも、人間関係や上下関係も大きな要因では
あるのだろうが、一旦長くなり過ぎたので
別の事を分析したくなったぐでたろうでした、では、また。









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?